テラーノベル
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太宰は緊張で手のひらに汗をかいていた。夕暮れの光が窓から差し込み、美琴の横顔を優しく照らしている。心臓がうるさいほど打ち、言葉を発するたびに喉が焼けつくようだった。
「美琴……その、ずっと前から好きでした」
彼の声は、いつもの冗談めかした調子ではなく、震えを孕んでいた。
太宰side
胸の奥に秘め続けていた想いを、ようやく言葉に乗せた。けれど、口に出した瞬間、不安が津波のように押し寄せる。
(バカだな……振られるかもしれないのに、なんで今なんだよ)
けれど、それでも言わずにはいられなかった。彼女の笑顔を見るたびに、隣を歩くたびに、自分の心が確かに彼女に向かって動いていることに気づいてしまったから。
(どうか、この気持ちが……届きますように)
自分でも気づかぬうちに、指先が小さく震えていた。
「……どうしたの? 太宰くん」
美琴のその一言が、いつもと同じ穏やかな声色で、でもどこか緊張を孕んでいた。
美琴side
彼の様子がどこか普段と違っていた。いつもは飄々として、冗談ばかり言っている太宰くんが、真剣な顔で立っている。
(まさか……うそ、そんなこと……)
彼の告白を聞いた瞬間、時間が止まったように感じた。心臓が大きく跳ねる。
(私、太宰くんに……そんな風に思われてたの?)
胸の奥が温かくなって、同時に少し怖くもなった。だって、自分の気持ちもどこかで気づいていたから。
(私も……ずっと一緒にいれたらって思ってた)
彼女の目に、そっと涙が浮かんだ。それは嬉しさと驚きと、そしてまだ自分でも整理できない感情の混ざったものだった
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