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リビングの扉のドアノブに手を伸ばしたところでグラスを持ってきていないことに気づき
頭を掻き、グラスを取りに部屋へ戻る。階段を上り、廊下を進み、部屋のドアを開き
ローテーブルに置かれたグラスを手にまた同じ動線を辿る。
今度こそリビングの扉のドアノブを下ろし、リビングに入る。
「あ、おはよう」
「おはよー」
父と母に朝の挨拶をかけられる。
「おはよー」
挨拶を返し、シンクでグラスを濯ぎ、冷蔵庫を開いて牛乳を注ぎ、席につく。
「いただきます」
各々が各々の言い方で同じタイミングでいただきますを言う。きれいに汚くバラけていた。
朝ごはんは決まってトースト。
カリカリの狐色に焼いてくれたトーストにハムを乗せてかぶりつく。
カリバリという音は少し刺々しく感じるがなぜか心地良く「朝」を感じる。
めざめのテレビを見ながら昨夜の妃馬さんの「森本デルフィンさん」の話を思い出す。
いろいろ思うところがあり、トーストを片手にボーっとしてしまう。
「お兄ちゃんまだ寝てんの?」
妹の一言で我に帰る。
「あぁ、うん。まだ起き切ってないのかも」
「まぁ昨日はねぇ?しょーがないんじゃない?」
母がなにか含みのある言い方をする。
「別に昨日はただ遊んだだけでなんもないよ」
「えー?別になにも言ってませんけど?」
「「ねぇ」」
母と妹が顔を見合わせて楽しそうにする。
「怜夢もいつか結婚するんだろうな」
父が思いを馳せる。
「父さんもなに言ってんの?つかまだ早いでしょ」
「でも父さんの同級生で18で結婚したやついたよ?」
「え…父さん意外と不良の友達いたの?」
「え、パパ…意外…」
僕と妹が驚いていると
「うーん。不良…不良だったのかな?」
父が考える。
「授業とかサボってた?」
何気なく僕が聞くと
「あぁうん。サボってたよ」
あっさり返ってきた。
「うん。父さんも不良だったのね」
「まぁ優良生徒ではなかったね」
父の意外な一面を知り、朝ごはんが終わった。妹が2階に上がって行く。
父はご飯が終わり、コーヒーを飲み、テレビを見ながらゆっくりしている。
母は朝ごはんで使った食器を洗っている。僕はソファーに行きゴロンと寝転がる。
スマホをいじろうとしたが充電してて持ってきていないことに気づき、さらにダラッっとする。
しばらくすると廊下のほうから
ダッダッダッダッダッっと足音が聞こえ、ソファーの背もたれ越しに覗く。
妹が制服に着替えスクールバッグを持った妹がリビングの扉の部分に立っていた。
「えぇ〜と」
とリビングを1箇所1箇所指指していく妹。
「よし!じゃ、いってきます」
きっと忘れ物チェックだろう。
「ん。じゃお父さんも出るかな」
父がダイニングテーブルのイスから立ち上がる。鞄を持ち玄関へ向かう。
「あら今日は早いのね」
母はキッチンから出て、父の後をついて行く。
「うん。昨日終わらなかった仕事をしないと。残業しなかった分はやく行くんだよ」
「ふーん。まぁ無理はしないでね」
「ん。わかってるって」
僕も「よいしょ」と掛け声をかけ、ソファーから抜け出し、玄関へ向かう。
妹がローファーを履き終え、玄関の扉を開けるところだった。
妹が扉を開く。いい天気の春の柔らかな日差しが外の景色を照らす。
良い気持ちになるのと同時になぜかうんざりする気持ちも混雑した。
父が革靴を履き終え、妹が開けてくれている扉から外に出る。
「じゃ、いってくる」
「いってきまーす」
父と妹が外からこちらに言う。
「はーい。いってらっしゃーい!2人とも気をつけてねー!」
「いってらっしゃーい」
扉がゆっくりと閉まる。
「怜夢、今日大学は?」
母が振り返り僕に聞く。
「あぁ、今日はない」
そう答えると
「ちゃんと行ってんでしょうね」
と疑われる。
「あぁ…」
と曖昧な返事をし階段の上がろうとすると
「あ、お昼は?なにがいい?」
と聞かれる。2段上がって立ち止まり、振り返ることなく
「あぁ〜…オムライスがいい」
「オムライスね。わかった」
そう会話を交わし、階段の続きを上る。階段を上り切り
右側の窓のカーテンの下の部分から微かに差し込む日の光で廊下が照らされる。
父母の部屋の扉と妹の部屋の扉の間辺りにある窓側の扉を開ける。
そこはベランダになっている。優しくも少し鋭い日差しがコンクリートのベランダを照らす。
サンダルを履きベランダに出る。長い間使っていないガーデンチェアを引く。
ギギゴゴ。高い音と低い音が混ざった金属とコンクリートの床が擦れる音がする。
その音に眉間に皺を寄せながらガーデンチェアに腰を下ろす。
2階建ての2階のベランダ。周りは住宅街。眺めはいいはずがない。
風が涼しいが気温は暖かい春特有の変な陽気。
春の朝特有の香りを鼻から思い切り吸い込み
ガーデンチェアの背もたれに完全に体を預けそり返る。
ベランダの屋根が見える。鼻から息を吐き出す。ほんの少しボーっとした。
するとだんだん眠気が身体を侵食してきている感覚があったので
ベランダから屋内に入り、部屋に戻る。部屋に戻り一直線でベッドに倒れ込む。
顔から倒れ込み、自分のベッドの匂いを思い切り吸い込む。
顔を上げ枕元で充電していたスマホを充電ケーブルから外し、ホームボタンを押す。
通知の欄に鹿島と妃馬さんの名前があった。体を回転させ、仰向けになる。
スマホを顔の上に掲げた状態で、まずは鹿島の通知をタップし、鹿島とのトーク画面に飛ぶ。
「おはよう!まぁ疲れてたんだろ。しゃーないって。
ま、僕はこれから寝ますけどwおやすみなさいw」
とても鹿島らしい文章だった。そのメッセージに返信し、トーク一覧に戻る。
そして妃馬さんとのトーク画面をタップする。
「おはようございます。怜夢さんはよく寝れたでしょうか?
ちなみに私は今日1限と3限講義があるんですけど、怜夢さんは今日講義ありますか?」
その後に猫が「?」を浮かべているスタンプが送られていた。
本当は今日1限2限3限と詰まっていたがサボる気満々だった。
ただ妃馬さんが3限入ってるという事実を知り、少しだけ行く気力が出てきた。
「おはようございます。これから二度寝しようとしてたところですw
妃馬さんこそよく眠れましたか?僕は1限ありますけどサボるつもりですw
3限はー…起きてたら行きますw」
その後にフクロウが大きな羽で口元を隠し、ニヤリと笑っているスタンプを送った。
枕元にスマホを置く。ベッドの上で大の字になり
少しテンションの上がった状態で天井を眺める。
そして少ししてから自分の送って文章に焦った。
「サボる」や「起きてたら行きます」など明らかに印象の悪い文を送ってしまった。
妃馬さんへメッセージを送るときはすごく考えているつもりだったが
実はあまり思考が働いていないのかもしれない。
「はぁ〜…」
深くため息を天井にぶつけようと吐き出す。
ただそのため息は重く天井にぶつかることなく弧を描き足元に落ちた。目を瞑る。
もうそのまま寝てもいいやという思いでリラックスする。
自転車を漕ぐ音、車のエンジン音、走る音、鳥の囀り、微かな音も聞こえるように感じる。
目を開ける。なんとなくスマホのホームボタンを押す。通知はなし。
電源を消した瞬間再び画面が光った。
何事かと思い画面を見ると妃馬さんからのLIMEの通知だった。
ビックリした。仰向けからうつ伏せになり、スマホを持って胡座をかき
スマホを一旦枕の上に置き、腕を組んだり
拳の親指の方を口元にあてトントンしたり、とにかくなぜか落ち着かずソワソワした。
一度鼻から息を吐き出し、肩を回しスマホを手に取る。
ホームボタンを押し、妃馬さんのLIMEの通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面に飛ぶ。
「わぁ〜不良だぁ〜。私は気持ち良く寝てたのを我慢して頑張って起きたというのに…。
ちなみに3限の講義なんですか?」
そのメッセージの後に猫が少し不機嫌そうにした顔をしたスタンプが送られてきた。
少しホッっとした。ただこれは本当に不機嫌なのか?とも思う。
3限の講義をスマホで確認する。確認後すぐ返信する。
「えー…まぁ優良生徒ではありませんね…。
でも妃馬さんやっぱりイメージ通り真面目ですよね。3限は運動と健康って講義です」
その後にフクロウが謝ってるスタンプを送った。朝の父の言葉を引用させてもらった。
意味がわかると怖い話を読もうとホーム画面に戻るとすぐにスマホ上部に通知が来る。
すぐに通知をタップし飛んでいく。
「はい。不良です。怜夢さんは不良です。真面目…ではないでしょ。講義中にLIMEしてたし。
あ、同じです。起きてたら来るんですよね?
じゃあ、鬼電するんで来てくださいね(。-∀-)ニヤリ」
ビックリして
「へっ?」
と思わず声が漏れる。脳に読み込み中マークがクルクル回っていた。
読み込みが完了するとつい口元が緩み口角がピクつく。
「鬼電」つまりは「電話」つまりは「モーニングコール」
左手で口元を隠す。下唇を噛みニヤつきを隠す。
メッセージの内容を理解するのとメッセージを眺めていて
つい返信することを忘れていたことに気づき、返信をする。
「そんな確定宣言されるとさすがにへこみます…。まぁそうか?な?でも偉すぎでしょ?
え、電話して起こしてくれるんですか?wでも僕全然起きないで有名ですよ?w」
その後にフクロウがニヤニヤしているスタンプを送った。照れ隠しで少し茶化した。
するとすぐ既読の文字がつく。そのまま妃馬さんとのトーク画面に留まるべきか否か迷った。
結局意味がわかると怖い話のアプリを開き
ただただクリアした回のタイトルを見て、どんな話かを思い出していた。
するとすぐにスマホの上部に通知が届く。思い出していた話が一瞬で頭から消え去る。
通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面に飛ぶ。
「確定宣告です。怜夢さん=不良。
私も真面目じゃないです。だから私も不良仲間ですよ(*´艸`)ウフフ
…たしかに。自分でも偉いなって思いますw
はい!鬼電します!w怜夢さんだけダラダラしてるのはズルいので道連れです( ̄∀ ̄)ウシシ
全然起きないで有名なんですか?w」
「あ、そうだ。怜夢さん起きるとしたら何時ころですか?」
そのメッセージの後に猫が「?」を浮かべているスタンプが送られていた。
顔文字の可愛さについ顔が綻ぶ。スマホ上部の時刻を確認しながら計算する。
そして妃馬さんに返信する。
「あ、妃馬さんも不良仲間かwなら悪くないかもw自分で自分を褒めていくスタイルねw
電話してくれるのか…嬉しいな。
ズルいwwなら妃馬さんもダラダラすればいいのにw
そうですね。そっちの界隈では割と有名ですw」
「11時半ですかね?」
その後にフクロウが「嬉しい」と笑顔のスタンプを送った。口元が綻んでしょうがなかった。
下唇を噛んでみたり唇をしまってみたり、口をすぼめてみたり
口をいろんな形に変形させてニヤつきを誤魔化していた。
思い付いたようにベッドを降り、小走りで部屋を出て、小走りで廊下を進み
気をつけて階段を下り、小走りでリビングへ向かう。
リビングの扉を開くとリビングのテレビが点いていた。
扉が開いた音が聞こえたのか、ソファーの背もたれから顔を覗かせる母。その母に向かって
「ごめん。やっぱお昼いらないわ。ちょっと出かけることになったから」
とお願いする。すると母はまたソファーの背もたれに隠れ
「はいはーい」
と言う。そのまま部屋に帰ろうかどうしようか悩み、その場で謎に一回転する。
キッチンへ入り、自分のグラスに四ツ葉サイダーを注ぎ
その場で1口飲み、もう一度飲んだ分を注ぎ直し、リビングを出て部屋へ戻る。
ローテーブルにグラスを置き、流れるようにスマホを手に取り
ベッドに腰を下ろし、スマホのホームボタンを押す。
妃馬さんからのLIMEの通知がある。わかってはいたがやはり嬉しかった。足をピンと伸ばす。
ローテーブルの裏に爪先がぶつかった。
ドンッっという鈍い音と同時くらいにガコンッという重いガラスが落ちる音も部屋に響いた。
ローテーブルを蹴り上げたと同時に
ローテーブルの上に乗っていたグラスも必然的にほんの少し浮いたのだろう。焦った。
グラスに入った四ツ葉サイダーの水面が揺れる。グラスの縁から出そうになるほど揺れる。
真剣な眼差しで見つめる。水面の揺れは小さくなっていき
四ツ葉サイダーが溢れることはなかった。一安心だ。スマホに視線を戻す。
画面は暗くなっていた。今一度ホームボタンを押し
妃馬さんのLIMEの通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。
「ですですw悪くないってw
そうですよー?ときには自分を褒めてあげなきゃ!
嬉しいんならなおさら出てくださいね♡私もダラダラしたかったですよー。
でも今日家族全員早く起きて早く家出たのでなんとなく私も流されて…。
そっちの界隈wどっちの界隈ですかw」
「じゃあ11時半ころ鬼電しますので覚悟してくださいね|*`艸´)ククク…」
そのメッセージの後に猫が企むように「ニヤリ」と笑うスタンプが送られていた。
ニヤつきが止まらない。変に壁を見たりと口元も視線も落ち着かない。
とりあえず妃馬さんに返信する。
「妃馬さんが仲間なら不良って呼ばれてもいいなw
まぁたしかに大事かもですね。ぐっ…。わかりました。努力します…。
あ、へぇー。お母様は?お仕事は?
全国寝起き悪い軍団ですかねw」
「じゃあ、お願いします。さてじゃあ安心して寝るかな!wおやすみなさい(*´꒳`*)…zzZ」
その後にフクロウが寝ているスタンプを送った。
寝起きに妃馬さんから電話があると考えると
文字通り心臓がドキドキしてなかなか寝付けなかった。幾度となく寝返りを繰り返す。
顔の右側を枕につけたり、仰向けで寝ようと試みたり
顔の左側を枕につけたり、枕に顔を埋めてみたり、どうにか眠ろうとする。
ただ寝ようと集中するだけ心臓の音が気になり眠れない。
一度仰向けになり鼻から深呼吸をする。
ただ一度深呼吸しただけなのに不思議と落ち着き、眠気が一気に押し寄せてきた。
今度は落ち着いた中、寝返りを数度うつ。