「すまなかったな……」もう一度口にして、「何もなくてよかった」と、彼が呟く。
「……久しぶりにハンドルを握ったら、気持ちがよかった。君の言った通りだったよ」
彼が私を慰めてくれているようにしか聞こえなくて、無言でふるふると首を左右に振る。
「いずれ私も運転に復帰するから」
「無理は、しないでくださいね……」
涙を拭って、彼の顔を仰いだ。
「ああ、無理はしない。君とこうしてまたドライブにも行きたいし、私が運転を代わることができれば、もっと遠くへも行けるだろう?」
ふっと柔らかな笑みを浮かべて、私を見つめると、
「君が泣き止むまで、このまま抱いているから」
抱く腕にぎゅっと力が込められて、耳まで赤くなったのがわかった。
そんなに優しくされたら、押しとどめていたはずの気持ちが溢れてきてしまいそうで……。
さっきの『私は、君を……』の続きが、『好き』でという言葉だったなら、この気持ちも報われるのになと、切ない想いで彼の胸に泣いた顔を押し当てた……。
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