食事を済ませたロレッタは何もする事なく部屋でポツンと座っていた。
「ロレッタ様、何処かにお出かけしてみては?部屋にこもってばかりでは気もめいりますから」
エミリーさんが心配そうに声をかけてくれた。
「でも…勝手に外に出たりしたらよろしくないのでは?あっ!もちろん逃げようなんて思ってませんが」
「ふふ、大丈夫ですよ。城下…はさすがに無理ですが王宮内なら問題ありませんわ」
「そうですか…ではエミリーさんのおすすめの場所を教えて欲しいです」
「え?私のですか?」
「はい、私はこの国の事を何も知りませんし…ここで暮らしていくのですから、色々と教えて下さい」
「わかりました!では早速中庭などはどうでしょうか?綺麗な花が咲いていますよ」
「それは見てみたいです!」
笑顔で答えるロレッタにエミリーは張り切って案内した。
「わぁ…すごく綺麗です…」
ロレッタは手入れの行き届いた庭園に見とれて足を止めた。
「この先に生垣で造った通路がありまして、その先で休憩場所があります。是非そこでお茶を飲みませんか?」
「それは…すごい贅沢ですね!」
ロレッタの声が弾む。
エミリーは元気の出たロレッタをみてほっと息を吐いた。
「この先を真っ直ぐに進めばガーデンテラスがあります…その前にお茶を用意しますので少し建物の中でお待ち頂けますか?」
しかしロレッタはガーデンテラスと聞いて瞳を輝かせた。
「私…少し先に見てきてもいいですか?ガーデンテラス…憧れていたので…」
ソワソワと先の道を気にしていた。
そんな様子にエミリーはクスクスと笑うと…
「わかりました、でも気を付けてくださいね!咲いてる花には棘も毒もある物もあります。ロレッタ様になにかあればフレッド王子が心配しますから…もちろん私も」
「はい…」
ロレッタは苦笑して頷いた。
エミリーさんは本当に心配してくれているかも知れないが…フレッド王子は…
昨夜のベッドでの会話を思い出すが…ジョージ王子の事もある。
もう信じて裏切られるのは嫌だった。
ロレッタは花には触らないと約束してテラスを目指した。
赤や白の薔薇のアーチを抜けると…少し空間があってちょうど二人でお茶を出来るかスペースがあった。
可愛らしいテーブルに椅子が二脚、日除けもありそこだけ別世界に見えた。
「素敵…」
ロレッタはゆっくりとその空間を楽しむと椅子に腰掛けた…
ここ最近こんなにものんびりと自分を休める事が出来ただろうかと思い出す…
自国ではこんな事は皆無だった…それが売られた隣国でこんな贅沢な時間を過ごせるとは…
目を閉じて風や匂いを楽しみ、エミリーさんが来るのを待っていた。
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