クーガーが太宰治の「人間失格」を読み終えた時、警察の監査が入った。HOLY基地の本部の逆スパイ……桐生水守は医大を卒業した。もう一度彼に逢いたい、本土は私の居場所に過ぎなかった。
「……七年前」
最後の約束は叶わなかった。喫茶店のBGMには外人の歌謡曲が流れている。ブラックのコーヒーが唯一の癒やしのひととき。ノートパソコンに情報収集を打ち込むこと二時間、男に話しかけられた。
「相席、よろしくて?」
「ええ。どうぞ」
HOLYの制服……本土の支部拠点にも警察の手が?読書家の彼は指を鳴らした。
「この男でしょ?」
スマホの動画に映る一昨日の戦闘記録。アルター狩りの映像には澄まし顔をして返り血を浴びる一人の美青年が立ち尽くしていた。
「嘘……」
「随分変わりましたね。組織人になってますます二枚目に磨きが掛かった、最強説はもはや都市伝説」
水守は画像に釘付けになっていた。男はクーガーを名乗った。
「私は彼の同僚です。何でも聞いて下さい」
「この寒々とした新時代が劉鳳の心を変えていった」
「その通りです」
水守は言葉を失った、他意は無い。店内は長閑に流れて時を刻んでいる。
「今晩ドライブでも」
「え?」
「私の携帯番号です。宜しければLINEも」
「ナンパに興味はありません」
「では仕事がありますので。夜が楽しみですね」
「まあ!いやらしい!!」
ビンタの音が穏やかなカフェにこだまする。その直後、テレビに新しいニュース速報が流れた。マスターの店長が独り言を呟いている。
「ロストグラウンドの支援物資が犯罪者に襲われた……犯人は逃走中」
「獣」
?
水守は眼鏡を掛け直し領収書を切る。クーガーの目の前に一陣の風が巻き起こる。店長が無精髭を掻いてレジの精算を済ます。
「女遊びも程々に」
「マスター!優しい言葉をかけてくれ!」
哀愁漂う寂しさが彼を気遣っていた……
「カズマ!やれ」
アルター戦勃発!シェルブリットが炸裂する。黒煙の炎が大地をガソリンまみれにしては天変地異を超動する!!
「抹殺のラスト・ブリット」
「俺達の負けだ!!コンテナならくれてやる!」
現場は騒然としていた、魔獣の咆哮。HOLYの寝蔵は近い、鉄拳に掲げた夢想の果ての輪舞曲……クーガーが夜空を見上げてスマホでシャッターを切る。
「もしもし?デートの夜会は……」
路上駐車に死神が鎌を振るう!!シェルブリットの攻撃のみで場が荒れる正念場は虎視眈々としていた。
「クーガーさん!アナタって人は……」
水守が高級マンションの一室から夜景を見ながら缶チューハイを飲み干した。男なんて劉鳳だけでイイ。戦場のラブ・ロマンスならお楽しみの後……遠くで花火が打ち上がる。
「今日も大安♡ネ?」
ペットの仔犬を膝の上に乗せて優しいキスをした。
「バトル・ファイトナメんじゃねェぞ!!」
劉張の姿が無い……逃げたか?神奈川県は逆スパイの手によって崩壊の序曲を奏でてゆく。その名は無常矜侍。戦乱大活劇が怒涛の展開を呼ぶ!!
「Re−surrect」
アルター能力の限界突破は向こう側の世界のゲートの開閉を示唆する証……無常が笑う。
「ナンバーワンこそオンリーワン」
カズマと劉鳳。天と地。忠犬と狂犬。欲望が加速する……
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