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nem*・゜゚・
コメント
1件
読んでくれた方ありがとうございます!(´▽`)
兄に呼ばれて、初めてその場所に足を踏み入れた。
いつもよりも少しだけ騒がしくて、でもどこか張り詰めた空気。
その中で、真っ先に目に入ったのは────
窓際に立っている、1人の人影だった。
ピンクの髪。無駄のない立ち姿。
周りとは少しだけ違う、静かな雰囲気。
視線が、合う。
それだけで、足が止まった。
??「……誰?」
低くて、短い声。
突然話しかけられて、少しだけ驚く。
真白「あ、えっと……」
どう答えるか迷っていると、
後ろから聞き慣れた声。
凪「それ、俺の妹」
振り返ると、のんびりした様子で手を上げている。
凪誠士郎。
凪「呼んだから来た」
相変わらずのマイペースさに、少しだけ肩の力が抜ける。
??「へぇ」
さっきの人が、小さく反応する。
その視線が、またこっちに向いた。
??「……妹」
まるで確認するみたいに、同じ言葉を繰り返す。
真白「はい….」
頷くと、1歩だけ近づいてくる。
距離が思ったよりも近い。
??「名前」
唐突に言われて、少し戸惑う。
真白「え?」
??「名前、何」
無駄のない聞き方。
断る理由もなくて、
真白「…….凪真白です」
そう答えると、彼は一瞬だけ目を細めた。
??「……..真白」
ゆっくり、確かめるみたいに呼ばれる。
それだけで、なんだか少しだけくすぐったい。
??「俺は」
1泊置いてから。
??「黒名蘭世」
短く名乗る。
それだけなのに、不思議と印象に残る声だった。
真白「黒名先輩….」
思わずそう呼ぶと、
ほんの少しだけ、間が空く。
黒名「先輩、いらない」
真白「え?」
黒名「長い」
それだけ言って、視線を逸らす。
でも、その後小さく────
黒名「蘭世でいい」
聞き逃しそうな声で、そう続けた。
真白「…….え」
さすがにそれは、と戸惑っていると、
横から兄の声。
凪「距離近くない?」
呑気なツッコミに、空気が少しだけ緩む。
黒名「別に」
即答する黒名先輩。
でもその視線はまだ私に向いたままで。
黒名「覚えた」
ぽつり、と。
黒名「…..忘れない」
ただ名前を聞いただけなのに、
それがやけに特別みたいに感じる。
真白「なんで…..?」
思わず聞くと、
彼は少しだけ考えるみたいに間を置いて────
黒名「…….気になった」
その一言。
理由としてはあまりにもシンプルで。
でも────
“それだけで充分だった。”