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次の日の昼休み
教室はいつも通り騒がしくて、
若井は僕の隣でパンの袋を開けながら友達と笑っていた
「今日の英語さ、絶対当てられると思ったんだけど」
僕が隣にいるのに
今日は、僕じゃなくて友達に向けた笑顔
そのとき
「ねぇ滉斗ー、ちょっといい?」
クラスの女子が、軽い調子で声をかける
w「なに?」
「選択科目の、ここ分かんなくてさ」
そう言って、若井の腕を軽く引いた
距離が近い
若井は何も気にせず、「どれどれ」と笑って立ち上がる
……ただの会話
ただの友達
わかってる
なのに、胸の奥がざわつく
視線を逸らしたいのに、逸らせない
楽しそうに並ぶ二人の背中が、やけに遠い
……やだな。
こんなことで、揺れるなんて
しばらくして、若井が戻ってくる
w「元貴聞いてよ。あいつさー」
いつもの調子
僕に向けた声
なのに
o「何話してたの」
思ったより低い声が出た
w「え、選択科目のやつだけど」
きょとんとした顔
そのまま僕の前を通り過ぎて、席に戻ろうとする
戻ってくると思っていた
僕の隣に、当然みたいに座ると思っていた
なのに、そのまま通り過ぎそうで
気づいたら、袖を掴んでいた
ほんの少し、布を引き止める
若井が足を止めて振り返る
目が合う
心臓が、痛いくらい跳ねた
僕を見てほしい
僕を選んでほしい
できれば、
僕を、必要としてほしい
そんな感情が、指先から溢れたみたいだった
……なにしてるんだ、僕
慌てて手を離す
o「……ごめん」
w「え、なにが?」
困ったように笑う
でも、その目が一瞬だけ揺れた
ほんの少しだけ、息を止めたみたいに
その揺れが、胸に刺さる
今の、気のせいじゃない
そう思いかけて、怖くなる
w「……元貴、怒ってる?」
冗談みたいな声
でも、確かめるような視線
o「怒ってない」
即答してしまう
嘘だと、自分でもわかる
若井は、しばらく僕を見ていた
何か言いかけて、結局、視線を落とす
w「……なら、いいけど」
小さく笑って、今度こそ隣に座る
距離はいつも通り
でも、さっきの一瞬が、まだ消えない
若井は前を向いたまま、ぽつりと言う
w「変なの」
からかうみたいな声
けれど、どこか落ち着かない響き
横顔が、少しだけ赤い
その理由を考えそうになって、やめる
期待したら、終わる気がした
それでも
さっき、足を止めたこと
僕の手に、ちゃんと反応したこと
あれは、僕だった
他の誰かじゃなくて
それだけで、胸が熱くなる
嬉しい
でも
こんなふうに、誰かを縛るみたいに
確かめたくなる自分が、どうしようもなく幼くて
それでも
若井が、ほんの少しでも
僕を必要としてくれていたらいいのにと、
また、願ってしまう