「美咲ちゃん、大丈ぶ…」
「大丈夫?」そう言おうとした時、美咲ちゃんは私をぎゅっと抱き締めた。
美咲ちゃん…
私はそっと美咲ちゃんを抱き締め返す。
「私さ、昔っから変に気が強くてさ、最初はみんなと仲良くできてたんだけど、後からどんどん人が離れていっちゃうの。」
今にも消えちゃいそうな声でそう言った美咲ちゃん。
「うん」
「だから、私を守ってくれる人は誰もいなかった。」
「うん。」
「葉月は、なんで私にそんな優しくしてくれるの?」
苦しそうな表情でそう私に問いかけた美咲ちゃん。
きっと、美咲ちゃんはたくさん友達関係で苦しんできたんだろうな。
「あのね。美咲ちゃん。私、美咲ちゃんに何回助けてもらったと思う?」
美咲ちゃんの手をそっと握る。
「私ね、何回も美咲ちゃんに助けられたよ?例えば、入学初日。みんなからは『女優』として見られてた。でも、美咲ちゃんは私を『普通の人』としてみてくれた。」
『やっほー!隣の席の美咲って言います!よろしくー!』
あの時、初めてだった。
私にはなんとなくわかるんだ。
皆が私に対してどう思ってるのか。
きっと、美咲ちゃんは私のことを知らなかったのかもだけど。
「私にとって、美咲ちゃんは1番最初の”普通の友達”なんだよ。そして、私はその”普通の友達”に何回も救われた。」
ありのままの白雪葉月を見てくれる、唯一の友達。
「あとは、何度も私に対しての悪口から守ってくれた。」
『本当に白雪葉月ってビッチだよね。』
『え、それな、男に色気撒いて釣ってるんだよ。性格終わってる。』
私、そんなふうに見られてるんだ…なんだか傷ついちゃうなぁ、
『ちょっと!葉月がそんなことするわけないでしょ!』
『あ?』
『葉月はねぇ、本っ当に純粋っ子で人に媚び売るような子じゃないの!あと、人の悪口でしか盛り上がれないあなた達のほうがよっぽど性格終わってるけどね』
『ッチ、なんなのマジで…』
自分がどう思われようと、友達を守ろうとしてくれた。
「美咲ちゃんが優しくされるのは、美咲ちゃんが優しくしてるからだよ。」
なんなら、私からの優しさは全然足りないよ。
「葉月…」
「他の人が美咲ちゃんを大切にしなくたって、私が大切にするし、大切にしたい。」
私がそう言うと、美咲ちゃんはまた私をぎゅっと抱き締め、声を殺しながら涙を流した。
そして私はそんな美咲ちゃんを見て自然と涙が溢れてきた。
「白雪葉月、全然噂と違うじゃん?」
琴世くんが、そんなことを呟いていたのも、私たちを見ていたことも、その時の私は全く知らなかった。