テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ご本人様とは関係ありません
あざらし
402
7
蒼月
2,569
「は? マジで言ってんの、お前ら全員……!」
任務終わりの夜、冷えた空気が漂う薄暗い路地裏。いつもの調子で近づいてきた星導、叢雲、伊波の3人に囲まれた瞬間、小柳は怪訝そうに思いきり眉をひそめた。
「え〜、そんな怖い顔しないでよ小柳。たまには俺たちと遊ぼうよ」
伊波がひらりと軽い身のこなしで近づき、あざとい笑みを浮かべる。その両脇を固めるように、星導と叢雲が隙のない位置に立った。
「はぁ? 何言ってんだ、任務終わったとこだろうが。一緒に住むとか絶対無理。じゃあ用事あるんで」
小柳がその場をすり抜けようと身をかわす。だが、それを読んでいたかのように星導がすっと横に回り込んで進路を塞いだ。
「そんなこと言わずに、俺に付き合ってくださいよ。用事って、どうせまた一人でゲームか暗殺でしょ? そんなのいつでもできるじゃないですか」
丁寧な敬語で圧をかける星導に、小柳はさらに苛立ちを募らせる。
「やだね。お前らとプライベートで関わるとロクなことになんねぇんだよ。特に星導、お前この前も変なフリしてきただろ」
「あれはコミュニケーションの一環ですよ。ほら、俺の言うこと聞いてくださいね」
「とにかく、今日は無理。どけよ」
強引に押し切ろうと再び歩き出そうとした小柳の腕を、背後から叢雲がガシッと掴んだ。その手はいつもより明らかに力がこもっていて、振り払おうとしてもびくともしない。
「……離せよ、カゲツ。はぁ、マジで何考えてんだよ」
振り返った小柳を、叢雲はどこか冷ややかな、それでいて妙に熱を帯びた瞳で見下ろしていた。
「……何度誘っても、オオカミすぐこうやって逃げるやん。普通に言っても絶対断るやろ。だから、僕もう逃がさないって決めた」
「は……? 何言って……おい、冗談キツイって、マジで離せ……!」
ただの悪ふざけにしては空気が重すぎる。尋常ではない執着を孕んだ3人の視線にようやく危険を察知し、小柳は身をよじって振り払おうとした。その瞬間、伊波がふわりと笑いながら小柳のポケットからスマホを抜き取り、ヒラヒラと宙にかざした。
「あ、スマホは一応預かりね。外部との連絡禁止なー」
「おまっ……ふざけんな、それ返せよ……!」
「返さなーい。さ、観念して俺らに付き合ってよ、小柳」
「ふざけんなって言ってんだろ…!」
怒声を上げながら暴れる小柳の腕を、星導と叢雲が容赦なく押さえ込み、そのままさらに人通りのない路地裏の奥へと強引に引きずっていく。
「離せっつってんだろ、クソガキどもが……!」
隙を突いて星導と叢雲の手を振りほどいた小柳は、夜の暗がりの中へ向かって全力で駆け出した。任務で鍛えた身体能力を活かし、一気に3人との距離を離す。
「待てよ、小柳!」
「逃げんな、話聞けって!」
後ろから伊波や星導の声が響くが、振り返らずに複雑に入り組んだ路地裏を抜けて大通りに出ようとする。このまま逃げ切ってやる――そう確信して、角を勢いよく曲がった――その時だった。
雨上がりで濡れていたのか、あるいは苔むしていたのか。
足元の不意を突かれ、小柳が踏み込んだ瞬間にバランスを崩す。
「っ……!」
そのまま硬いアスファルトの地面に、側頭部を強く打ち付けた。最後に視界に入ったのは、血相を変えて駆け寄ってくる3人の焦った顔だった。
「……ん、……っあ」
重い瞼を開けると、視界は白くぼやけていた。頭の奥がガンガンと割れるように痛む。
ここはどこだ。見慣れたアパートでも拠点でもない。窓には頑丈な目張りがされ、薄暗い電球が一つぶら下がっているだけの狭い部屋。
身体を起こしようとして、カチャリと金属音が鳴って動きが止まる。
手首には冷たい手錠。それが頑丈なベッドのフレームに繋がれていた。
「あ、やっと起きた。おはよう、小柳」
扉が開く音がして、伊波が入ってきた。いつもの飄々とした笑顔だが、その目は全く笑っていない。続いて星導と叢雲も部屋に入ってくる。
「お前、医者には見せたけど、しばらくは大人しくしててもらうから。勝手に逃げようとするからや」
「……頭、痛みますか? 無理に動かないでください」
3人のただならぬ気配に、小柳は乾いた喉で小さく呻き、舌打ちした。
逃げ場のない密室で、これから何が起きるのか。それを理解するのに時間はかからなかった。
「っ……ふざけんな……こんなところで、動けねぇなんて……っ!」
ガチャリ、と手首を繋ぐ金属音が冷たく響き渡る。頭の奥でガンガンと割れるような痛みに顔を歪めながらも、小柳はベッドの上で上半身を起こした。
「大人しくなる気はねぇってか……上等だよ、目ぇさまさせてやる…!」
小柳は手に意識を集中させ、手っ取り早くこの鎖と手錠を断ち切るために、愛用している剣を顕現させようとした。しかし――。
「……は? 嘘だろ……っ」
パリンッ、と見えないガラスが割れるような乾いた音が響き、実体化しかけた剣のシルエットが霧のように呆気なく散って消える。
それどころか、術を使おうとした反動で身体の奥底から鉛のような重さがのしかかり、全身から一気に力が抜け落ちた。小柳はこらえきれず、力なくベッドに手をついて荒い息を吐き出す。
「無駄やって。そんなん足掻くだけ無駄やで、オオカミ」
低い関西弁の声を落としながら、叢雲がゆっくりとベッドへと歩み寄る。他の2人が入り口で見守る中、叢雲は片膝をついて、動けなくなった小柳をねっとりと熱を帯びた瞳で見下ろした。
「お前が勝手に逃げたり暴れたりせんように、この部屋全体に僕らの術式しっかり張り巡らせてあるからな。今のオオカミじゃ、妖力練れんし武器なんかに出せるわけないやろ?」
言われてみれば、部屋の壁や床には、見慣れない複雑な術式の紋様がびっしりと刻まれていた。これだけの高密度の術を3人がかりで展開されれば、いかに小柳の身体能力や妖力が高かろうと抗えるはずがない。
「……っ、卑怯な真似しやがって……!」
忌々しげに吐き捨て、小柳が人間離れした鋭い牙を剥き出しにして威嚇する。
だが、叢雲はその顎を容赦なく掴み、強引に自分の方へと顔を向かせた。
「触るな、カゲツ……!」
「暴れるなって言うてるやろ。お前が勝手に逃げて、勝手に転んで頭打ったんやよ。全部自業自得や」
淡々とした、けれど有無を言わせぬ低い声。叢雲は抵抗して震える小柳の顎を指でなぞり、ふっと冷たい笑みを浮かべた。
「オオカミ、反抗的やな」
耳元で囁くような低い声とともに、叢雲のもう片方の手が小柳の肩を掴み、逃げ場を完全に封じるように覆いかぶさる。
「…離せ……っ!」
力が入らない身体で必死にもがこうとするが、叢雲の腕にはビクともしない。
「いくら牙剥いて吠えても無駄やって」
拒絶の言葉を完全に飲み込むように、叢雲の顔がゆっくりと、逃げ場のない距離へと近づいていく。
耳元で掛けられた低い脅しにも、小柳は荒い息を吐きながら全身の力を振り絞る。
術式に魔力を押さえ込まれ、頭の痛みで視界がかすもうとも、その瞳に宿る反抗心だけは決して消えない。小柳は両手で叢雲の胸元を力任せに押し返そうとした。
だが、高密度の術式に縛られた身体は、日頃のキレを取り戻してくれない。
ペタ、と情けない音を立てて押し返した腕がベッドのシーツに沈み込む。それを知ってか知らずか、叢雲は冷ややかな笑みを崩さぬまま、小柳の細い手首を頭上に乱暴に押さえつけた。
「吠える元気あるうちは、まだ全然折れ足りん証拠やな、ロウ」
低く囁く声とともに、叢雲の指先が小柳の服を容赦なく裂けていく。ビリ、と布が裂ける乾いた音が、静まり返った密室に入り込むように生々しく響いた。
「っ、おまっ……!いきなり何して……!触んじゃっ」
「嫌や言うても無駄や。お前が自発的にこっち向かんから、こうやって体に直接叩き込んで、僕ら以外の存在考えられなくするんや」
冷淡でありながらも、内側にドロドロとした独占欲と執着を煮詰めたような叢雲の視線が、無防備に晒された首筋から鎖骨へと這う。
冷たい指先が敏感な肌をなぞるたび、小柳は全身をびくりと激しく震わせ、反射的に体をくねらせて逃れようとした。
「カゲツ……!マジで止めろって……っ! こんなことされて、大人しくなると思うかよ……!」
「なら、もっと時間をかけて、骨の髄まで分からせたったらええやろ」
低い関西弁の響きが耳をかすめた瞬間、叢雲の指が敏感な皮膚を容赦なく捉え、ねっとりと責め立てる。
「っあ……っ……! くそっ、……離せ、ふざけんなっ……!」
頭の痛みに加え、身体の底から理性を引っ掻き回されるような感覚に、小柳は反射的に涙目をにじませながらも、なおも歯を食いしばって激しく暴れる。プライドと羞恥心が全身の毛を逆立てさせ、人間離れした牙を剥き出しにして叢雲の腕に噛みつこうと首を伸ばした。
だが、その激しい拒絶反応と、悔しさに歪んだ小柳の美しい顔立ちこそが、入り口の近くでその光景をじっと見守っていた星導と伊波の欲望のタガを完全に外していく。
「あはは、すごいねぇ小柳。そんなに必死に牙剥いてさ……でも、もうどこにも逃げられないんだよ?」
伊波がねっとりと甘い笑みを浮かべながら、ゆっくりとベッドの足元側へと歩み寄る。
「ホント、良い顔しますよね。いくら拒絶しても、身体は正直に反応して熱持ってるしさ……もっとみじめに鳴かせてやりたくなってきたかも」
星導もまた、低い妖しい笑みを浮かべ、小柳の足首をガシリと掴んで逃げ道を完全に塞いだ。
「おい……! お前らまで何勝手に……離せ、気持ち悪りぃ……っ!」
手足を完全に押さえ込まれ、身動きが取れなくなった小柳の絶望的な状況を無視して、叢雲はさらに小柳の耳元に顔を寄せた。
「暴れれば暴れるほど、僕らのものになってるってよぉく分かったか? ……ほら、もっといい声聞かせてや、オオカミさん」
「っ、ぁ……くそっ……こんなの、で……あぁっ……!」
限界を超えた快楽と頭部の激痛に引き裂かれ、小柳は涙と汗にまみれた顔で必死に身体をよじらせる。
どんなに牙を剥こうとも、どんなに罵声を浴びせようとも、現実の体は容赦なく3人の男たちに蹂躙され、屈服させられていく。その絶望と屈辱があまりに大きすぎて、彼の理性はすでに崩壊寸前だった。
「……もうええやろ。これ以上無駄に暴れられても面倒やし」
冷ややかな声を落とした叢雲が、小柳の絡みつくような熱をさらに激しいピストンで追い詰める。耳元で甘く狂おしい喘ぎ声が響き渡る中、星導や伊波もまた冷酷な笑みを浮かべながらその肉体を容赦なく貪り尽くしていた。
「そうだね。これ以上ギャーギャー言われても興ざめだし、一度綺麗に頭を空っぽにしてあげよっか」
伊波がふわりと微笑みながら、ぐったりと力のない小柳の頭を引き起こす。
その虚ろに潤んだ瞳と、恐怖と快感に歪んだ顔を間近で見据えながら、星導は低く冷たい声で囁いた。
「おとなしく俺たちのものになるための、いいお灸ですよ」
その瞬間――。
星導は容赦なく拳を振り上げ、小柳のこめかみ、あるいは頭部へと重く鈍い一撃を叩き込んだ。
「っが……!」
頭の奥で激痛がスパークし、視界を埋め尽くしていた快感の白濁が一瞬で真っ黒な闇へと塗り潰される。
小柳の身体がカクンと力を失い、そのままベッドの上へ脱力するように崩れ落ちた。
部屋に響いていた荒い息や喘ぎ声がピタリと止み、静寂が戻る。
ぐったりと気絶して動かなくなった小柳の顔を、3人はまるで愛おしいものでも見るような、それでいてどこか冷たい執着の宿った瞳で見下ろした。
「……ふっ、やっと静かになったな」
「気絶した顔も、なかなか可愛いじゃん」
叢雲は眠る小柳の乱れた髪を冷たい指先でそっと撫で、満足げな笑みを浮かべながら耳元に低い声を落とした。
「……また明日な、ロウ」
♡2000
コメント
4件

これ続きありますか...とても気になります

読み終わりました……すごく重くて、でも引き込まれる展開でした。逃げようとして転んで捕まるまでの流れが一気で、小柳の強気な性格と、それでも術式に縛られて抵抗できない絶望感が伝わってきました。最後に気絶させられるシーンも、支配の完了という感じでゾッとしつつ、続きが気になります。3人の執着の重さが怖かったです……