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付き合ってから一ヶ月。こたとの仲も深まってきて、こたの家で過ごすことも増えた。仕事とプライベートの区別はするが、こたの反応はあまり変わらない。お互いの気持ちを伝えたあの日から、以前と変わりなく関わるようになった。…しかしそれが、俺にとって問題だった。


「なんか、付き合ってる感ないなぁ…」


出かけたりご飯行ったりは前と変わりないし。…水族館とか、特別感ある場所に行くとかしたら違うのかな。でも男2人で水族館……。人気のデートスポットのサイトも片っ端から開いては閉じた。どこも男女で行くような場所ばかりで、男同士だと浮いてしまいそうで気が引けた。一人で唸っているよりは、こたに聞いたほうが早い気がして、聞いてみることにした。


「こた、ねぇねぇ」

「ん、なに〜」

「なんかさ、もっと恋人らしいことしない?」

「恋人らしいこと?……あ〜、キスとか?…したいの?」

「えっ?!い、いや、どっかデート行きたいな〜って……!」


聞き方がよくなかった。『キスとか』…?!…いやいやいや、男子中学生か。『キス』なんて予想してなかった単語が出てくるから、過剰に反応してしまった。…まあ、でも関係が進めばあるかもしれないし、その先だってあるかも…しれないし……。

こたは「ああそういう」と言って、いつもどおりの冷めたような対応に、俺はまた一つ不満が生まれる。こうなったら、こたを満足させるデートプランを組んでやる…!そう意気込んだ俺はまた、デートスポットのサイトに目を向けた。



**********



そしてデート当日。1週間かけてスマホに張り付いて、頭を捻った結果、映画館デートといういかにも無難な感じに落ち着いた。ここなら人目もあまり気にならないし、2人でゆっくりできるから。あとはショッピングでもして、夜はちょっと高いレストランで食事して。なんて色々組んでたら、当日の服を考えるのを忘れていた。『ちょっと遅れる』とこたに連絡を入れた。

待ち合わせ場所に着いて、人混みの中からこたの姿を見つけると、胸のうちに安心感が広がる。思わず顔がほころんでしまう。


「あっ、おまたせー、こた!」

「ん。…くにおはどこまでもくにおだな…」

「えっ、何、どゆこと?」

「なんでもない。行こっか」


こたは相変わらずの反応だけれど、差し出してくれた手を見て、「ちゃんと俺のこと好きなんだな」と再確認してその手を握った。熱い手の平から、かすかに伝わる緊張感。遊びに行くのとは違い、初めてしっかりしたデートをするものだから、お互い少し肩に力が入りすぎているかもしれない。

あーやばい。「俺の彼氏かっこいい」って言いふらしたい。見てよこの横顔とか、めちゃくちゃかっこいい。ニマニマしてたらこたに不思議がられそうなので、口をキュッと閉じておく。

見る映画はあらかじめピックアップして、こたと選んで見る形にした。ちょうどお互い見たいと思っていたものがやっていて、すんなりと決まって座ることができた。


「やば、めっちゃ楽しみ」

「ふふ、くにお、さっきからずっとそわそわしてんね」

「だって楽しみじゃん!」


正直、薄暗い映画館の中で手を繋いでイチャイチャするみたいな、ちょっとドキドキ?イベントがあったり…なんて期待していたけれど、何事もなく2時間、しっかり映画を楽しんだ。…というか俺もガッツリ見入っていた。

映画館を出て、終わってしまった喪失感と快い疲労感。繋ぎ直した手の熱さに、二人ともだいぶ興奮していたのだと思った。


「あー、すごい面白かったな。くにおと見れて良かった」

「…うん」

「次はどこ行くの?」

「あ、えっと…」


デートプランは順調に進んでいった。ウィンドウショッピングして、2人でふらふらと歩いていた。終始話も途切れることなく、活動のこととか、メンバーのこととか、気づいたらすたぽらのことばかり。寧ろほとんどみんなと時間を共有しているから、話す話題もそれ以外あまり見つからないのが本音。でも、話していて笑顔の絶えない話題だった。

プランの最後のレストランを出たときにはすっかり夜になっていた。1日こたと一緒に出かけられたことがすごく嬉しかった。ずっと繋いでいた手も、朝より緊張は解けていた。こたは最後まで変わらない様子だったけど。それでも、少しは絆が深まった気がして、お酒も入ってぽやぽやした頭で、嬉しさに俺の頬は緩んだままだ。


「どうする?帰る?」

「ん〜……こたの家行ってい?」

「お前俺の家好きだな…」

「えへへ。なんか落ち着くから」


やっぱりいつも来てしまうなぁと思いながら、こたの家に上がる。居心地のいいここに1度入ったら、こたの隣で肩に頭を預けてしまうからなかなか抜け出せないでいる。それを撫でてくれる手がまた心地いい。いつもこうして夜が更けていく。

しばらくそうしていると、こたが俺の肩を叩いた。


「そろそろお風呂沸かすから、ほら、離れて」

「……こた」

「ん?」

「…今日、楽しかった?」

「うん、楽しかったよ。色々考えてくれてありがとう」


頭をぐしゃぐしゃ撫でられて、こたはお風呂場に向かった。こたのぬくもりが残る俺の体だけが残されて、リビングは少し静かになった。

やっぱりどこか不満が残る。───俺が望んでるのは、そうじゃなくて。

もっと、…もっと、好きっていうのを表現してほしいっていうか、今日だって、『メンバーと遊びに行っただけ』みたいな。それで終わらせてほしくないのに。てか、何あのそっけないの。───俺だけが甘えてるみたいで嫌じゃん。

悔しくなって、目頭が熱くなる。


「……くにお?」

「ん……何」

「なんで泣いてんの…?」

「何でもない…」


気づかれたくない涙を見られて、咄嗟に膝を抱えて顔を伏せた。こたはまた俺の隣に座り直して、背中をさすってくれる。どうしよう、嫌な雰囲気になっちゃった…。言葉を出そうにも、頭が真っ白になってしまう。泣きたいわけじゃないのに、優しい手が、俺をどんどん弱くしてる。


「どうした?なんか不満だった?お酒入って涙脆くなってんの?」

「ちが……違う…」

「…?」

「好きかわかんない……」


背中をさする手が止まる。「え?……え…?」と、こたの困惑する声が聞こえる。やっぱり俺は言葉が足りなくて、でも焦って変なこと口走ったりして。今だって困らせて…。どんどん悪い方向に向かってしまう。涙が溢れて、膝を濡らす。

突然こたがぐいっと俺の顎を掴み、無理やり視線を合わせてきた。


「…俺のこと好きじゃないの?」

「う……違うぅ……」

「……じゃあ何?」

「───っ好きじゃないのはこたのほうじゃん…!」


掴まれていた手を振りほどいてこたを突き離した。こたは驚いた顔をして意味がわからないというふうに目を白黒させている。さっきとはかえって、抑えていた感情が言葉になってあふれた。涙がはらはらと俺の頬を濡らして、溢れて床に落ちる。


「前より興味ない感じになってて俺寂しいのっ……気づいてないじゃん!俺だけ甘えてさぁ…っ、バカみたいじゃん……」

「………」


あー、俺、めんどくさい彼氏だな。こんなことで癇癪起こして。スーパーカップルがちで解散かも…。でも、言いたいこと言えて少しスッキリした。涙もおさまった。チラリとこたの顔を見ると、怒りの色が顕に出ていた。俺はびっくりして、思わず顔を上げる。


「……誰が好きじゃないって?」

「う、わっ…?!」


俺の腕を引いてこたの膝の上に座らされ、腰を抱かれる。密着した体が、ドクンドクンと激しく脈打っている。頬に手を添えられ、優しくさすられる。混乱する間もなく、ぐいっと顔を引き寄せられた。


「っん……?!」


こたの唇が、俺の唇に触れた。一瞬にして俺の顔が熱を持つ。柔らかい。こたが腰を抱く手に力を込めた。


「んっ、ん…、む……っ」

「ん……、……」


くっついては離れて、またくっついて。角度を変えてキスを繰り返す。抵抗しようにも、こたの手が俺の頭を後ろからおさえて離さない。恥ずかしさもだんだんと薄まり、気持ちよさが上回る。リップ音が耳元に響き、気分を高揚させた。


「んむ……こたっ…」

「……うん?」

「もっ…、むり…!」


こたの口を手で塞いで、顔を背けた。

やばい。熱い。何、男同士だともっと抵抗あると思ってた。いきなりこんなことしてくるなんて思わなかったし、軽いキスだけで気持ちい……ってそんなことは今どうでもよくて!


「いきなり何すんのっ…」

「俺がお前のこと好きじゃないわけないだろ」

「だって、伝わってこないの!」

「っ、…それは……悪かったよ」


素直に謝られたらこっちも怒る気が失せてしまう。冷静になってきて、俺も全身の力が抜けてきた。そのままこたに寄りかかる。こたは俺の体を抱きしめて、よしよしと頭を撫でた。俺もそれを抱きしめ返した。全身にこたのほのかな暖かさがじんわりと伝わってきて、いつものこたの匂いに気持ちが和らいだ。


「好きだよ、くにお。…ちゃんと伝えてなくてごめん」

「……やだ。許さない」

「なんで…」

「まだ全然足りないし」

「てかお前もう元気だろ。降りろ。重い」

「自分で乗せてきて何?!あ〜、はいはい、もうくにくん怒ったから!こたよりくにリスの方が愛してくれるし愛してるし!」

「はぁ?!ちょっ……、っ帰んな!」


こたの腕を解き、カバンと上着を掴んで家を出る素振りをしてみせると、焦ったような表情のこたが俺の腕を捕まえて引き止める。もちろん帰るつもりなんてこれっぽっちもない。ただ、こたが必死な表情が可愛くて、それで俺の心は少し満たされた。


「……えへ。…帰んないよ」

「なんだよ……。びっくりさせないで…」

「も〜、そんなに俺と一緒にいたいんだ〜?しょ〜がないなぁ〜〜」

「うざっ……。そういうことにしてやるよ」


しばらくは何を言われても不安になったりしない気がする。こたが俺のことを好きだってわかってるから。

新たな悩みとして、俺の頬が緩みっぱなしなのが、1つ困ったことだ。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

初コメ失礼します🙌🏻 くにこたの初心なところがすごくもどかしくてで めっちゃ好きです。 繊細な2人の恋の続きをぜひ見たい です!主さんのペースで頑張ってください🙌🏻

ユーザー

めっちゃ面白いっす!!

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