暑い。もう9月半ばだと言うのに太陽はこれでもかと輝いている。部屋でこの暑さなら外に出たら死んでしまいそうだ。体を伝う汗の感覚が気持ち悪い。作業が終わったらさっさとシャワーを浴びよう。切るのがめんどくさくて2年間ぐらいそのままにしていた髪の毛を束ねて、残りの時間を過ごすことにした。こんな日に限って、エアコンは壊れていて動かない。なんて運が悪い。
「たっだいま〜」
ガチャリ、扉が開いた音と共に疲れきった声が聞こえてきた。彼の部活はバスケ部らしく、部活の度に疲れきって帰ってくる。大きすぎるため息と、そういやエアコンぶっ壊れたんだっけ、と呟いてまた大きなため息をつく。先に風呂に入っていい、と伝えるとサンキュ、と軽い感謝が帰ってくる。まぁ、まだまだ作業はかかりそうだし、大して問題ないが。1年の頃、すっごい大喧嘩をして以来。彼とは、人生一の親友である。相手…一輝が何と思ってるかは分からないけど。そんなことに思いを馳せながら、ペンを走らせる。あと3行ぐらい書いて終わりだ。この作業というのは、陽子くんと最近一緒に取り掛かっているもので、陽子君が彼女の姉、雫から受け継いだ異能『流れ星』についてだ。『流れ星』を使うにはどうやら生き物の命を奪う必要があるらしい。彼女はそれが嫌で僕に協力を求めてきた。僕も、彼女が異能何かのために、人であれなんであれ、命を必要以上に奪い、悲しむ姿は見たくない。彼女には正気にしてもらった恩もある。だから、僕は喜んで協力した。陽子くんは、いつとありがとう、ありがとう、と言ってくれるが僕としてはそんなに言わなくてもいいのに、と苦笑するしか無かった。
「風呂空いたぞー」
「はーい」
どうやら、考え事をしてる間に一輝はシャワーを浴び終えたらしい。さっさと浴びてこよう。今日は暑いから、お湯よりも水の方がいい。
宿題やんないと、とげっそりした顔で言う一輝をふっと笑い、頑張れ頑張れと思ってないことを煽るように言う。それだけで一輝ときたらすぐ怒るから、からかいがいがある。こんぐらいオレでもやれるわ!!と大声で言う彼に、前回出来なくて泣きついてきたのはどこ誰やら、と言うと、あからさまに凹むのだから面白い。からかうのも程々にして、シャワーを浴びてしまうことした。
「さて、一輝君。課題は終わったかな?」
「お前さては若干煽ってんな」
風呂から上がると、机の方からうぅ、とうめき声のような声が聞こえたからどうせなんかの問題で詰まってるんだろう思う。案の定、鉛筆が1ミリ足りとも動いていない。眉をギュッと寄せて睨んでくるも、その顔を何度も見てきた身としては1ミリも怖くない。1年が見たら怖いと思うかもしれないが。
「ふはっ、それはどうかな。ちなみにどこが分からないんだい?」
尋ねても全く返答がない。さては、と思って全部わかんない感じ?と尋ねると、しばらく沈黙した後、はい、と弱々しい声が返ってきた。全く、と声に出ていたらしくごめんと言ってくる。どうせ、授業中爆睡してたんだろう。こいつは卒業出来るのやら、そう思いつつも実技科だからある程度強くあれば対して頭は良くなくてもいいから卒業は出来るのか、とも思う。どっちにしろこの課題は一般の高校生が難なく解ける内容のため、いい加減できるようになって欲しい。
「あ、待って分かったかも!!」
初めの立式から間違っている気がするのは気のせいだろうか。なぜ初めから1+1なんてアホな式ができるんだ。それで答えは2だ!!とか言い出したらもう救えない。
「答えは2だ!!!」
「な訳ないだろ馬鹿野郎!!!!!!」
「うおっ」
もう終わりだこいつは。2だとか言った時点で思いっきりぶん殴ってしまった。でもこれはあれだ、不可抗力とかそういうやつだ。いってぇ何すんだ!!とかなんとか言っているがもういい加減にそんな意味わからん計算はすんなバカが移るだろ!!ともう1発お見舞しといた。比較的非力は僕に殴られたところで大して痛くないだろうに大袈裟にいってぇ!と叫ぶのはわざとらしくて腹が立つ。こんぐらいなんてことないでしょ、と悪態をつくとゲラゲラと笑いながらバレたかと言われる。それにつられて笑ってしまうぐらいにはきっと平和ボケしたんだろうなと思いながら、一輝と同じように声を出して笑ってしまった。
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