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目を開けると、まず見えたのは絵名の顔。
昨日も同じ事をしていたとはいえ、流石に慣れない風景だったのでどきりとして脳が働く。手はずっと握られていて、私は反射的に握り返すように手に力を込めた。
私はなんとなくこの状況が続いてほしくて、体を起こさなかった。
すると、無機質なアラームが鳴り響く。
「……んん〜、もう朝……。って!」
目を開き、驚いた絵名。朝から煩くなるなと思い、心構え。
「起きてるなら言いなさいよ起きなさいよ!」
「おはよう」
「う、首いった〜……。おはよ。顔見られてたなんて最悪」
「私は昨日は寝てたから大丈夫だったのに」
「まふゆのことだし、どうせ日和って寝ないわよ。あと普通に身体は疲れてるんだし、早めに寝たほうがよかったの」
昨日は十一時にセカイに連れて来られて寝させられた。しかし、絵名の言う通り身体は疲れていたため、目をつぶったらすぐに寝れた。そして現に今、体を起こそうとすることに怠さはない。
「で、起きないの?」
「うーん」
居心地がいいので、起きたくないと思ってしまっている。こんなことがあるなんて、よっぽど疲れていたのだろうか。しかし学校がある。私は気怠げな体を起こした。
「ちょっと、手」
「が、どうしたの?」
「握ったままなんだけど」
「ああ……」
本当だ、右手には絵名の手が握られている。
「ちょっと、なんで更に強く握るのよ!」
「……分からない」
「それ万能じゃないからね。学校行きなくないのは分かるけど、行かなきゃ駄目でしょ優等生。」
それは分かっているのだが、そうではないんだ。学校に行きたくない、というよりかは……
「この場から、離れたくない?」
「その気持ちも痛いほど分かるけど、行かなきゃ駄目だからね」
「…………」
セカイの居心地がいいから、なのだろうか。それともまだ睡眠不足なのだろうか。その可能性はある。沢山今日寝たとはいえ、まともに寝れていなかった。
「ちょっと、行く気あるの?」
「あると思うよ」
「手が離れないんだけど」
私に手が見えるように腕を上げて、私の手を握る力をなくした絵名だったが、手は離れていない。私が握っているからだ。
「……絵名、一緒に行く?」
「行かないわよ!」
「そっか」
「はぁ……なんなのよ」
呆れた顔で私を見てくる絵名。仕方なく私は手を離す。何かが抜け落ちてしまったような、心に穴ができた感じがした。
「……時々、手を貸してほしい」
「手!? 膝じゃなくて!?」
じゃあ、膝も。
──いや、なんでもいい。側に居てくれるなら。
「絵名を貸してほしい」
「睡眠不足、やっぱり学校は行かないほうがいいかもね」
睡眠不足のせいにされてしまったが、生憎目はとても覚めているし、脳も働いていると思う。そう、だからこれは私の本心なんだと思う。でも今は言わない。また、冗談だと捉えられてしまうから。