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📖 第七章:「崩れない仮面」
放課後。
教室は、夕焼けに染まっていた。
オレンジ色の光が、机や床を長く引き伸ばす。
ざわめきはもうなく、残っているのは数人だけ。
○○は、また窓際の席に座っていた。
昼休みの出来事は、終わったはずなのに——
なぜか、まだ体の奥に引っかかっている。
冴の言葉。
「 うるさい」
「邪魔」
そして——
「気に入らないだけ」
○○はぼんやりと指先を見つめる。
何も特別なことじゃないはずなのに。
どうしてか、それだけが消えない。
○○:「……ほんと、変」
小さく呟く。
その声は、自分に向けたものだった。
その時——
「まだいたんだ」
低い声。
振り向くと、冴が立っていた。
鞄を肩にかけたまま、こちらを見ている。
○○は少しだけ目を瞬かせる。
○○:「……帰るとこ」
嘘だった。
でも、それ以上の言葉が出てこない。
冴は何も言わず、少しだけ近づく。
机の横に立つ。
距離が、近い。
昨日よりも、昼よりも——
少しだけ近い。
沈黙。
夕焼けの光が、二人の間に落ちる。
冴:「あいつら、また来るぞ」
唐突な一言。
○○はゆっくりと視線を上げる。
○○:「……別に」
興味のないような声。
冴は一瞬だけ眉を動かす。
冴:「……そうか」
それだけ言って、視線を外す。
でも——離れない。
帰るわけでもなく、そのままそこにいる。
○○は少しだけ首を傾ける。
○○:「……帰らないの?」
冴:「お前がいるから」
あまりにも自然に言われて、○○は一瞬止まる。
意味を考える前に、言葉だけが残る。
○○:「……なにそれ」
冴は答えない。
ただ窓の外を見る。
まるで、自分でも説明する気がないみたいに。
その時——
ガラッ。
教室のドアが乱暴に開いた。
空気が、一瞬で冷える。
入ってきたのは——あの女子生徒と、その
取り巻き。
昼とは違う。
今度は、完全に敵意を隠していない。
女子生徒:「……へぇ」
ゆっくりとした足取りで近づいてくる。
女子生徒:「やっぱ一緒にいるんだ」
その声には、明らかな苛立ちが混じっていた。
○○は何も動かない。
ただ、じっと見ている。
女子生徒:「ほんとさ、しつこいんだけど」
「サエに近づくなって言ったよね?」
一歩、また一歩。
距離が詰まる。
でも——
その間に、冴が一歩前に出た。
さりげなく。
でも、はっきりと○○を隠す位置に。
女子生徒の動きが止まる。
女子生徒:「……は?」
信じられないものを見るような顔。
冴は、何も言わない。
ただそこに立っているだけ。
それだけで、空気が変わる。
女子生徒:「なんで、そっち庇うの?」
声が少しだけ強くなる。
「その子、変な子だよ?」
「気持ち悪いし、きしょいし」
「一緒にいる意味なくない?」
言葉が、鋭く飛ぶ。
でも——
冴は一切反応しない。
ただ、静かに見下ろす。
そして——
冴:「だから何」
短い。
冷たい。
女子生徒の顔が歪む。
女子生徒:「……は?」
冴:「誰といるか、お前に関係ない」
一歩だけ前に出る。
それだけで、相手が一歩下がる。
冴:「目障りなら見るな」
「消えろ」
静かな声。
でも、拒絶ははっきりしていた。
女子生徒:「……っ」
言葉を失う。
周りの取り巻きも、何も言えない。
空気が完全に逆転していた。
女子生徒は唇を噛みしめる。
悔しさと、怒りと——少しの恐れ。
女子生徒:「……ほんと、おかしいよ」
吐き捨てるように言う。
でも、それ以上は何もできない。
踵を返し、今度こそ教室を出ていった。
取り巻きも慌ててついていく。
——静寂。
完全な沈黙が落ちる。
さっきまでの張り詰めた空気が、ゆっくり
ほどけていく。
冴は、何事もなかったようにその場に立っ
ていた。
○○は、その背中を見ている。
少しだけ——
ほんの少しだけ。
胸が揺れる。
○○:「……なんで」
今度は、はっきりとした声。
冴は振り返らない。
○○:「……そこまで、するの」
沈黙。
数秒。
夕焼けの光が、さらに濃くなる。
そして——
冴:「お前が」
一度、言葉を切る。
冴:「壊れそうだから」
その一言。
空気が止まる。
○○の目が、わずかに見開く。
初めて——
仮面に、ひびが入る。
でも、それはほんの一瞬。
すぐに、いつもの無表情に戻る。
○○:「……意味わかんない」
小さく呟く。
でも、その声は少しだけ揺れていた。
冴はそれ以上何も言わない。
ただ鞄を持ち直す。
冴:「帰るぞ」
いつも通りの声。
○○は少しだけ迷う。
ほんの一瞬だけ。
それから——
ゆっくり立ち上がる。
○○:「……うん」
小さな返事。
二人は並んで教室を出る。
触れない距離。
でも——
昨日より、確実に近い。
夕焼けの廊下に、二つの影が伸びる。
重ならないまま。
それでも、離れずに。
崩れないはずだった仮面は——
少しずつ、確実にひび割れていた。
END
少しずつ壊れていく○○ちゃんのことを守るも冴君…))グヘヘ
コメント
1件
くそ、アプリダウンロードしてないから10以上♡押せない…!あ、心の中では連打してます(*^^*)言い訳ですよねーすみません…はははっ♡