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「それで…あっちの方はどうだ?」
フレッド王子がそれだけ聞くと、シドはロレッタの国の事を言われたのだと瞬時に判断した。


「はい、やはりもう駄目ですね。うち以外の国に金を借りようと動いているようですがどこも貸す気は無いようです」


「だろうな、あんな国に関わりたくないだろうし。我が国からも手は貸すなと言ってあるからな」


「そのうちまた催促に国に声がかかるのもすぐかと…」


「わかった、そしたらすぐに知らせてくれ」


「はい」


「他に何かあるか?」


「そうですね…あとはいつも通りの公務と…あっ!そうでしたこれを…」


シドは持っていた書類の中から手紙を抜くと手渡してきた。


「ああ…」


フレッドはそれを無感情に受け取る。


「あれ?嬉しくなさそうですね」


フレッド王子の意外な反応に驚いた。


「いや、そういう気分では無くてな…」


中身も見ないで机の中に放り込んだ。


「え!?中身も見ないんですか!?それって何処かの令嬢からのお誘いですよね?」


「シド、うるさいぞ」


「フレッド王子が女性の誘いを断るなんて!!」


フレッドは喚くシドを無視して公務の書類をひったくった。


自分でもあの手紙をみてこんなにも心が動かないとは思わなかった…


ロレッタを婚約者として貰っても自分は何も我慢するつもりなんてなかった。


自分が誰と寝ようと誰と会おうと気にしないと思っていた…


しかしいざ手紙を受け取ってみると、その手紙に付いた女の香りに嫌悪感を覚えた。


前はあの香りに性欲が増したのに…


今はロレッタだけで十分だ。


フレッドは手紙をしまうとその事などすぐに忘れてしまっていた。







シドが公務の合間に移動していると…


「シド様…」


プーンと甘ったるい香りと共に声をかけられる。


振り返ればあの手紙を渡した令嬢が立っていた。


「これはこれはルフレシア嬢…こんにちは。すみませんが今は忙しくて…失礼します」


サッと身を翻すと…


「待って下さい!すぐにすみますから…あの方からの返事を下さいな♡」


色っぽい声で絡めとるように手を掴まれた。


「あー…それが王子は公務忙しくて…しばらくお相手は出来なさそうです」


「え!?」


ルフレシア嬢は思ってもいない返事に声をあげた。


「フレッド様が私の誘いを断るわけありません!シド様ちゃんと手紙を渡してくださいましたか!?」


「渡しましたよ。王子はこの度婚約者を迎えたのでしばらくそういうのは控えるんじゃないでしょうか?」


「フレッド王子が?王子に限ってそんな事あるわけないですわ…もういいです。本人に直接聞きますから」


「ええ!そうして下さい!もう金輪際私を間に使うのは止めていただきたい」


シドは清々したと手を払ってその場を逃げるように足早に去っていった。


「クッ…婚約者ですって…そこの位置は私のものだったのに…」


ルフレシアはギュッとドレスを握りしめた。

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