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応募用紙に書かれていた住所は、ホテルから工藤の運転する車で十五分くらいのところにある閑静な住宅街だった。
日下部暖人の家の前に、結と工藤は並んで立った。こぢんまりとした平屋で、庭もあり芝生も綺麗に整えられていた。庭に植えられた背の高い木は紅葉をし始めていた。屋根や外壁も決して新しいものではなさそうだが、この家を大事にして暮らしている。そんな印象を結は受けた。
「綺麗なお宅ね」
結が言い、頷いた工藤が「日下部」の表札の横にある黒いインターフォンを鳴らした。反応はない。窓にかかるカーテンは、どれも閉められている。
「お留守のようですね」
言いながら、工藤はもう一度インターフォンを鳴らしたが、やはり反応はなかった。
どうしたものかと結と工藤は顏を見合わせたときだった。
「あの、日下部さんのお宅に何かご用ですか?」
声がした方を振り向くと、年配の女性がやや不審な眼差しを結たちに向けている。
「私、向かいに住んでいる者ですけど、この時間はいつもお留守ですよ」
「わたくし、こういう者です」
結は肩にかけていたシルバーのバッグから、名刺を取り出して彼女に手渡した。手渡しながら、今日ここへ来た経緯を手短に話した。すると不信感に満ちていた彼女の顔が明るくなった。
「はる君の絵が認められたのね。それはよかったわ。小さい頃からはる君のことはよく知っているのよ。とっても頑張り屋さんで素直でいい子なのよ。はる君の絵を見れば、それもわかるでしょう」
自身の息子に起きた出来事のように喜び、自身の息子を自慢するように彼女は話した。
「はる君のことを知りたいなら、この先にある「宵の灯屋(ともしびや)」に行ってみるといいわよ。以前はね、店の名前のとおり夜にしかやらないへんな喫茶店だったの。けど最近は昼もやっていてはる君もお父さんとよく行くそうよ。お店の店員かしら。翠(あきら)さんっていう人とお友達なんだって、この前嬉しそう話してくれたのよ」
丁寧にお礼を言って彼女と別れて、住宅街から坂を下り教えられた喫茶店へ向かった。
コメント
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第5話読みました!結さんと工藤さんが日下部さんの家を訪ねるシーン、近所の女性の「はる君」呼びがすごく温かくて、この町の空気感が伝わってきました。「宵の灯屋」の名前や、元は夜だけ営業してたっていう設定も気になりますね。結さんが名刺を出すところも、プロらしい落ち着きがあってかっこよかったです。この後どんな展開になるのか、楽しみです!