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本編を挟みます。次は番外編最終話です。





「ヒュゥゥゥスゥゥゥ……」

俺…竈門炭治郎はとある庭で、力強く息を吸ったり吐いたりしていた。

これは‪”‬全集中の呼吸‪”‬という特別な呼吸法で、文字に書くと呼吸は同じだけれど、やってみると恐ろしいほど違う。

まずやっている姿を見ると、音も、雰囲気も…何もかも知っている‪”‬呼吸‪”‬とはかけ離れている。

そして、それをしている時の動きは、人とは思えなかった。

上手く説明は出来ないけれど、これを極めれば極める程、強くなれる。 ものすごく簡単に言うとそうだ。

前に俺は、鬼舞辻無惨の血が多い鬼____「十二鬼月」の下弦の鬼と戦った。

何とか食らいついていたけど…思い知った。このままじゃ到底敵わないって。

十二鬼月…下弦でも想像していたよりも遥かに強く、以前戦った鬼____下弦の伍、‪”‬塁‪”‬よりも強い鬼がいると思うと───。

いや、俺には足りない所がありまくりなんだ。

実際、塁との戦いだって、自分で倒した訳じゃない。同じく那田蜘蛛山に来ていた、柱の方に助けてもらっただけなんだから。

その‪”全集中の‬呼吸‪”‬を、朝も昼も夜も…ずっとやり続けられるようになるのが、今の俺の目標。

それを『全集中の常中』と呼ぶらしい。

これを強い人達は当たり前に……いや、もっと高難易度な訓練をこなしているんだ。

本当にすごい。尊敬以外の言葉が出てこない。

きっと、涙ぐましい努力の結晶なんだろう

一先ず、全集中の常中をできるようになれば、また一つ、強くなれるだろう。

───でも

「っあ‪”‬あ‪”‬!!危なっ…また悲鳴上げてたー!!」

超絶キツイ。やりたては耳から心臓が出たと思ってしまった。

初めていくらか経ち、かなり慣れてきた……けど、少し気を抜いてしまったら全身が命の危険に近い形で震え上がる

以前、任務で那田蜘蛛山に向かった際、俺達…竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助は鬼との戦いで怪我を負い、この屋敷…通称『氷屋敷』に運ばれ、治療に専念することになった。

氷屋敷とは、氷柱が主の屋敷で、本人が教祖をやっているから、大きくわけて教会と鬼殺隊が治療や機能回復にあたる屋敷がある。

大体治療などの方を皆『氷屋敷』って呼んでるらしい。

俺達は氷屋敷しか使わないのだけれど…言ってしまえば、第二の鬼殺隊の本拠地と表しても申し分ないかもしれない。

____俺は禰豆子の事で、 鬼殺隊の本部に連れて行かれて、柱の皆さんと初対面しては禰豆子の件について俺と柱の皆さんとの間で波乱が巻き起こったり____と、色々あったけれど禰豆子の事は表立って認められたみたいだから本当に良かった。

「頑張れ俺!頑張れ!!ずっとやり続けなきゃいけないんだぞ!俺は昔からコツコツ努力することしかできないんだ!!」

呼吸の練習に加え、いくらか前に始まった「機能回復訓練」。

最初ももちろんキツかった。でも乗り越えられる範囲内だった。…でも、そんな現状が続いてくれる訳はなくて。


…カナヲだ。いくらやってもカナヲに勝てる気配はない。

彼女の手を掴むことはできないし、彼女の湯のみを押さえるなんて出来ず、ただ薬湯を浴びせられ続けるだけだ。

──いくらやっても、彼女を超えることなんて、出来やしない。

そんな考えに陥ったとしても、おかしくはなかった。

だからこそ、全集中の常中について教えてもらったのだけれど…。

勝てなくて…ずっと勝てなくて……善逸と伊之助は心が折れかけてしまっているけど。

俺ができるようになったら、二人に教える事が出来るんだ。昔からコツコツ努力し続けてきたんだ、積み重ねで…!

「…あ、そろそろ訓練の時間か…行かなきゃ」

俺は駆け足で庭から離れて行った





目が回るような訓練を済ませ、加えて鍛練もしていたらあっという間に時は過ぎる。時間がいくらあっても足りない。鍛練は、いくらやっても足りないんだろうな。

所々星が瞬き始めている。そんな中、俺は屋根の上に胡座を描いて座り、呼吸を続ける。

こうすると集中出来てやりやすいからだ。

───もう一つの理由としては、人が寝ている場所だ。庭でやるよりかは、屋根でやった方が迷惑もかけにくいだろうし。

「(そういえば…この屋敷ってかなり広い…ここの持ち主の人が確か教祖なんだっけ…本当に俺達が使って大丈夫なのかな?保護してる人もいると思うのに…)」

ふと、そう考えていた時だった。

トン。軽く音が跳ねる。俺の右側で。

その音で慌てて振り返ると、白色の垂れ下がる髪が夜空に浮かぶ人物が立っていた。

───すごい、気配が全くしなかった。

その人に見覚えがある。特徴的だったからよく覚えてる。ええと、確か…氷柱の……

「やあやあ、久しぶり。一人でよく頑張ってるね〜炭治郎君。あっ、もしかして、俺の名前知らないかな?」

「えっと…確か 氷柱の童磨さんでしたよね?」

「えっ、凄い!正解だよ!俺の名前呼ばれてるのを小耳に挟んだからかな?よく覚えてたね」

「いや…ぶん殴られてましたので…」

「あ〜…それは気にしないで、ただの戯れだよ」

「そ……そういうものなんですか…?」

童磨さんはちょこんと俺の隣に並んで座ると、「それよりも」と笑う。

「すごいね、一人で鍛錬を続けてさ。お友達はどこかへ行っちゃったのに」

その言葉に、少しだけ心が沈んだ。

そう。善逸と伊之助は徐々に訓練に来なくなる…つまりサボり始め、最近では訓練の時だけ穴が空いたようにいなくなり、終わればあたかもいたかのようにそこにいる……という有り様だ。

多分どころじゃない。カナヲに負け続けてしまい、心が折れたんだと思う。

……でも…俺は……。

ぐっと膝元で拳を握る。

「でも俺ができるようになったら、二人に教えてあげられるので」

すると童磨さんは感心したように「すごい!!」と微笑んだ

「へぇ、そうなんだ〜。君は心が綺麗なんだね」

彼はゆらりと羽織を揺らし、腕を組んで、頷く。

…でも、俺はその横顔を見て、唇を微かに口を結んだ

…違和感を感じ始めていた。‪”‬違和感‪”‬を。童磨さんに宿る、違和感を。

───匂いで分かった。

「…童磨さん」

「ん?」

「本当はどう思ってるんですか?」

「…え?」

「笑ったり感心したり…感情豊かに見えるけど、ずっと…変わらない匂いがしてて。ずっと匂いは揺るがなくて…感情が変わる時って、匂いも大きく変わるので」

少しも童磨さんの匂いは変わらなかった。ずっと変わらない、まるで遥か彼方の大地の氷河のように。

‪”‬すごい‪”‬とか‪”‬綺麗‪”‬とか感情的な事を言っているのにも関わらず。

……もしかしたら…この人は……。思わず背筋が凍った時だった

「…俺はね」

彼は静かに屋根に座ると、俯く。虹色の瞳は、何気なく屋根瓦を捉えていた

「俺の夢は、信者の皆と幸せになる事。…できれば、‪”‬鬼‪”‬でも幸せにしたいと思っているんだ。でも…そんなの無理って、分かってるでしょ?だから、できるだけ恨まないように…憎まないように…殺そうとしてるんだよ。なるべく人に辛さをばら撒かないように。」

童磨さんの言葉に、同意を求めている感じは微塵もなかった。他人に話しているはずなのに、ただ独り言のように吐き捨てている…そんな印象。

「後、俺は昔から感情を扱うのがド下手でさ……俺は心が、酷く他の人とは違うのかもね。まるで…確かにそこにあるんだけど、鎖に似た氷が張り付いているみたいにさ〜」

あ、この事は君にしか話してないから、内緒でね───と、彼は付け足して。

俺が何を言おうか迷っている時には、童磨さんは立ち上がっていた。

隊服と、飛び血のようなデザインの羽織。裾は虹のグラデーション。

よくよく見れば、妙にアンバランスな気がした

「俺ね〜禰豆子ちゃんを見て思ったよ。いつか、鬼達も幸せにできる、分かり合えるのかもしれないってさ。君が頑張ってるのを見ると…ね。じゃあ、応援してるよ」

最後は顔を向けず言い放つと、タンッ、という砂利が飛ぶような音が立っただけで、姿は跡形も無くなっていた


「…………。」

俺はしばらくの間、童磨さんが消えた後を睨むように見つめていた

シンと静まる度に、先程の会話が胸の中でぐるりと一周する。

───なんであんな少しの会話だったのに、頭が巡るのだろうか

「頑張ります」

自分が口にした事を会話と重ねる。だったら俺は…頑張り続けるしかない

すると、やるべき事が、やる気が、ふつふつと湧いてくるようだった

俺は思いっきり息を吸う、吐く。‪”‬全集中の呼吸‪”‬を、決して止めない。

俺は全集中の常中を会得しなくちゃいけないんだ。

____これからの為にも。


炭治郎は再び、鍛練を始めた。

その頭上に、絵に描いたと錯覚しそうな、黄色い月。それは静かに、確かに、照らしていた

───彼の、優しい努力を丸ごと、ひたすら見守るように。




それから数日が経ち、炭治郎は見事、『全集中の常中』を会得した。

そんな彼を見て焦りを感じたのか、どこかへ逃げていた善逸と伊之助の二人も姿を現して、炭治郎の支えや教えと共に訓練を再開した。

訓練の後は、常中の為の鍛練。

炭治郎の懸命で優しくて爆裂に下手くそな説明…とそれを解説して説明する童磨の手助けもあり、遅れてはいるものの二人も会得した。




そして───あの日、庭に集まった三人の目の前に、ひょうたんが置かれた。

…ただのひょうたんではない。彼らの3分の2位の高さと大きさがある、特別製のひょうたん

三人の前には、ひょうたんを挟んで、普段から治療してくれたり、隊士の回復を手伝ってくれるきよ、すみ、なほの姿もあり、「頑張って下さい!!」と口々に言っている。

同じく隊士の面倒を見てくれているアオイの姿も現れる

善逸がもう既に辺りにハートをばら撒き始めていたが____。

「それでは、用意はいいですか?始め!」

アオイの声が青空の下に広がった

合図で、一斉にひょうたんに息を吹き込む

己の肩くらいまでの高さがある、普通に生活していたら絶対出会わないであろう異型のひょうたんを。

───そう、このバカデカくてクソ硬いひょうたんを吹いて破裂させなればいけないのだ

全集中の常中を会得しているものなら割れるはずなのだが…今は本当に会得できているかのテストと表しても過言ではない。

彼らは顔を真っ赤にして、ひょうたんの中でとんでもない呼吸音が反響して集中を乱すようだが、これを割らなければ終わらぬ。

ぶぉぉぉんと音が庭に響き続け____ついに

バリィィィン!!

と、三人ほぼ同時に割れた。

これで正真正銘…『全集中の常中』を会得したことになったのだった。

その後、歓声が沸き起こったのは言うまでもない。



それからというものの、常中を加えて訓練に励むようになった

あんなに苦しかった鍛練の日々が嘘のよう。いとも簡単に使いこなしていた

善逸が、ポフンとベッドの上で腕を組みながら

「なー炭治郎、今日も全集中の常中でやるのか?」

「うん!後終わって大丈夫だったら走りに行こうよ」

彼は炭治郎に問う。そんな会話が当たり前になる程、慣れて…とは言えないが、簡単に行えるようになっていた

「はーあ、常中の訓練もキツかったけど、そのあともきついのかよぉ〜…」

「なんだもんいつ!!お前走り込みくらい訓練の後にできねぇのか?雑魚だな!! 」

「はいはいちょっと黙っててください!!!」

「まぁまぁ……二人共、そろそろ行こう」

「そうだな」

「さっさと行こうぜ!!俺が一番だけどな!!」

いかにも個性的な彼らは、病室から去って行く

いつもの訓練所に向かう足取りは、以前よりも明確に───少しは軽い足取りだった。

新たな任務が来るまでに…どこまで自分を鍛えることができるのだろうか。

次鬼と対面した時に、一分一秒でも長く渡り合えるようになっているか?

…ただ今は、必死に自分を叩く時だ。

やがて、足音は完全に遠くへと消えていった

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