当時、私達は十五歳。
あの日首領は、私の知らないところで中也を見事に手懐けていた。
中也は私の犬なのに……。
或る日中也のセーフハウスへ行き、そういう行為寸前迄行っても 任務が入ったら其方を最優先にしてしまう。
その忠誠心は何なの?
某日、いつも通り中也のセーフハウスへ行った。
けれど、家主である中也は居なかったので 帰宅する迄適当に食べて待っていた。
が、その日は一日中帰って来なかった。
流石に心配になるよね。だって、中也はその日の任務を凡て終わらせていた筈だから。
私は中也に勘繰られないよう探りを入れた。けれど収穫は零。
私の考え過ぎかとも思ったが、中也も一日中飛び回って疲れていた筈。家に直行した方が身の為。
問い詰める為に証拠を掴みたかったが、私は腐っても幹部の地位を手にしているので 色々忙しい。
それから、この件は放っておく事にしたが……。
或る日、中也が知らない男と宿泊亭に入って行ったのを見てしまった。
これには私も吃驚したが、取り敢えず写真に残しておいた。
翌日、中也に直接問い詰めよう。
「中也、おかえり。遅かったじゃあないか。」
「…手前また居ンのか。良い加減自分のセーフハウス帰れや。」
やっと帰宅した中也は、帽子や外套をハンガーに掛けながら呆れたように云う。
帰って来た直後に悪いけど、早速あの件を問い詰めよう。
「中也、話があるのだけれど。」
「何だよ。」
「…昨夜、誰と何処で何をしていたの?」
「……あァ?何だそんな事かよ。昨夜はいつも通り任務漬けだったぞ。」
「いつも通り、な筈無いよね?」
「はあ?そりゃ如何云う事だ?何でそんな事が判るんだよ。手前昨日一日中会って無ェだろうが。」
「残念ながら、…中也が見知らぬ男と 宿泊亭に入って行くのを見たのだけれど?」
接近き証拠写真を見せて云うと、中也は目を逸らす。
…何その反応。予感は中ってた?否真逆ね。飽く迄も組織の狗だもの。
「ねぇ、何で逸らすの。ちゃんと此方見て教えて。」
中也のこめかみ辺りを掴んで、半ば無理矢理 此方を向かせる。
整った顔は物憂げな表情をしていた。
……これ、面倒臭いって思われてるな。
中也と口を利けなくなってしまったら、それこそ私が死んでしまう。
「…嘘、矢ッ張り何も云わないで。…ごめんね。」
面倒臭がられて 金輪際避けられ続けたら堪らないので、怖くなって此方が折れてしまった。
…こんな心算じゃなかったのに。
「………色の任務があったンだよ。標的が少年趣味でな。」
私が折れたのに、渋々と云った形で中也が今更答えた。
だが、その発言に物凄く苛々してしまった。
「…色の任務?ねぇ、何でそれ私に云わなかったの?君じゃなくて私でも出来たよね。いいや、色の任務なら尚、私の方が適材だ。行為はした?何処を触られたの?」
勢いの余り、一気に問うてしまった。
「あー、煩ェ。一気に訊くなって。」
「手前はやるなら女が希望だろ?それに、男は俺を指名したそうだ。」
「其奴、趣味悪いね。こんな蛞蝓を指名するだなんて。」
八つ当たりのように云ってしまったが、これも凡て中也が悪い。私に何も云わずに色の任務をホイホイやっちゃってさ。
「で、行為はして無ェ。触られたのは脚とか鎖骨だ。」
「…脚、触られたの。」
「……心配すんな。俺は手前が一番だよ。」
中也は安心させるよう、私の頬に触れながら云う。
私は思わず抱き締めて、中也の肩に顔を埋める。
またそうやって私を惑わせる。
「……はぁ、本当に君って狡い。」
「褒め言葉として受け取るぜ。」
一息ついてから、中也を横抱きし 寝台へと向かう。
「おい、何してンだよ。」
「ん?上書き、ね?」
「はあ?だから、行為はして無…
「あぁ、先ずお風呂行きたかった?ごめんね、一緒に入ろうか。」
中也の言葉を遮り、笑顔を作って風呂へ連れて行く。
全く…小さいのに本当重いのだから。
コメント
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よしとりあえず森さんが中也に色の任務させたの中也セコム達に言うか 中也は太宰の狗です(?)