💚「俺、間違えちゃったなぁ」
阿部はそう言って頭の花弁を振り落とした。
それはまるで、大切にしてきた気持ちを乱暴に心から締め出し投げ捨てているかのようだった。
❤️「阿部の気持ちは、阿部のものだから」
💚「……」
❤️「俺の前でくらい、無理しないで。失恋仲間なんだし」
💚「舘さん、恋人いるじゃん」
❤️「失恋したのには変わりないですし」
やっと阿部が微笑んだ。
💚「ほんとはずっと苦しくて。舘さんに会いたかったけど、恋人できたからダメだって思ったら誰にもうまく甘えられなくて」
❤️「そうだよね、急に全然来なくなったから。俺は心配してたよ」
💚「ん、ありがと」
それからはなるべく2人で楽しい話をした。
所謂氷河期の話にも及んだ。薔薇を浮かべた風呂に2人で入って深い話をするなんて、あの頃の俺たちが聞いたら飛び上がって驚くだろうねと笑った。
本当にこうしているのが不思議なくらい、確かに俺たちはすれ違った時期があったのだ。今なら阿部のした事がグループのためでもあったと当たり前に理解できるが、当時の俺にはそうは思えなかった。
❤️「改めて思い返しても、俺阿部にすごい事言ったよね」
💚「舘さんがグループを守りたかったの、今ならわかるよ。あの時はもう許されないと思ったけど」
その中で、阿部は『舘さんのメンカラが赤なの、俺すごい納得した』と言う。
❤️「どういうこと? 」
💚「戦隊ものの主役って赤が多いじゃん。真ん中に立って、一番に名乗って、仲間を引っ張ったりもして。グループにとって舘さんはそういう存在だなって思った 」
かっこいいよと呟いた阿部の顔が赤かったのは、そして隣でそれを聞く自分の顔が妙に熱かったのは 、長く風呂に浸かっていたせいだろうか。
噎せ返るほどの薔薇の香りに包まれたバスルームでなんか勿体ないなと言いながら身体を流し、髪を乾かした阿部は帰り支度を始めた。
❤️「泊まればいいのに」
💚「明日の現場、俺の家のほうが近いから。じゃあお邪魔しました」
ドアが閉まり、静まり返った家の中。
1人になると急に、あの身体がぎくりと冷える感覚が蘇る。
俺は阿部とどうなりたいんだろうか。
少なくとも今、佐久間と同じくらい悲しい思いをしないでいて欲しい存在である事だけは確かだった。
コメント
10件
阿部ちゃんの「間違えちゃった」 の意味って
舘様早く気づいて!!気持ちに!
舘様色白よね。一緒に風呂入るとか結構ないと思うんだけど、舘よー。モタモタしてんなあ。