長崎での激戦を終えた3兄妹と蓮司は、
江戸へと戻っていた。
戦いの余韻を胸に秘めつつも、
次なる戦いに備え、束の間の休息を取ることにする。
江戸の町を歩いていると、
路地裏や広場で子供たちが楽しそうに遊んでいた。
竹馬、独楽回し、羽根突き――
活気に満ちた光景が広がる。
子供たち
「ねえ!ねえ!
お兄ちゃんたちも一緒に遊ばない?」
元気な声が飛んできた。
振り向くと、子供たちが無邪気な笑顔で
3兄妹と蓮司を見上げている。
竜之介が笑いながら腕を組む。
竜之介
「ははっ、いいな。
最近は修行か戦いばっかりだったからな……
たまにはのんびりするのも悪くない」
千姫も微笑む。
千姫
「そうよ! 戦いばかりじゃ気が張るものね。
少し遊ばせてもらおうかしら」
晃平は肩をすくめる。
晃平
「まぁ、運動になるし悪くはないな」
一方、蓮司は少し戸惑った様子だった。
しかし、子供たちの無邪気な視線を受けると、
小さくため息をつき、頷いた。
蓮司
「……仕方ないな、付き合うか」
最初は軽く遊ぶつもりだった。
だが、いざ始まると蓮司の様子が変わった。
「シュッ!!」
羽根突きでは、俊敏な動きで羽根を打ち返し、子供たちが驚くほどの実力を発揮する。
竜之介
「お前、妙に動きがいいな……?」
竜之介が呆れたように言うが、
蓮司は真剣な表情のままだ。
独楽回しでは、相手の独楽を狙い澄まして弾き飛ばし、
見事な勝利を収める。
子供たち
「うわ〜……お兄ちゃん強い!」
子供たちが悔しがる中、
蓮司は静かに勝ち誇ったように微笑んだ。
そして、鬼ごっこでは――
千姫
「蓮司、ちょっとあんた本気出しすぎ!」
「シュンッ!シュンッ!シュンッ!」
千姫が呆れるほどのスピードで、
蓮司は次々と子供たちを捕まえていく。
蓮司
「……遊びでも手を抜くのは嫌いだ」
淡々とした言葉とは裏腹に、
口元はどこか楽しそうだった。
遊びが終わる頃には、すっかり夕暮れになっていた。
息を切らす子供たちが、笑いながら蓮司を囲む。
子供たち
「お兄ちゃん、すごいな!
また遊んでくれる?」
蓮司は一瞬、戸惑ったように黙る。
しかし、次の瞬間、少しだけ柔らかく微笑み、
静かに頷いた。
蓮司
「……ああ、機会があればな」
竜之介がその様子を見て、ニヤリと笑う。
竜之介
「お前、結構子供好きなんじゃないか?」
蓮司は顔を背けながら――
蓮司
「……くだらんことを言うな」
そうそっけなく返すが、その耳はほんのり赤かった。
千姫と晃平も微笑みながら、彼の変化を感じていた。
こうして、戦いの日々の中で束の間の平穏なひとときが
過ぎていった。
江戸の町での遊びを終え、
3兄妹と蓮司は宿へと向かっていた。
夕闇が迫る町並みを歩きながら、
どこか穏やかな空気が流れる。
竜之介がふと、蓮司の横顔を見ながら口を開いた。
竜之介
「なぁ、蓮司……さっき、
結構楽しそうだったじゃねぇか?」
蓮司は一瞬、歩みを止める。
蓮司
「……そんなつもりはない」
竜之介
「いやいや、羽根突きも鬼ごっこも本気だったろ?
手を抜くどころか、ガチだったじゃねぇか」
竜之介が笑うと、千姫も微笑む。
千姫
「蓮司があんな風に夢中になるの、
ちょっと意外だったわ」
晃平も腕を組みながら言う。
晃平
「もともと子供好きなのか?」
蓮司はしばらく黙ったまま歩いていたが、
ふと夜空を見上げた。
しばらくの沈黙の後、ぽつりと呟く。
蓮司
「……昔、妹がいた」
3兄妹は驚いて蓮司を見る。
千姫
「妹?」
千姫が静かに尋ねると、蓮司はゆっくりと話し始めた。
彼と妹は戦争孤児だった。
戦で親を失い、2人きりで生き延びてきた。
蓮司
「食うものもなく、家もなく……
それでも俺は、
妹だけは守ろうと必死だった」
だが、ある日――妹は妖怪にさらわれた。
夜中、目を離したほんの一瞬の隙だった。
妹の姿が消えていた。
必死で探し回り、ようやく見つけた時には――。
蓮司
「そこには……妹と妖怪がいたんだ」
けれど、彼女はもう動かなかった。
冷たく、血に染まり、無惨に殺されていた。
蓮司は怒りに狂い、気がつけば妖怪を滅ぼしていた。
それが、彼の戦いの始まりだった。
復讐の念だけを胸に抱え、
さまよっていた彼を拾ったのが護法蓮華だった。
だが、そこで与えられたのは温もりではなく、
戦う術だった。
蓮司
「俺は、異界の者を滅するべく、過酷な修行を受けた」
それが、生きる意味だと教えられた。
蓮司
「だから俺は――異界滅殺にこだわる。
二度と、誰かが俺と同じ思いをしないように……」
蓮司の声は静かだったが、その奥には深い決意と哀しみが宿っていた。
竜之介はぽつりと呟く。
竜之介
「……お前、本当は優しい奴だったんだな」
蓮司は目を伏せる。
蓮司
「……昔はな」
だが、千姫はそっと微笑む。
千姫
「でも、今日のあなた……昔のままだったんじゃない?」
静かに夜風が吹く。
宿の灯りが近づく中、蓮司はぽつりと呟いた。
蓮司
「……俺は、まだ戦い続ける」
竜之介が力強く頷く。
竜之介
「ああ……俺らも一緒にいるよ」
それは、仲間としての誓い。
しかし、休息の時間はもう終わりを迎えようとしていた。
妖怪の四天王――圧倒的な力を持つ強敵たちが、
静かにその影を忍ばせている。
江戸の平穏を打ち砕く、
さらなる戦いの幕が上がろうとしていた。
次なる死闘の舞台へと向かう彼らの行く手には、
一体何が待ち受けているのか。
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