はっと目を覚ました。白い天井。消毒液の匂い。ここは病院だ。眠る前の記憶を辿る。そういえばぼくは、新薬の実験のためにここに来ていたのだった。
それにしても最低な夢を見た。提出を求められたレポートには、入眠はスムーズ、中途覚醒もなし、だが悪夢がひどい、といったような内容を書いて渡した。
あの悪夢から一週間が過ぎたころ、山本くんがうきうきとしながら僕に話しかけてきた。
「やばいっすやばいっす、俺こないだカメラの話したじゃないですか、一発当てるって」
「そうだっけ」
「はい! で、こないだ映像撮ったんですよ。それを十枚くらいディスクに焼いたら一枚十万で売れたんですよ! これから追加で焼いて売りさばく予定です。売上は全部事務所に収めるんで、しばらくは安泰っすよ!」
「へえ、すごいじゃないか」
本当は弁護士本来の仕事を取ってきてほしいんだけどね。
「全部山岡さんのおかげですよ」
「ん? 僕は何もしてないよ」
「いやいや、してくれたじゃないですか」
「何を?」
「新薬の実験」
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