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なんか想像するだけでおそろしいな.... 前は涼ちゃん1人だったからどうにかなったかもしれないけど 村の人全員となるとめちゃめちゃ大変そう これから3人はどうするんだろう
ボス的なヤツ来たコレ!今すっごいワクワクしてます!シェイド…!アンタだけは許さねぇ…!今に見てろ…!(失礼、ワクワクしすぎて自我が出しゃばりました。) 今回は『人って、簡単に操られてしまうんだな…。』と思わせられるお話でした。でも、きっと、3人ならなんとか出来るはずです!私、信じてます!何なら私も加勢します!(おい) いつも更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!(いつもよりも長文になってしまいました…失礼しました💦)
街の中央にそびえ立つ大聖堂は、かつて希望と祈りの象徴だった。
高い尖塔は青空を突き抜け、鐘の音は人々に安らぎをもたらした。
けれど今――その鐘楼には瘴気がまとわりつき、ステンドグラスは紫黒の光を放ち、不気味に脈打っているようにさえ見えた。
その異様な光景を、3人は高みの回廊から覗き込んでいた。
足を踏み出すたび、床石がきしむ音すら恐ろしく感じる。
息を殺し、闇に紛れて下を覗いた瞬間、藤澤の胸が強く締めつけられた。
玉座に座るのは――自分と同じ顔。
けれど髪は漆黒に沈み、瞳は闇の炎に濡れ輝く。
人々の声は一様に乱れ、祈りのように繰り返される言葉はただ一つ―― 「シェイド様」。
「我が名はシェイド。与える悦びを受け入れよ。」
偽りの薬師、シェイド。
藤澤の胸に重苦しい確信が落ちた。
自分の“影”が人々を掌握している。
その光景に、若井は奥歯を噛み締める。
「……クソッ……なんだよ、これ……」
拳を握るあまり、手の甲に血がにじむ。
シェイドの手が宙にかざされると、従者たちが薬壺を抱えて現れた。
中には琥珀色の液体が揺れている。
それは禁忌の薬――かつて藤澤が恐れた媚薬の類であった。
人々は進んでその薬を口に含み、次の瞬間には恍惚の吐息を漏らして跪いた。
頬は赤く染まり、眼差しは焦点を失いながらもシェイドを見つめ続ける。
人々はその玉座に群がり、次々と懇願を繰り返す。
「シェイド様……もっと……もっと気持ちよくしてください……!」
「次は私の番よ! お願い、抱いて……!」
「いや俺だ……俺を……俺を相手にしてくれ……!」
年齢も性別も関係なく、誰もが同じ欲望を口にしていた。
薬に蝕まれた目は焦点を失い、それでもシェイドを渇望する光だけが宿っている。
彼らはもう、病人ではなかった。
ただの快楽を求める獣だった。
シェイドはゆるやかに立ち上がり、群衆の中から一人の若い男を選び出した。
髪を無造作に掴み上げ、舌先でその唇をなぞる。
群衆が一斉に息を呑む。
「……今日は、お前が相手だ。」
低く囁く声に、男は涙を流して歓喜し、恍惚と震えた。
次の瞬間、聖堂に淫靡な音が響き渡る。
シェイドはその男を抱き寄せ、乱暴に口を塞ぎ、玉座の階段に押し倒した。
「あ、ああっ……シェイド様……!」
「どうだ……もっと奥に欲しいか……?」
聖堂の高い天井に快楽の声が反響し、聖歌が響くはずだった空間が、背徳の呻きで満ちていく。
「う……っ」
大森が思わず目を背ける。
だが耳に入る声までは、どうしても遮れなかった。
嬌声。
吐息。
陶酔した笑い。
まるで地獄の宴が繰り広げられているかのようだった。
「……禁忌の薬の……せいだ」
藤澤がかすれ声で呟く。
「飲んだ人は、一時的に病が癒え、快感と多幸感に溺れる。でも……これは……治っているんじゃない。身体が壊れていく幻覚なんだ……」
大森は拳を握りしめた。
「……じゃあ……この人たちは……」
「いずれ……壊れる。心も、体も。」
群衆はそれを恍惚とした表情で見つめ、誰もが順番を待ち焦がれていた。
「ぁ……はぁ……っ、まだ足りぬ。もっとだ、私を満たせ。」
やがてシェイドが荒々しく突き上げると、男は絶叫し、シェイドの体から溢れ出したものを、周囲の女や子供すら舐め取ろうと群がった。
「美味しい……シェイド様……」
「もっと……もっと私に……!」
「俺にも……俺にも与えてくれ……!」
滴る雫を奪い合うように舌を伸ばし、狂気に溺れた笑みを浮かべる群衆。
その姿は、信仰の民ではなく、ただ欲望に支配された信徒だった。
藤澤は、吐き気を堪えながら必死に目を逸らそうとする。
だが逸らせない。
見ているのは自分自身の姿だからだ。
「……あれが……俺の……」
かすれた声が震える。
大森が隣で拳を握る。
「……涼ちゃん……違う。お前じゃない……!あんなの……」
声が震え、涙が混じった。
若井は怒りに燃える目でシェイドを睨みつけた。
「……必ず、引きずり下ろす……」
だが、今はまだ手を出せない。
瘴気の波が聖堂全体を覆い、群衆はシェイドの盾となっていた。
動けばすぐに自分たちも飲み込まれるだろう。
そこらに転がる薬壺からは、琥珀色の液体がこぼれ落ち、床に染み込んでいく。
その香気は甘く、嗅ぐだけで意識が蕩けるようだった。
「……まるで儀式みたいだ。」
大森が震える声で呟く。
「違う。これは……堕落だ。」
若井が唸る。
藤澤は唇を噛み切りそうなほどに噛みしめた。
「……僕の影が、人々を……狂わせてる。」
聖堂の下ではなおも、狂気の宴が続いていた。
人々の懇願、淫靡な呻き、滴る音、舐め取る舌の音。
それらすべてが一つに溶け合い、神の名が呼ばれるべき聖堂は、シェイドの名を繰り返すだけの淫靡な祭壇に変わっていた。
「見よ、これこそが真実だ。光は人を縛り、闇は人を解き放つ。お前たちの“守護神”など不要……私こそが神だ。」
その宣言に、人々は歓喜の声をあげ、次々にシェイドへと身を捧げる。
媚薬に濡れた吐息が重なり合い、街全体が背徳の熱に包まれていた。
「シェイド様ぁぁ……!」
「あなたが……神だ……!」
狂気じみた叫びが夜を満たし、街は完全に堕ちていた。
――守護神であるはずの3人は、その惨状をただ見下ろすことしかできなかった。