「これを見られたのか。なんだか胃が痛いな」
「ごめん」
僕は心が痛い。でも余計なことは言わない。
「六車さんに動画を送られたのは知っているが、普通の男子なら我慢できなくても、夏梅ならきっとボクのために見るのを我慢してくれると信じていた。なんてことは、寝ている君を見て我慢できなくて思わずパンツまで下ろしてしまったボクには言われたくないよな」
「開き直るわけじゃないけど、僕だって普通の男子だよ」
「そうだったな。君を責めるのは間違いだ。動画を撮らせたボクが悪いんだ。黙り込まないでくれ。それよりこのビッチ! とか、もっとボクを責めてくれ」
「責めないよ。ただ今はまだ見たばかりで君と会ってもうまく話す自信がなかった」
「それで寝込んでいたのか? よく見たら泣き腫らした顔をしているな。どうしたらボクは償える? なんでもするから言ってみてくれ」
「じゃあ、セックスしたい」
どうせ断られると思って軽い気持ちで言ったのだけど――
「夏梅も普通の男子だからしたいよな。なんでもすると言ってしまったし、いいよしよう。今まで夏梅の我慢強さに甘えてずっと拒否してきてごめん」
「いいの? 心の準備は?」
「勘違いするな」
彼女がベッドに入ってきて、正面から僕に抱きついた。
「ボクだってずっと前から君としたかったんだ」
「僕のは陸のよりずっと小さいし、たぶん圭太と同じくらい早漏だよ」
「くだらないことを言うな。今ボクが好きなのは夏梅だけだ。ボクが寝ていた夏梅のパンツを下げたのをいたずらと言われたが、それは違う。夏梅は世界でたった一人のボクが好きな人だ。夏梅のおちんちんだからほしくなったんだ。見たくて触りたくて舐めたくて我慢できなかった。ほかの男のおちんちんなんて気持ち悪くて想像もしたくない」
陸のおちんちんが体の中にあると不安がなくなるという動画の中の彼女のセリフが一瞬フラバした。誰のおちんちんでもいいんじゃないの? と皮肉の一つでも言ってやろうと思ったが、次の瞬間すべてのネガティブな感情が僕の中から一掃された。
今ボクが好きなのは夏梅だけだ。
夏梅は世界でたった一人のボクが好きな人だ。
今、確かに彼女は僕のことが好きだと言った。二回も言った。僕は数え切れないほど彼女に好きだと言ったけど、彼女が僕に好きだと言ったのはこれが初めて。陸の性器を見て僕はひどく劣等感を持ってしまったけど、そんな劣等感もほかのネガティブな感情といっしょに僕の中から一瞬にして消し飛んだ。
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