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ある日の午後。
ライブリハを終えたミセスの3人は、誰もいない近くの公園でちょっと一息ついていた。
「いやー、さすがにちょっと疲れたなー」
ベンチに腰を下ろした若井が、ふぅ、と空を見上げる。
その隣で、元貴はコンビニで買ったアイスをちまちまと食べていた。
そんな中――
「……ふふっ」
藤澤が、ひとり木陰にしゃがみ込んでいた。
彼の前には、ハト。しかも3羽。
そして藤澤は、明らかに会話していた。
「え、ほんと?そんなこと言ってくれるの?」
まさかのタメ口。
「……え?」
最初に異変に気づいたのは元貴だった。
アイスの棒を止めて、まじまじとその光景を見つめる。
「ねぇ若井、見て。
涼ちゃん、ハトとしゃべってない?」
「え?いやいや、まさか……」
若井も見て、絶句した。
そこには――
異常に会話のキャッチボールが成立している藤澤と、3羽のハト。
しかもそのうち1羽が、
「クルッ」って言ったあとに藤澤が「あはは、ありがと〜」って返してた。
完全に通じ合ってる。
「……あのさ、涼ちゃん」
元貴が恐る恐る声をかける。
「もしかして……今、ハトと喋ってた?」
「うん」
迷いなさすぎて怖い。
「……え、“うん”!?!?」
「うん。あの子たち、
“前のライブ、上から見てたよ。お疲れさま”って言ってくれてたよ」
若井もついに参戦。
「え、え?待って。
お前、動物の言葉分かるの???」
「うん。昔から。
声とかじゃなくて、気持ちが“スーッ”て入ってくる感じ」
「スーッて何!??!」
「スーッてスーッだよ。優しい風みたいな感じ」
「それもう風の精霊やんwww」
「てことは、今まで動物と話してたのに、俺らには黙ってたの?」
「うん、だって信じてくれなさそうじゃん。
しかもカピバラと話してるって言ったら
“また癒しキャラぶって”とか言われそうで」
「……言ってたわ、俺それ」
若井が、ふと近くの野良猫を見つけて尋ねた。
「じゃあさ、今この猫、なんて言ってるの?」
藤澤は静かに猫を見つめる。
しばらくして、ふわっと笑った。
「“あなたたちの音楽、耳で聴くより、
お腹で感じるほうが気持ちいいよ”だって」
元貴と若井、
顔を見合わせて、なぜか少し泣きそうになった。
その日から、
藤澤がときどきベランダの鳩と談笑してても、
公園で猫と真顔で向き合ってても、
誰も何もツッコまなくなった。
むしろ、「あれ、なんて言ってた?」って聞くようになった。
今日もミセスは平和です。
(突っ込まなくなった2人も怖い)