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夜は、不思議なほど静かだった 。
処刑前夜だというのに、城は眠っている 。
まるで、この国全体が ____ 、見ないふりをしているようだった 。
牢の前に立つ翡翠の王子は 、しばらく鍵に手をかけなかった 。
開けてしまえば、戻れなくなってしまう 。
そんなことは分かっていた 。
それでも、扉は軋む音を立ててゆっくりと開いた 。
琥珀の王子は、壁を見つめて立っていた 。
… 眠れなかったのだろう
驚いた様子はなく、静かに目を向ける 。
「… 来てくれたんですね」
その一言で、胸の奥が崩れた 。
「見張りのためだ」
そう言いながら、中に入る 。
嘘だとわかっている言い訳を、お互い否定しない 。
牢の中は、夜の空気で満ちていた 。
石の床から伝わる冷たさに、琥珀の王子は小さく身を竦める 。
翡翠の王子は、それを見逃さなかった 。
「… 寒いんか 、?」
「いえ、少しだけ …」
「ですから、大丈夫です」
大丈夫な訳がない 。
明日、殺される人間が 。
翡翠の王子は短く息を吐き、一歩近づく 。
「… 来い」
それは命令だった 。
王子としての、最後の逃げ道 。
琥珀の王子は一瞬だけ目を見開き 、
それから、ゆっくりと歩み寄った 。
抱き合うという言葉は 、
王子としては有り得ない言葉だった 。
最初に触れたのは、肩 。
次に、背中 。
そして、躊躇うように回される腕 。
琥珀の王子の額が、翡翠の王子の胸に埋まる 。
心音が、はっきりと聞こえる 。
「… 暖かい 、」
「生きてますね」
囁くような声
「… 当たり前や」
「良かった 、」
翡翠の王子は 、抱きしめてしまいそうになるのを必死に堪えた 。
壊れかけのものを扱うように 、慎重に腕に力をいれる 。
琥珀の王子の体は 、思ったよりも空っぽみたいで軽かった 。
悲しくて仕方がなかった 。
「… 覚えていてください」
琥珀の王子が 、ぽつりという
「何をだ」
「今のこと」
「貴方の体温」
「… 貴方が 、会いに来てくれたこと」
翡翠の王子は 、口を閉じていた 。
代わりに 、琥珀の王子の肩に額を押し当てる 。
視界が暗くなる 。
このまま夜が終わらなければいいと 、心底思っていた 。
「… 名前」
琥珀の王子が 、ゆっくりと続ける 。
「… 貴方の 、本当の名前を」
「教えてほしい」
禁句だった 。
口にしてはいけない 、ましてや敵国の王子に
。
翡翠の王子は沈黙のあと 、低く囁いた
「____ だ 。」
「絶対に口にするな」
「はい」
琥珀の王子は 、小さく微笑んだ 。
「心の中で 、大切にします 。」
その言葉に 、翡翠の王子は 、
喉が詰まりながらも囁いた 。
「… 教えてくれ 、君の本当の名を」
琥珀の王子は一瞬 、
躊躇ったような様子を見せるがすぐに口を開いた 。
「____ と申します 。」
「… 素敵な名だ」
抱き合ったまま 、二人はしばらく動かなかった 。
欲は無い 。
未来も無い 。
ただ 、今この瞬間だけを生きていたいと思う 。
やがて 、遠くで鐘がなる 。
夜明けを告げる音 。
翡翠の王子は 、ゆっくりと腕を解いた 。
「… 朝が来てしまったな」
「そう 、ですね」
「怖いか ?」
琥珀の王子は迷ったような素振りを見せてから 、正直に答える 。
「… 貴方と 、もう会えないことが 。」
翡翠の王子は 、息を飲む 。
「俺は此処に居る 。」
それが 、数刻後には嘘になってしまう 。
琥珀の王子は 、再び翡翠の王子に近付いた 。
ほんの一瞬 、唇が触れる 。
琥珀の王子は直ぐに離れると 、声を震わせながら呟いた 。
「おやすみなさい 。」
「… 王子」
扉が閉まる 。
さっきまで目の前にあったはずの暖かさは 、
いつの間にか何処かにいってしまった 。
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やっぱりキスの表現って難しい … 、
次回 、最終回です 。
お楽しみに !
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ 400 ♡
責めすぎたかな 、?