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午後から眠気と戦いながら、引き継ぎ作業をする美優
「|咲《さき》ちゃん(片岡ちゃん)もう大丈夫だよね?」
「いえいえ、まだ美優さんが隣りに居てくださるから出来てるだけで、1人だと不安しかないです」
「大丈夫だよ。最近は、私、黙って見てるもの」
「はあ〜突然のアクシデントには対応出来ないです」
「まあ、秘書業務で分からないことは、素直に常務に聞いて指示を仰げばいいし、経理事務に関しては、井上も杉野課長も居るから大丈夫だよ」
「ありがとうございます。頑張ります。でも、美優さん早く戻って来てくださいね」
「そのつもりだけど、育児が楽しくなったら、戻って来ないかもしれないし……」
「えー!」
「ふふ、子どもの成長を見逃したくないという思いと、仕事を続けたい、という思いの|狭間《はざま》で今は迷ってるの。最長2年あるから、ゆっくり考えるわ」
「え〜そうなんですか?……」
「あ、でも、咲ちゃん、もし結婚とかしたくなったら、遠慮なくしてね。人事部がきちんと考えてくれるだろうし……」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ね〜井上と……考えてるの?」
「あ、考えてないことは……」
「そうなんだ!」ニヤニヤ
「でも、まだ彼は……」
「え? そうなの? 何やってんのよね!まったく……」
「あは……」
──ちょっと、喝入れるか!
「幸せになって欲しいなぁ〜」
「ありがとうございます。美優さんご夫婦みたいになれるように頑張ります」
「いえいえ、ウチなんて……」
──また、巨乳フェチを思い出してしまった──
はぁ……
「ちょっと休憩しようか?」
「はい」
会議室から出ると、何やら洋平が誰かと話してる。
「ん?」
「あー!美優ちゃん、久しぶり〜」
「えー? 高橋さん?」
「お〜そうだよ」
「お久しぶりです。どうしたんですか?」
高橋さんは、洋平の同期で、初めて出会った時のメンバーの1人。
数年前に、大阪へ転勤したのだ。
そして……私の同期、村瀬夏希ちゃんと結婚し、
今は、2児の父。
「お〜出張でね。元気そうだね」
「はい、おかげ様で……なっちゃん元気にしてますか? 時々、SNSでやり取りしてますが……」
「うん、相変わらず子育てで毎日、|逞《たくま》しく母してるよ」
「あはは、でしょうね。良かった、元気そうで」
「美優ちゃんもママになるんだって?」
「あ、はい」
「おめでとう!で、洋平のだらしなくヘラヘラした顔を拝みに来たのよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「誰がだらしなくヘラヘラしてんだよ」
「もう目尻が下がって、幸せ〜♡って顔してんじゃんかよ」
「ハハッ、前からこんな顔だよ」
「イヤ〜良かったな洋平!お前らのこと、ずっと心配してたんだよ」
「お〜心配かけたな」
「海外へ行っちまって……でも、良かった! 結婚した! と思ったら、もうパパになるって、ビックリだよ」
「ハハ」
「お前は、美優ちゃんと出会った時もそう!
出会った初日に告白して、付き合って……マジでビックリさせられっぱなし」
「ふふ」
「でも、そのおかげで俺も藤沢も、夏希と葵ちゃんと結婚出来たわけだし……」
「お〜そうだよ、俺のおかげだよ、感謝しろよ!」
「ハハ、結局、お前らは、1番最後に結婚したと思ったら、課長昇進1番乗りだし、パパになるし……良かったな」
「お〜ありがとう」
「ありがとうございます」
「結婚式、身内だけで19日に挙げるんだよ」
「そうなのか? 良かったなぁ。今ならあんまりお腹も目立ってないよな。美優ちゃん細いから……」
チラッと、胸を見た!
「え? なんか異常にデカくなってね〜か胸!」と、
後ろを向いて、こっそり洋平に囁く高橋さん。
「お〜そうなんだよ。ふふふ」
「何? 変態!」
「ハハ。うん、まあ、この時期だし、披露宴は、家族3人になってから、ゆっくりな」
「お〜そん時は、夫婦で呼んでくれよ」
「もちろん!」
「いや〜しかし美優ちゃん、相変わらず可愛いなぁ〜
イヤ、ママの顔だから綺麗だな」
「え〜そんなこと〜♡
ありがとうございます。ふふふ」
「育児に一生懸命になると、身なりなんて気にしてらんない!って夏希なんかボロボロだよ。可愛そうに……」
「そうなんだ……やっぱり大変ですよね、育児って……」
「そうだよ、洋平、美優ちゃんを手伝ってあげろよ」
「お〜もちろん」
「大丈夫よね〜ダーリンは……」
「お、お〜」
「ふふ、完全に尻に敷かれてるな洋平」
「そんなことないよ」
「そうですよ……」
「まあ、仲良し夫婦に会えて良かった。お幸せに〜」
「お〜お前もな!」
「お元気で! なっちゃんにもヨロシク〜」
「はいよ、じゃあまたな〜」
「またな」
「お気をつけて〜」
「なんか……高橋さん……老けたね」
「だよな、俺も思ってたんだ。でも、気にするだろうと思って言えなかった」
「うん、そうだね。なっちゃんもボロボロって言ってたなぁ〜育児って、そんなに大変なんだ〜」
「ボロボロにならないように、頑張ろう……」
「老けないように、頑張ろう……」
「暗っ! なんすか? このどんよりした空気は!」
「あ、井上、ちょっと! あ、洋平もちょっと!」
と、会議室に3人で入った。
「何? 何?」
「ね〜ちょっとアンタ、咲ちゃんとのこと、どう考えてるのよ!」
「どう? って」
「結婚か……」と洋平
「そうよ」
「あ〜いや、俺はそろそろとは思ってるけど……」
「そうなんだ! じゃあ早くプロポーズしちゃいなよ」
「え? だけど、今したって、お前が産休の間、彼女が後任になるわけだし……」
「え? 結婚イコール退職なの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「咲ちゃん今年23歳、そろそろ考え出す年頃なのよね〜」
「そうだけど……」
「まあ、結婚なんてタイミングだからな、後悔だけはしないように! コイツだ! って思ったら、突き進め!」
「あ、はい、そうですよね」
「うん、後任に関しては、また、すぐ育てれば大丈夫よ。あ〜もう新入社員から育てようか?」
「いや、それは荷が重すぎるだろう」
「そうよね〜《《課長》》次は誰が良いと思う?」
「2年目は……田ノ上か……あ〜」
「あ〜」
「ちょっと! 2人して、あ〜って何よ」
「いや、秘書って感じじゃないんだよな」
「うん、そうっすよね」
「なんか、失礼!」
「まあ、なんとかなるよ」
「そうそう、井上は、そんなこと心配しないで、
突き進め! あなたも来年30じゃない?」
「そうだな、身を固めるか……」
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
「なんすか2人して……ハハ」
「エールを送ってるのよ」
「そうそう、頑張れ!」
「洋平さん、プロポーズの仕方教えてください!」
「オ〜じっくり話そうか……」
──あれ? 結局プロポーズって、どれだっけ?
帰国して住み着いちゃって……案外、覚えてないもんだなぁ〜ま、いいか