遂にやってきた。運動会当日。
私は家で体操着に着替え準備した。
いつものツインテールにハチマキを巻いて…
「今日はこのはの運動会〜♩」
パールが呑気に歌ってるのを見る。
「でもパール。ダメだよ。」
私は冷たい口調で言う。
パールはすぐ「なんで?」と聞いた。
「……聞くまでもないでしょ、パールは日本に生息しない生命体。こんな姿がバレたらどうすることか…」
私は呆れた表情で言うとそっか…と悲しそうだった。
「…ごめん」
あと…1つ理由がある。
「結花」にいじめられてることをパールにばらしたくないから。
結花とは二人三脚でペアになった。
その時は大変だった。
結花はわざときつく結んだり、転ばせたり。
それを本番でやられたら、勘のいいパールなら気づいてしまう。
そんな中 お母さんがやってきた。
「ごめん…今日仕事で運動会行けなくなった」
その言葉に衝撃をふるわせた。
「…え?最後の運動会…見て欲しかったんだけどっ…」
私はズンっと心が重くなった。
「ごめんね、だからね、パールちゃん。パールちゃんが代わりに行って欲しいの。」
「はっ!?」
私はそう言った。いまさっき言った。
パールが人の目がつくところに行ったら。
「それは無理だよ…パールの存在がみんなにバレたら、一気に世界中に広がる。…しかたないから今日はひとりで頑張る。」
私は涙をグッと堪えてみんなに背を向ける。
「…このはっ」
パールは徐々に力強い声で言った。
「私…行くよ」
「なっ、無茶言わないで!何がなんでもダメ!」
私は必死に止める。
やだよ…みんなにバラされるの。
「このは」
パールは私の名を呼び、タブレットを渡した。
「え…?」
私は戸惑う。
「これで配信してほしいの、、、それを私が見る。…いわゆるオンラインってこと」
その手があった…!!
「分かった。やってみるね。」
話しているとすっかり時間が迫って、私は焦る。
「行ってきます!」
私は一人で登校していると目の前のふゆなとみりんに目が止まった。
……結花のせいでふたりと距離を置いてしまってる。
結花は私とふゆなとみりんが仲良くすると急に怒る。だから控えてるし…それに、2人にも言われちゃったから。結花ちゃんとも仲良くしなって…。だから逃げ場がなく、仕方なくずっと話せない。
ふたりがキャハキャハ笑う姿を見るとどうしても中に入りたくなってしまう。
…いいかな。
結花は近くにいないし…いいよね?
話しても…いいよね?
「…ふたりとも、おはようっ」
冷や汗を書きながらも笑顔で2人に挨拶。
「「おはよう」」
2人の声が重なって響く。
私の心に。
「最近…話せてなかったから寂しかった」
みりんは一人ぽろっと本音を出した。
「そうそう、確かに結花ちゃんと遊ぶのは大事だけど…いくらなんでも私たちと関わらなすぎじゃない…って」
ふゆなも続けて言った。
泣きそうになる。ほんとは…ほんとは…。
でも打ち上げちゃだめ。言わない。
「ごめん」
悩んだ挙句のその言葉しか出なかった。
「……このは、最近元気ないし…いつもよりぼーっとして何かを考えてる」
みりんは私のことを心配そうに見つめる。
どうしよ…どうしよ…。
もう嘘なんかつきたくない…!!!
「ほんとはね…」
口が動いてしまった。
後ろから重圧的な足音が聞こえて背筋がこおる。
まさか…ね? 聞いてるわけないよね?
「このっち!おっはー!」
結花の言葉にズキっとくる。
この何気のない挨拶が心を痛ませる。
「…あ、私たち…係だから先行ってるね!」
2人は状況を察して学校へ逃げていくように私たちから離れた。
結花の顔を伺うと、ニヤッと悪い顔で微笑んでる。
「邪魔もん、去ってくれたねっ!」
明るすぎる笑顔に私は恐怖を覚える。
「…じゃ、邪魔もん…って誰のこと…」
私は目線をキョロキョロさせる。
すると結花ははぁっとため息をつく。
「あの二人しかいないでしょ?」
圧のあるその言葉に私はどっとくる。
「いや…分かってるけど…そこまで言わなくても…」
震えながらも本音をはなす。
結花の顔がだんだんと悪くなってくるのが分かる。
「何?私とこのっちの関係を邪魔してくるでしょ、なんだってオサナナジミなんだからっ」
そんな嘘を誰もいないところでも言う。
「幼なじみなんかじゃないでしょっ!!!!」
私はそう怒鳴って学校へ逃げてった。
運動会が始まり、歓声が上がる。
私はタブレットを置き画面の向こうにいるパールに話しかける。
「パール、見ててよね」
『もちろんっ!楽しんで見るわよ!』
パールは満面の笑みでいった。
ナンバーワンを飾るのは二人三脚。
私と結花の地獄のものが最初からある。
こんなの嫌っ…。
結花は近寄る。
「このっち、あたしらは永遠だからぜっ〜たい勝とうね!」
グーポーズを求めてくるので私はやった。
何にせよ、みりん達やパールも見てる。だから嘘をつくしかない。
先頭が走り出した。いつの間にか私たちの番が来る――。
「いくわよっ」
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