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「 夏 の果 」
もとぱ
大森side
学校に 来る意味は、とっくに無くしていた。
教室では空気みたいな存在。
無視されるならマシで、背中には机の足。腕には マジックの落書き。
制服で隠れる場所を皆は正確に知っていた。
気づいてないふりをする教師の視線。
笑っているようなクラスメイトの横顔。
その全部が 僕を、” ここに居てはいけないもの “に変えていった。
でも帰ればもっと息が出来なかった。
「 また先生から電話来てたわよ。お前 また何かしたんじゃないでしょうね。 」
母はいつも怒鳴り声から始まる。
何もしていなくても 関係ない。
何かあれば、すぐに物が飛んできた。
食器。リモコン。その辺にあったペン。
あたっても謝られない。あたらなくても殴られる。
父親はもう居ない。
僕を残して、どこか遠くへ 逃げた。
母は 僕を憎んでいる。
言葉じゃ言わない。けど 毎日の仕打ちが、全部それを物語っていた。
そんな日々の中で 学校の屋上だけが。
ほんの少しだけ外の空気 だった。
たまたま逃げ場を探して鍵を開けた。
タンクの陰でじっとしていると、少しだけ風が 触れてくれた。
でもその日。誰かが来た。
若井くん。
階段ですれ違ったことがあった。
ひとつ上の先輩。
だけど、その時よりも目が綺麗だった。
「 …だれ? 」
低い声だった。
怒ってない。でも 僕の存在を確かに” 確認した “声だった。
怖くなかった。
「 若井くん、でしょ。 」
名前を知ってると、少しだけ安心される気がして そう言った。
本当は何も知らなかった。
でも、知らないと言うと拒まれそうなきがして。
「 じゃあ、居てもいい? 」
この場所に” 居てもいいか “なんて、本当は誰にも許されなかった。
でも、彼は 追い出さなかった。
夕方 僕は教室を出て彼と屋上の自販機の前に並んでいた。
ラムネを二本 買って。
「 ここの、よく冷えてるから。 」
そう言って渡された ラムネ
しゅぽん。とビー玉が弾けた時。胸の奥に何かが滲んだ。
「 ……ありがとう。 」
言葉にしたのは久しぶりだった。
そういえば、ラムネの味 なんて 何年ぶりだったろう。
炭酸が喉に沁みた。
でも 嫌じゃ なかった。
ラムネ……夏ですね。
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