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そうして戦は、駿河・相模・越後の三方向から圧を受ける形となり、武田は次第に苦境へ追い込まれていった 。
武田信玄は、戦況図を睨みつけたまま唸る。
「ぐぬぬ……このままでは、勝ちは遠いな」
静かだった室内に、重い空気が流れる。
やがて、ふっと目を細めた。
「よし」
一言。
「決めた」
家臣に向き直る。
「透破に命じよ」
低く、しかし迷いのない声。
「氏政の子を……さらってまいれ」
一拍置き、さらに続ける。
「もはや、手は選んでおれぬ」
夜の帳が落ちた頃。
透破は屋敷を見定めていた。
「……よし、皆寝たな」
小さく呟く。
「よし、こいつに違いない。連れて行け」
影が動いた、その瞬間——
「待て」
低い声。
闇の中から、ひとりの影が立ちはだかる。
風魔小太郎であった。
刃が交わる寸前、わずかな隙。
小太郎は紙一重でその手を逸らす。
その一瞬の判断で、相手の忍びは闇の中へと消えた。
「……まさか」
小太郎の声が漏れる。
その直後——
「ぎゃああああ!」
女中の悲鳴が屋敷に響き渡る。
混乱が一気に広がる。
その頃。
「何事だ……!」
氏政が駆け込む。
「……なっ」
目を見開く。
「我が子はどこへ行ったのだ……!」
声が震え、血の気が引く。
その報は、岡崎にもすぐに届いた。
松平元信(のちの徳川家康)は、静かに目を細める。
「ほう……」
小さく息を吐く。
「娘の子供まで人質に取るとは……」
口元に、かすかな嘲りが浮かぶ。
「かつて威を誇った信玄も、ずいぶんと落ちたものよな」
しばし考え込むように間を置き——
やがて、ゆっくりと口を開く。
「よし 義の戦とやらに、我らも参るとしよう」
目が細くなる。
「ついでに、どさくさに紛れて領地も取れれば……言うことなし、というわけだな☺️」