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第3話 断罪イベント、開催されたはずでした
王立学園・中央ホール。
生徒たちが集められ、空気は異様に張りつめていた。
(来ましたわ……)
リリアーナは、内心で深くため息をつく。
乙女ゲーム名物――
断罪イベント。
本来ならここで、
彼女はヒロインをいじめた罪を問われ、
婚約破棄、社交界追放、からの破滅ルート。
(耐えますのよ、私……)
「――公爵令嬢リリアーナ・フォン・ヴァルディス」
王太子アレクシスの声が響く。
「君には、ヒロイン・エマに対する
数々の嫌がらせの疑いが――」
(あ、始まりましたわ)
だが。
「異議あり」
静かな声が、ホールを切り裂いた。
宰相補佐ルークが一歩前に出る。
「調査しましたが、
リリアーナ様が誰かを貶めた記録は一切ありません」
「むしろ――」
騎士カインが続く。
「エマが孤立しないよう、
裏で配慮していた痕跡が複数あります」
(え)
どよめき。
エマ本人が、震える声で前に出た。
「わ、私……
リリアーナ様に、いじめられたこと、ありません!」
(ヒロイン側から否定!?)
「それどころか……
たくさん助けていただきました」
場の空気が、一気に反転する。
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アレクシスは、ゆっくりと息を吐いた。
「……以上により」
彼ははっきり告げる。
「断罪は成立しない」
(……助かりました?)
リリアーナは混乱していた。
だが、追い打ち。
「むしろ問題なのは」
アレクシスの視線が、生徒たちを一掃する。
「根拠のない噂を流した者たちだ」
(ざまぁ、未遂……?)
生徒の何人かが、青ざめた。
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解散後。
廊下で、リリアーナは呼び止められる。
「……どうして、誰にも言わなかった?」
アレクシスの問い。
「言えば、すぐ止められた」
「……自分で解決できると思っていましたの」
それは本心だった。
「強いな、君は」
(違いますわ、必死なだけですの)
そこへ。
「リリアーナ様!」
エマが駆け寄る。
「今日は……
本当に、ありがとうございました」
「いえ。
あなたが無事で何よりですわ」
二人の距離が、近い。
近すぎる。
それを見た三人の視線が、鋭くなる。
(あ)
リリアーナは悟った。
(断罪は回避しましたが……
修羅場フラグが立ちましたわ)
悪役令嬢のはずが、
なぜか全員に守られ、
好感度だけが天井知らずに上がっていく。
次に待つのは――
平和ではない学園生活だった。
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