黒side
また誰かが脱落してゆく
その度に周りの人間たちは泣き崩れたりする
なぜなのだろうか
脱落したことは特に悲しくもない
本部のエネルギーとしてまた活用されるただそれだけ
どうでもよかった
私はやるべき事をするだけ
そう思いながら地下へと向かう
私の足音が大きく響く
下へ続く螺旋階段を降りていった
そして1番下へとたどり着き、自分自身の手のひらを何も無い壁に当てる
すると黄緑色の光の線が扉の周りに広がらせる扉がゆっくりと開かれ、そこには研究室があった
暗く不思議で不安を煽られる
空間重要な情報やプレイヤー達の能力を保管する場所
所々に様々なアバターが水の中に保管されている
私は真ん中の通路を歩き、奥にある新しく追加されたアバターが入ってるガラスに手を当てるそして彼女の感情の中に入り魂を抜き取る
私の手元には小さく水色に輝く欠片
「…ゆっくりとおやすみください……」
欠片を見つめた後、様々な色の欠片が積まれている箱の中へと入れた
それと同時にインカムから彼の声が聞こえてきた
『おい黒。今どこにいる』
「……地下室…」
『相変わらず好きだなぁお前は。さっさと戻ってこい。そろそろ”本番のゲーム”が始まるんだからな』
「………わかった…マスターにもお伝えしておいて……今から戻るって…」
『あいよ。早く戻ってこいよ』
「うん…そうする……ゼロも準備…しておいて」
私はそう言ってインカムの通信を切る
彼も相変わらずですね
そう思いながら私は地下室を後にした
カインside
カルメが楽しそうに次のゲーム説明をし始めた『次のゲームはアスレチックだよぉー!最初は綱渡り、その次が蛇地獄、そして最終が餌地獄だよー!生き残れるのはたったの20名まで!!20人達成した時点で強制に脱落させまーす。制限時間は30分!』
現在約80人程度
急がないと確実に脱落
……すなわち死ぬということ
「……カイン」
「…どうしたテテル」
テテルは俺に聞いてきた
「やるしか無いのかな…こんな皮肉で、うざったらしいこのゲームを」
下を向いたままそう聞いてくる
逃げ場なんてどこにもない
帰れるとすれば生き残るしか無いのだ
「今はそうだな。俺はあいつを潰さねぇと気が済まないからやるが」
まだ怒りが収まりきれてない
どうせ死ぬのならあいつの顔面を殴らなければ気が晴れるだろう
「……そっか」
テテルはそう言ってそっぽを向いた
そしてゲームは開始する
『それでは……プレイヤーの皆様はスタート地点へと移動をお願いします』
黒のアナウンスでみんな急いで前へ前へと移動する
「どけよ!!!俺が先だ!」
「おいふざけんな!!」
ギャーギャーと騒ぐ
プレイヤー達俺らは後ろに移動する
押し押される流れに乗らないように
『それでは……ゲーム………開始』
前の壁が消えるそれと同時にアスレチックのステージが見えた
《綱渡り》
ひとつの紐が遠くの地面まで繋がっている落ちてしまえば何も見えない暗闇へと飲み込まれてしまう
だが暗闇の底からなのか唸り声が聞こえてきた想像したくは無い何かなのだろう
前にいたプレイヤー達は流れに飲まれてしまい、数人はそこで脱落していった
俺らもゆっくりと確実に進んで行く
途中奥底から悲鳴がいくつか聞こえると同時にバキボキと硬い何かを砕く音も耳に響き渡った考えてしまえば元も子もない
もう分かりきっている
じっくり暗やみを見てみれば壁に大量の血がベッタリと着いているのだから
Bブロック
アスレチックステージ
ウルボside
《綱渡り》
僕はゆっくりと1本の紐に足を踏み入れるでもこの紐は意外と頑丈で揺れたりはしない
少し安心した
しかしまだゴールまで遠い
後ろにはMayさん、ヒナミィさん、もかのすけさん、けけさんの順番で並んでいた
その後ろには知らないプレイヤーの方々が早くしろと怒鳴りながら待っている
「ゆっくりでいいからね。ウルボくん」「は……はい…!」
Mayさんがそう優しく言ってくれた
慎重に…慎重に……
「うわあああぁぁぁ……」
後ろから悲鳴が聞こえたけど声的に彼らでは無い
知らない誰かの声
「大丈夫……気にせず前に行って」
Mayさんが後ろからそう言ってくれるが僕は不安でしかない
不安を抱えながら僕は前に進む
けけside
「とろいなぁ!!早くしろよ!!」
後ろから知らない奴の怒鳴り声が聞こえる
最初は気にしてはいなかったがみんな生きたいと必死なんだ
仕方ない感情
後ろの奴らは怒鳴るばかり
「早くしろよそこのクソチビ!!!そのまま落としてやろうk……」
俺は後ろのやつに足をひっかけて落としてやった
「うわあああぁぁぁ……」
そいつは暗闇の底へ落ちてゆく
「次は誰が来ますか?」
俺がそう前を向いたまま言うとそいつらは怖くなったのか黙り込んだ
あるやつは俺の足を蹴って落とそうとしたがそんなものはまた蹴っ飛ばせばいい
俺は襲おうとした奴らを片っ端から避けて蹴飛ばすを繰り返していた
幸運にもこの紐は揺れずに済んでいた
本来なら揺れるはずの紐だが……
まぁあまり考えないようにしよう
もかのすけside
誰かがウルボくんを落としてやろうかと言った俺はキレて今すぐにでもそいつの胸ぐらを掴みたいと思っていたがけけさんがそいつを落としてくれたようだった
流石けけさん
「え?なんか聴こえなかった??気のせい?」ヒナミィは1度足を止めて聞いてくるが俺はなんも無いんじゃね?と適当に返す
「さっさと進も」そう言ってどんどん前に進んで行った
Cブロック アスレチックステージ
ねくとside
《綱渡り》
頑張ってゆっくりと前に進む
「ねくと殿。行けるか?」
ラケルタさんが後ろからそう言ってくる
大丈夫とだけ伝えてどんどんと前へ進んで行った
私の後ろにはラケコルさんの2人とフロアとダンテさん、そしてこのゲームで知り合ったらりちゃん、syuさん、やみづきとゲームに望んでいた
まぁと言ってもほとんどのプレイヤーさんが私やダンテさんを落とそうとした奴がいたらしく、そいつらは全員ラケルタさんが落としてくれたらしい
流石魔王様…容赦ない
この人数なら確実にゴール出来そう
頑張っていきますか
ラケルタside
アスレチックステージ前──待合室──
こんなくだらんゲームなど参加したくも無いが帰るためには仕方の無いことだ
これは単なる好奇心で出来たゲームに過ぎぬと思っている
人間の心境を遊ばれているような感覚
まぁまずはこのゲームをクリアすることを優先するとしよう
というか…なぜ我の身長が前より小さくなってしまっておるのだ……
最初のゲームから違和感があったがやはり力が弱まっている
基本魔法なら使えそうだが威力がそもそも弱い何度も試すが中々難しくなっておった
コルニクスも同じだという
「お主もか…」
「はい。基本魔法はそこそこ使えるとは思いますが……あまり連続の使用は不可能に近いでしょう」
コルニクスが自身の手を眺めながらそう言った「私も同じですねー……肝心のハサミが出せない…」
ダンディーも力が弱まってしまっているらしい
「我もだ………もう違和感でしかならぬ…何故よりによってもっと力が弱まってしまったのだ…」
「なんか体も重く感じるしねー……というかさっきのゲームで疲れちゃったよ…」
フロア、ねくと殿は疲れている様子で地面に座り込む
「というか…ラケルタ殿何故そこまで小さくなっておるのだ?我も小さくなってしまったが…」
フロアは我に聞いてくるあやつも同様、元の身長より人間並みに小さくなっておった
大体150~160と言ったところか
「我にも分からぬ。この理由はあのカルメという娘が知っているはずだ。まずは次のゲームをクリアしなければ話にならないだろう」
「あの小娘がか?全くめんどうだ……早く帰りたい…」
フロアはため息をしながらそう言った
「早く行きますよ皆さん」
コルニクスがそう言い、ステージ前まで移動しに行く先頭を見てみれば人間どもの騒いでいる様子がよく見えた
俺が先に出るだの
邪魔だの
くだらん
あぁいう奴ほど直ぐに命は経つのだろうな
早速綱渡りのステージに足を踏み入れる途中、ダンティーやねくと殿を落とそうと企む奴がいたらしいが我は1人だけ片手で胸ぐらを掴み持ち上げ落とす
……まだ腕の力は残っているのだな
走行しているうちに綱渡りの終わりが近づいていた
なんだ。すぐに終わるではないか
……と思っていたがねくと殿の様子がおかしいもうすぐそこだと言うのにあまり進まないのだ「ねくと殿。行けるか?」
「大丈夫です…!」
本当に大丈夫だろうか
だが元の力が戻らない以上、我は何も出来ぬどうしたものか
──上層部──
「ねぇ…今の状況は?」
カルメが彼女に声をかける
「順調ですわ…皆私の魔力にかかってますし、楽しいゲームとなること間違いなしかと」
彼女はニコニコとしながら返したサキュバスの姿で髪は長く、金髪の女性身長は170と言ったところだろうか
赤く染まった大人なドレスを着こなしてモニターを眺めている
「そっかあ!それは良かった。脱落者を沢山出さないとねぇー。頼んだよ?ダチュラ」
カルメがそう言うとダチュラはモニターを眺めたままニコッとした
「えぇ……仰せのままに…主様」
彼女たちは画面越しに彼らを楽しそうに眺めるたった40mの細い道だと言うのに彼らは全然進まず、その場でとどまり小さく歩いているだけまだつかないのかとキレ散らかしている人間もいる
さぁ…いつ気づくのだろう
その景色が幻覚という事実を───
コルニクスside
先程から思っていたことですが…
ゴールはすぐそこだと言うのに全然進む気配がありません
ねくと殿は少しづつでしか歩いてない様子……しかしこのような場では無意味な行動だと思うのですが
…一体何故?
そう考えていると後ろが何やら騒がしい
またくだらない事を発している人間がいるのでしょうか
まぁ先頭が全然動かないですからそれはむりもないのでしょう
それかねくと殿に何かあったのでしょうか
「…我が魔王……あまり先に進んでないのですが何かあったのですか?」
「我にも分からぬ…だが1部の人間の様子がおかしい。しかしこんなに道が長かっただろうか」
道が長い?
「失礼ですが我が魔王。この綱渡り…長さとしては40m程かと思われます……」
「なぬ?!」
我が魔王の声に驚いたのか、ねくと殿が前を向いたまま聞いてきた
「ん?どうかしましたー?」
「コルニクスさん何か分かったのですか?」
ダンティーも不思議そうに聞いてくる
皆は気づいていなかったのだろう
「私にはすぐに終わるはずと思っていたのですが全然前に進まずでしたのでもしかしたらと……」
「なぬ?40m?そんな訳無かろう。我には……えーっと…現世で言う某ドームの長さと思っていた!」
フロア殿がそういえばダンティーが呆れて言う「何故こんな時にそれを出すんですか…けど私にも道は長く見えます」
これはもしや……幻影魔法のせいか?
であれば説明もつく何者かが幻影魔法を使用し、ワタクシ達に幻覚を見せられ短いはずの道を長く見せているということですか
ならば簡単に抜けられるでしょう
幻影魔法の解除をすればいいだけの話です
ワタクシは皆、そして自分自身の周りに付いている怪しげな紫色のモヤを見つけるように意識を集中させる
相手に見つからぬよう静かにそのモヤを打ち砕く
砕かれたモヤの欠片は暗闇の底に落ちてゆきました
目の前の景色が暗闇から出られたような感覚
綱渡りだと思われていた地面だが、まだ少し幅がある
それも2,3人は横に並びながら歩ける幅
「…これで幻覚は消えたはずです。どうでしょうか」
ワタクシがそう聞くとねくと殿は驚いた様子で言葉を発する
「ええ?!さっきまでの道が……って私少ししか進んでなかったんじゃん」
「コルニクス。よくやった」
「有り難きお言葉です。我が魔王」
パゴニアside
私がモニター室に入るとダチュラさんが珍しくキョトンとした顔でモニターを見ていた
「……どうかされたのですか?ダチュラさん」私がそう問いただすと困惑した状態で私の両肩をガシッと掴む
「どうしたもこうしたもありませんわ!!私の魔力を打ち消したものが出てきたんですのよ??こんなの聞いてませんわ!」
そう泣きながら強くゆさゆさと私を揺さぶる「……とりあえず…落ち着いてください。まだ時間はあるのです。存分に力を発揮してもらって構いません」
「………そ…そうですわね…まだまだやってやりますわ!!」
案外この方は負けず嫌いなのかもしれませんね彼女は私から離れ、また能力発動に専念する
さて…人数が少し多いようですね
もしこのゲームに相応しくない者と判断されてしまった方から処分していきましょうか
そうすれば黒も楽に仕事が出来るでしょう
しかしその後も脱落者は多く出たが、彼らはまだ生き残っているのですが厄介なことにもなりそうです
「……パゴニアさん。少しよろしいですか?」後ろから聞きなれた声が聞こえる
振り返るとそこには黒さんの姿があった
「なんでしょう?もう皆様の準備は終わったはずですが」
「いいえ……次のゲームに少し相談があるのです」
“本番のゲームをより楽しくするために……とマスターから伝言を受けております”
Aブロック
カインside
走行しているうちに綱渡りが終わり次のゾーンへと向かった
そこは何も無い1本道に途中バラバラに壁が立ち、隙間から何匹もの蛇が飛び出してゆく
しかも毒を吐きながら飛んでくるやつもいるようだった
ほとんどのやつは綱渡りゾーンで脱落している俺ら以外にもまだ何人かいるようだ
俺らが生き残るためには奴らを脱落させなければならない
まぁそう簡単には行かないだろうな
「……私とてもじゃないけどここから行きたくないのですが…」
少しカタカタと震えるシスターさん
そういえばシスターさんは蛇が苦手だった
「頑張りましょう。僕がついてますから」
ゲールさんがそう言って彼女の背中を撫でる「正直私も行きたくないんだけど……でも行かないとクリアにはならないよね…」
『残り時間:10分』
どちらにせよ早く進まなければならない
シスターさんは少し時間がかかるらしく先に行って欲しいとの事
ゲールさんも残り、シスターさんを連れてゆくと言った
俺はその言葉を信じて先へ進む
ここは何も問題なくクリアできたさて…目の前の光景を俺はとてもじゃないが見たくないなぜなら崖の足場があり、そして下に落ちれば魚たちに食われる運命であろう
しかもその魚共、何故か知らんが飛んでくる
避けながらなど無理な話では無いのか?
そう考えているとザペルがポンっと優しく俺の肩を叩く
「俺に任せとけ」
そう一言だけ言ってザペルは大盾を構える
足場には他のプレイヤーの姿もあった
俺は今からするザペルの行動を察する
「……任せた」
少し気は引けるかもしれないが彼らが俺たちに敵対している以上、仕方の無い事だ
「テテル。俺の腕にくっつけ」
「え?う…うん」
腕を差し出すとテテルは俺の腕にくっつく
「よぉし…行くぞ!」
ザペルは全速力で走り気楽にアスレチックをこなす
俺もその後に続いた
「お…おい待て!!止まれ!!!」
参加者が大声でそういうがどうだっていい
ザペルは大盾を前にし、そいつを突き落とした悲鳴が聞こえたあと、青く染った海は嘘のように赤く染る
こいつがやっていることは人殺しと変わりないだが生き残るためには仕方の無いことだ
そう……生き残るためにはな
犠牲も付き物なのだと
そして俺らはゴールできた
『残り時間:5分』
未だゲールさん達を見かけない
まさか───
残り時間は着々と進んでゆく
もう既にアスレチックのステージが崩れ始めていた
そしてゆっくりと扉が閉じられる
僕達は順調に障害物を避けながら進んで行った先に行った男たちの遺体が前に散らる
まだ見慣れない…
見ただけで吐き気がした
それを避けながら進んでいゆく
カインくん達は本当に凄い
障害物も軽く躱す
僕も負けてられない
そんなことを考えながら走っていると突然左目が真っ暗になり痛みが走った
それもかなりの激痛
今にも気絶してしまいそうだ
先程毒を吐く蛇を見たからその毒にやられたのだろう
左目が全く見えずただただ刺されるような痛みが走る
足が崩れ跪く体制でいた
「ゲールさん!!大丈夫ですか?!」
シスターさんの声が聞こえる
「……ッ…大丈夫です…!!早く進んで…!」時間が無い僕は直ぐに立ち上がる
後ろにあった障害物や道は大きな音を立てながら奥底の暗闇へと落ちてゆく
僕は彼女の肩を借りながら部屋に着いた
しかしその先の扉は既に閉まっており、壁紙には『ゲームオーバー』という文字が浮かんでいる
ただ唖然とするこの場に居るのはシスターさんと僕だけ
僕は何も出来なかった
何の役にも立たない
「ゲールさん」
呆然としていた僕にそう声をかけられる
綺麗な笑顔で彼女は僕を見ていた
天井もゆっくりと崩れてゆく
そんな中で僕の手を暖かく、強く握りながら僕と彼女は地面に座り込んだ
「…かっこよかったです。ゲールさんはみんなの中でも……とてもかっこよかったです」
切実にそう言われた彼女は悔しそうな顔で、涙を流す
「私は……ッ!誰にも幸せをあげれなかった……ッ!!!この世界ならって…ッッ!!けど結局………何も出来ませんでした…守られてばかりでした…」
彼女は僕の顔を見ながらポロポロと泣き出す
彼女のことはよく知っていた
過去のこと、トラウマになってしまったことを僕に話してくれた
僕だってそうだけどこれだけは言える
「……いいえ。僕は貴方がいてくれたからここまで来れたんです…貴方が僕を助けてくれたから…幸せをくれたから」
笑顔で言えた
昔から誰にも頼れなかった
両親も僕のことなんかどうでもいいと言われ、学校でも虐められてばかりでいつも1人で泣いていた
でも僕はこの世界にこれて良かったと思える
だってこんなにも優しくて僕のことを信頼してくれる相手に出会えたのだから
両手で恋人繋ぎをして僕は恥ずかしくなりながらも言う
「僕は…あなたの事が大好きです。いつか必ず…お迎えに行きます」
彼女は呆然とした後に笑顔で答えた
「…待ってます」
床が段々と崩れ落ち2人は手を繋いだまま目を静かに閉じる
顔をお互い近ずけ……キスを交わした
そして2人は奥底の暗闇へと沈んで行ったのだ
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