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「桜、散ってしまって寂しいね」
「ああ。お前、桜、好きだったからな」
何気なく話しているけれど、この状況に本当はすごく動揺している。
涼香姉さんと色々あって気持ちも落ち込んでいたし、龍聖君から電話で誘いを受けた時は、つい嬉しくて「はい」と返事をしてしまった。
こんな風に会って良かったのか、正直今もわからない。
『グレースホテル 東京』
初めて来たけれど、とても高級感溢れる立派なホテルだ。
静かにジャズが流れ、大人のムード漂う雰囲気が何ともオシャレで素敵だ。
バーカウンターに並んで座っていることが信じられないけれど、紛れもなく私の隣にいるのは「鳳条 龍聖」君。
そう、今日は私と龍聖君、2人だけの集まり。
みんなは……いない。
「龍聖君、急に私を誘ったりしてどうしたの? 何かあったの?」
きっと何かの相談なのだろう。
誰にも聞かれたくなくて、ここに呼び出したのだろうか。
もしかして、どうやって女性に告白したらいいかとか……女性の立場としての気持ちを知りたいとか?
そういう類いの質問なら、私より……碧の方が適任だと思う。
「この前会った時、お姉さんがいて琴音にちゃんと挨拶できなかったから」
龍聖君が少し苦笑いをした気がした。
相変わらず無敵なスーツ姿、このバーの雰囲気にピッタリと合っている。龍聖君がいたら、周りにいるどんな男性もかすんでしまう。
仕事終わりで駆けつけてくれたらしく、少しネクタイを緩めているところがまたセクシーで……
でも、きっと疲れているのだろう。顔には出さないけれど、無理しているのかも知れない。
そこまでして私に相談したいことって、いったい何なんだろう?
「この前、百貨店で会った時のことだよね。ごめんね、こっちこそ色々姉さんが失礼なこと聞いたりして」
「別に気にしてない。俺は何を言われても平気だから。慣れてるんだ、そういうの」