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学者には、学士や賢者などの称号とは別に違う呼び名がある。それは落ちこぼれ、劣等生、優等生、秀才、天才などである。
これらはその者を指す1つの特徴であり、
肩書きともなる。そして、このようなレッテルがあればこんな会話も聞こえてくる。
「まじで、天才って羨ましいよな。
俺、天才に生まれたかったわ~。
ぶっちゃけさ、今の教授とか賢者様達って俺らと頭の造りが絶対違うよな。特に今だったら、
水代教授とかさ。」
「ほんとだよな。論文なんてちゃちゃっと書き上げてさ、金だって稼いでるんだろ??
世の中不平等過ぎだろ。」
「それしか言えないよな。
なぁ、おい。あれって知論派のアルハイゼン書記官じゃね?」
「ホントだ。好感度アップのためにも挨拶しとこうぜ。」
…またか、くだらない。彼女の事も無責任に言っているのか。
「アルハイゼン書記官、こんにちは。
この間の論文、拝見させていただきました。流石、書記官まで登り詰めた才能の持ち主ですね。」
「俺も読ませて頂きました。本当に素晴らしいものでした。」
「その言葉は称賛として受け取ろう。しかし、先程のような会話は慎んだ方がいい。天才と呼ばれる者の中には『本当の天才』とひけをとらない『実力』を身につけた者もいる。その者の中には並々ならぬ努力をただの『天才』『秀才』で片付けられるのを嫌う者もいる。そして、そのようなくだらない会話をするぐらいならさっさと研究に戻ったらどうだ?」
「…。」
「あぁ、それと。彼女のことを無責任に語るな。彼女は貴様達以上に、いや、比べるのも惜しいぐらいの学びを、研究を続けてきたんだ。
貴様たちのレベルでものを語るな。」
はぁ。久しぶりの休みがとれて、恋人新の元に行こうとしていただなのだが、無駄な時間を過ごしたな。急ごう。
「僕はこちらのほうが正しいと思います。
こちらであれば、仮定から根拠を踏まえた結論に納得できます。ですが、所々言い回しが違ったりしているので、直した方がいいです。」
「ありがとうございます!水代教授!」
「貴方の論文は読んでいて飽きませんね。
これからも貴方の思うままを正しく形にするといいと思います。」
「は、はい!あの、水代教授。1つ伺ってもいいですか?」
「えぇ、構いません。」
「教授の過去の論文をいくつか読んだんですが
幼い頃から今のように天才だったのですか?
だって最初の論文って10歳でしたよね?」
「確かそのぐらいだったと思いますが、天才ではなかったですよ。昔は出来損ないだの、落ちこぼれだの穀潰しだの色々言われましたから。」
「えぇ、教授が!?
って、やらかした!すみません、次の講義が○○教授で、遅れたら大変なんで失礼します!!」
「えぇ、転ばないように。」
学生にここまで礼儀正しく接する教授はそうそういないだろうな。
「新、今は平気か?」
「ん?…アルハイゼン先輩でしたか。
どうしましたか?もしかして、何か用事でも?」
「君に会いたくて来たんだが、
用事がないとダメか?…いや、用事ならあった。
デートをしないかと思ってな。どうだ?」
「も、もちろんです。あ、でも、す、少し待っててください。い、今準備してきます…。」
あぁ、耳まで林檎のように真っ赤になっている…
実に可愛らしい。
そんな彼女-新-との出会いは互いに学生の時だった。
「今年入学しました。稲妻出身の水代新と言います。今後お話しする機会があれば
よろしくお願いします。」
…稲妻人らしい挨拶だな。
「俺はアルハイゼンという。
こちらこそ、よろしく頼む。」
___ペコリ___
生気を感じないような子供だな…。
あれで教令院でやっていけるのか…?
サティアワダライフやパリプーナライフを越えられるとは到底思えないな。
そう思っていたのが1年程前…
この論文の制作者の名前…確か…あの子供の名前か?あんなに幼くても書いてある内容が
大人顔負けだな…一体どういう風に研究したのか聞かねばな。
「それで、僕の元にいらっしゃったということですか。そんなの呼んでくだされば僕から伺ったのに。」
「俺が君に用があるのに君を呼び出すなんて可笑しいだろう。では、是非教えてくれないか?どうしてあれを調べられたのか。」
「簡単な話です。ありとあらゆる本で調べたからです。あとは…神の目を持っているんですから、自ら赴いて素材を探し、体験し、という風にやったんです。自身が体験して得られる知識は何とではなくとも代えがたいものだと思いますし。」
確かにそうだな。自身で経験してこそ、分かることがある。
その後、新との交流も増え…そんなある日。
「丁度今研究しているものがあるんです。以前、僕の研究過程が気になるとおっしゃってましたよね。おしゃべりは出来ませんが、様子だけでも見にいらっしゃいますか?」
「君が迷惑でないなら、いいか?」
「迷惑なら言いません。」
大量の本だな…しかし、関係がありそうなものも勿論あるが、これは関係あるのか?
そして、足の踏み場が少ない…。片付けが出来ないのか?
「片付けたりしないのか?」
「自分の空間なのでいいんです。
借りた本は全てメモしてあるのでしっかり返せるから大丈夫です。」
「まぁ、とやかく言うつもりはない。だが、2点聞きたいことがある。」
「何ですか。」
「まず、アーカーシャというものがあるのに何故使わない。そして、今、君が調べているものに対して明らかに関係ない本もあるがそれは何故だ?」
そうだ、スメールにいるなら、
ましてや教令院に所属しているならアーカーシャを何故着けない?来たばかりだから、聞けることも少ないもしれない。
しかし、これだけの量の本を運ぶよりはましなのではないか?
「……。僕はまだ、駆け出しですから、何を偉そうなことを言っているんだ。とか言わないなら教えます。」
「こちらから聞いているからそこは守ろう。」
「1つ目の質問に対しての回答はこうです。『嫌いだから』です。あれはいずれ人を人でなくすと思います。あれはある意味自身を全知全能にするでしょう。それは少なからず、僕の思う『人』ではないです。では、僕の考える『人』とは何か。それは全知全能では無いことです。学ぶことに意味がないのなら、世界は学びを放棄しているはずです。争いなど起きない。また、『学び』が失くなればこの世はなにも発展しないと思うからです。これが僕の回答ですが、1つ目の質問に対する答えになりましたか?」
「あぁ。君はそんなことまで考えているのか。
では、2つ目の質問に対しては?」
「それは話せるようになってから話します。僕という人格がどのような答えを見つけるかは未来の生きている僕にしかわからないですから。」
一体どういう意味なのだろうか。
というか、本当にこの子は子供という年齢なのか?
「君が出している限りの論文を読ませてもらった結果から聞くが才能とも天才とも言えるな思考は生まれつきか?」
「う~ん。先輩、1つ言っておきます。僕がそんな風に見えるなら、おおいに間違いです。それと、その発言は僕の前ではやめてください。僕の短くとも這ってきた人生をただの『天才』で片付けないでください。いくら先輩でも不愉快です。」
そこまではっきりと言うぐらいには嫌だったのか。
「君が気にしていることとは知らなかったとはいえ、すまなかった。では、言い換える。天才と渡り合えるほどの力をつけた努力は凄いな。」
「っ…」
…ん?何故泣いて…
「先輩ってやっぱり、僕が欲しい言葉をいつも言ってくれますね。」
「すみません、先輩。準備おわりまし…た?
何でそんなに懐かしそうに僕を見るんです?」
「いや、ふと昔を思い出したんだ。
互いに学生の頃のな。」
「何を思い出したんですか?」
「君に天才だ。と言ったときの事だ。」
「確かに言われましたけど、なにかその時にありましたっけ、それ以外で。」
今の君なら、恋人になってくれた今の君なら答えてくれるだろうか。
「『そして、今、君が調べているものに対して明らかに関係ない本もあるがそれは何故だ?』」
「あー、そんなことも聞かれましたね。えぇ、答えますよ。『それは今より沢山の感情を知って、胸のうちにあった変なモヤモヤが消えて、それを理解した僕と貴方とで沢山のお話をしてみたかったから。』ですよ。」
本当に変わったな…。俺が言えた事ではないかもしれないが、あのときは笑えないのかというぐらい無愛想だったのに…
「新。」
「はい?」
「今日は君とデートをしたくて来たが、
予定変更だ。家デートにするか。」
「それは…僕の身の危険を感じるので…いゃ「拒否権はない。」
「…。先輩のそういうところはあんまり好きではないです…。」
「それは残念だな。俺は君の全てが愛おしいのに。例えば、俺が君が好きだという主旨の話をしたら未だに顔が真っ赤になるところや、一緒に食事をしているときに片方の頬に詰め込んで食べている姿、
他には…「そろそろ口を閉じろ!!」
「そんなところも可愛いな。素が出てるぞ。」
「あーもー!だまれ!!」
こんなにも可愛らしい恋人が目の前にいるんだ。
男だったらそんなことを言われたら沢山『お話』しないとな?