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幸い勉強中は他の学年に絡むことはなく、静かに時は流れていった。
普段の授業とは違う緊張感の漂う空間で、カリカリとシャーペンの音だけが響く。
本当に勉強詰めだった。
午前午後通してずっと頭を使っていた気がする。
疲れた、と天を仰ぐ雪乃。
気付けば夕方になっていた。
「今から夕飯作りに行くって」
行くわよ、と言う美希の顔が視界に映る。
「えー…疲れた…」
「みんな一緒よ。サボったらあんたの分のカレーないからね」
「…はーい」
渋々立ち上がり、炊事場までぞろぞろと移動する。
そこにはカレーの材料がずらりと用意されていた。
「1年から3年まで合同で作りまーす。作業分担して協力してくださーい」
同伴していた教師が言う。
合同?一緒に作んの?嫌なんだが?
雪乃はキョロキョロ辺りを見渡す。
流石にいないか。
「ゆっきーのちゃんっ」
「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
背後からポンッと肩に手を置かれ、飛び上がり悲鳴を上げる。
「そんな驚かんでええやん」
ケタケタと笑いながらそう言うのは、シャオロン。
「びっ…くりした…」
警戒して居ないと安堵した瞬間だったので過剰に驚いてしまった。ふざけんな。
「な、何ですか」
この人がいるって事は、緑の悪魔もいるのでは?と警戒する。
「いや、一緒に作らへんかなって、カレー」
「大丈夫です」
「ほら、何やかんや絡む機会も増えたし」
「間に合ってます」
「親睦深めたいなって」
「嫌です」
きっぱり言い切った。
えー、と残念そうな声をあげるシャオロン。
「何が嫌なん?ゾム?ゾムが怖いん?」
「いや別に…」
謎に強がってしまう。
「じゃあいいやんか。ほら、俺ら春翔とも仲良いし、家であいつどんな感じなんかとか聞きたいし」
ピクリと春翔の名前に反応する。
「…そんなの、直接聞いてください」
雪乃は背を向け歩き出す。
「ちょ、どこ行くん!?」
「顔洗ってきます」
早足でその場から立ち去る。
聞きたくない、春翔の名前なんか。
シュンと項垂れながら、林道を歩く。
森の中は静かで、空気が澄んでいた。
美希を置いて来てしまった。
今頃怒っているかもしれない。
まぁ、すぐに戻れば大丈夫だろう。
そう思いながら誰もいない道を歩いていると、
「あ」
「あ」
チーノと出会した。
最悪だ。
何で行くとこ行くとこコイツがいるんだ。
むすっとした表情で睨んでいれば、何やら早足でこちらに近付いてきて、
ガッ
腕を引かれ、林の中へと引っ張られる。
「なっ、なに」
「静かにしろ」
木の裏にチーノの体ごと押し付けられる。
喋れないように片手で口を覆われながら、まるで何かから隠れるように息を潜める。
何だこいつ急に…!?
背中に木の感触。
すっぽり覆われる体。
感じる体温。
息づかい。
近い…。
離れようと暴れてもよかったが、聞こえてきた足音に耳を傾けた。