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あぁ、まただ。

もう見慣れた光景。机に書かれた酷い文字。鋭い刃が付いた文字。

毎朝、毎日本当にうっとおしい。

こんなことしてなんの為になるのか。


馬鹿の考えは理解できないものだ。

「クスクス」

なにが面白いのか、理解できない。

理解したくもないが、

ルールはあっても守られない。

罰せられない。

ルールを守る側の者達は面倒だと、見て見ぬふりする。

まさに無法地帯だった。


今日も散々だった。

刃を大勢から向けられて、誰も手当をしてくれないのだから、無事なわけが無い。

痛いし苦しい、でも知っている。

何を言っても、やっても無駄だと。

少数派は多数派に揉み消される。

それが社会であり現実だろう。

教室とは社会の模型だ。

小さく小さくした社会。

小さくすればするほど少数派は消え去り、多数派の力は大きくなる。

僕はその少数派の一人だった。

短い髪に黒く焼けた肌。

それに対し膨らんだ胸と、細くくびれた腹。

悲しいがこれが僕だった。

小さい頃はピンクやプリキュアが好きだった。

でもいつからか、黒やズボンが好きになった。

男の子みたいだと言われた。すごく嬉しかった。私は男の子になりたい。男の子になりたいんだ。

だからスカートもピンクも履かない。

男の子のように活発に振る舞う。

でも異性としてみるのは男の子で、そんな自分が嫌いだった。

自分も嫌いだし、人を虐めて笑うような馬鹿な周りも嫌いだ。

小学校は人数の少ない学校で、全員が全員を知り、理解があって教育が行き届いた、いわゆる優秀な人間だった。はず。

中学校からは人数が増えて馬鹿な周りに囲まれた。囲まれてしまった。

小学校の人達が普通だと思っていた私には耐え難いものだった。

話の通じない人間とそれに呑まれ、馬鹿になっていく人間。

優秀な私はまとめ役になった。

だが、それが僕の首を絞めた。

真面目な人間を、優秀な人間を、誰にでもいい顔をする私を良しとしない人は沢山いたらしい。

活発に振る舞い、男の子とばかり遊ぶ僕を見て、良く思わない子は多いらしい。

そこから始まった。そんなしょうもない理由から。

机に描かれたナイフは僕の心をボロボロにするには十分すぎた。

だが、それでは終わらない。

無視され、嘲笑われ、ぶつかられた。

そんな日が何日も続いたある日だった。

夢で僕という男の子が出てきたのは。

僕は真っ黒の短い髪に白い肌。ダボっとした服を着ていた。

そんな僕はいつも泣いていた。

優秀な私は僕のことを見過ごせず、いつも語りかけた。一方的に。

「なんで泣いてるの?」

「私に聞かせて?」

「もう泣かなくてもいいんだよ」

「大丈夫だよ」

そんな言葉を投げかけ続けたある日、僕は口を開いた。

「みんなが僕をナイフで刺すの」

「僕は気持ち悪いって。」

初めて聞いた僕の声は男の子にしては高く、腫れた喉で掠れた声を出した。

そんな僕の顔は可愛い、女々しい顔をしていた。

思えば私は直接的な言葉で傷つけられたことは無かった。

陰口を言われることはあっても正面から「気持ち悪い」や「消えろ」なんてことは言われたことはなかった。

そう考えると僕のほうが私よりも苦しかったのかもしれない。

僕と私が何日も何ヶ月も話し続けたある日、

私に限界が来た。

夏休みの終わり頃だった。

あの馬鹿な世界に戻りたくない。

もうあんな思いはしたくない。

スカートは履きたくない。

結局夏が明けても、私が教室という狭い世界にもう一度足を踏み入れる日は来ないまま、2学期が終わった。

いじめられない世界。

誰も私にナイフを向けてこない世界。

静かな世界。

それが私の今の世界だった。

平和でありつつも、悪い意味で平穏で、代わり映えのしない日々と、日に日に悪化していく焦燥感。

そんな世界に満足していたはずだったが、僕はそんな世界で私が生きている間も泣き続けていた。

「僕に気持ち悪いって」

「僕に死んでって」

「僕は…。」

私は一生懸命僕の話を聞いてあげた。それでも僕の心が晴れることは無かった。

それどころか1学期よりもボロボロになっている気さえした。

知らない間に3学期が始まっていた

親と先生に勧められ、別室登校ということで学校に出ていくようになった。相変わらず騒がしいがいじめられることは無く、勉強しているという事実に少し安心していた。

未来への恐怖、将来への不安を抱え眠れなかった私にとって勉強とは安堵する理由だった。

でもそれでも学校という場所に対する恐怖心は取り除かれなかった。

初めてテストを受けた。

帰ってきた点数は酷いものだった。

完璧な私、優秀な私とは程遠かった。

その日夢に僕が出てきた。

僕はいままで見たこと無いくらい傷ついていた。なにかあったのだろうか。今日も私は僕の話を聞こうとしたが、やめた。自分の心も自尊心も十分にスダボロだったからだ。

その日はただ、僕の隣で座っていた。

ある日のことだった。三学期も終わりかけのある日。

とある言葉を聞いた。

「ギターが本当に好きな人は勝手に上手くなっていく。でも、ギターを弾いてるの”自分が好きな人”は中々上手くなれない。」と。

私ははっとした。

その頃の私はギターが趣味になっていた。趣味といっても曲が弾けるわけではない。時間が空いた時にたまに触る程度だった。私はギターが好きなのだと思っていた。でも違った。私はギターを弾いてる自分が好きなのだった。

そんなことを僕に話した。すると僕は初めて笑ったのだ。

何故笑ったかは分からない。でも確かにほんの少し笑った気がした。

私は僕の感情やどんな話をしたか、夢日記として記録していた。日付・天気・話の内容

そして一つの事実に気がついた。

僕は私が私の事を知ると笑ってくれるのだと。

そして私は気がついた。

僕は私の心何じゃないかと。

その後私は僕を笑わすために私を大切にした。

優秀な私では無く、世界に唯一の私。

馬鹿な周りでは無く、私が大人すぎたのだと。

笑ってくれる僕と、それでもズタボロの僕。

なにかが足りない。足りないのだ。

気がつけば2年生になっていた。

私は教室に戻っていた。

クラスが変わったからか、一つ歳をとったからか。

いじめられることは無かった。

それでも毎朝嫌々スカートに足を通し、毛むくじゃらの足を隠すためズボンをスカートの下に履き、短くはねる髪を整え、朝ご飯すら食べずに騒がしい地獄へと駆け込むことには変わりない。

そして相変わらず、僕はボロボロだった。

もしも僕が心ならもう一生ボロボロのまま何じゃないかとも思った。

ある日コスプレイヤーなるものを知った。

女の人が男の子の格好をして町中を歩く。私は憧れた。

ある日とある音楽を聞いた。

性同一障害だと公開しなきゃ異性の格好をしちゃいけないの?私は関心した。

ある日僕から聞いた言葉。

「僕は気持ち悪いらしい。」

「誰も僕を好きになってはくれない。 」

ある日出てきた病気。

「性同一障害」

ある日知った言葉。

「自己嫌悪」

私は性同一障害なのだろうか。

いや、違う。私の心が違うと叫ぶ。

私は自分が女の子だと分かっているし、知っているし、違和感は無い。

私が男の子みたいと言われたのは髪型と服装のせいだ。

たまたま、一般で言う男の子の服が好きだっただけ。

たまたま、一般で言う男の子の髪型が好きだっただけ。

たまたま、一般で言う男の子の遊びが趣味だっただけ。

何故性別で趣味を、好きな服を、好きな髪型を、好きな色を決められなきゃいけないのか。

私は疑問に思った。そして、その疑問を解決するたびに僕は綺麗になっていく。

LGBTQなんて、性同一障害なんて名前をつけるから変な配慮と気遣いが生まれ、私のようなあなた達がいう男の子の格好が好きなだけの人々が傷つく。

私は性同一障害でも無い。でもこれだけは言えるだろう。

ここまで書いた話は私の過去を思いを物語として成り立たせるために改変したものだ。

私は似たような経験をしてきた。

何故、LGBTQなんて名前が付いた途端急に意識し始めるのか。

何故、名前が付いただけで、社会のルールが変わるのか。

何故、その変な配慮と気遣いに漬け込んだ嘘つきが生まれるのか。

何故、その嘘つきのせいで私達が苦しめられなければならないのか。

名前が付いただけで元々社会に、社会のルールの一部にいた人々だ。

社会のルールを変える必要なんて無い。

変に意識しないで。

変に気を遣わないで。

その変が私達をもっと苦しめる。

変えるべきは今もなお残った古臭い考えを持っている大人達だ。

女の子が男の子の服を着たって、男の子が女の子のように振る舞ったって、コスプレイヤーとなにも変わらないし、違わない。

LGBTQばかりに目を向けないで。

生物的以外の性別に選択肢も種類も無い。

私達は一人一人違う考え、違うセンス、違う趣味を持っている。

そこに女だとか、男だとかが関係あるのだろうか。

今悩んでいるあなたへ。もう一度自分について良く考えてみて。

私のように考える時間を設けてもいいと私は思う。

一人で考えられないなら話せる人を頼って。

その考える時間がきっと私を、僕を知るのに大切な時間だから。

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