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「とある企画をですね、やろうと思うわけですよ」
「企画?」
そんなことをりもこんが言ったのは、今から少し前のこと。グループの企画の多くを担当し、システムの構築なども行っている彼が、突然そんなことを言い始めた。
常は撮影時に新鮮なリアクションを得る為、敢えて詳細を伏せて企画は進行される。立案も構築もりもこんが大半を担い、他のメンバーはそれのサポートをする。
とはいっても、全てを独断で行う訳ではない。特にリーダーであるふうはやには、かざねとしゅうとよりも先に情報を伝えることも多かった。そんな中で、今回の発言が出てくる。
「大量の建築物が必要になるものでさ。俺と裏方さんで準備してもいいんだけど、試しにリスナー達を頼ろうと思って」
「成程?」
りもこんが言うには、リスナー達の建築したものを集い企画に盛り込むというもの。斬新な発想だしこちらの準備ということでも多少なりとも負担は減るかもしれない。方法を問うと、ワールドを提供してもらうやり方を彼は考えていた。
「ちょっと配信で喋ろうかなって」
「あー、いい案が出るかもな」
「そうそう」
そんなことを言いながら、りもこんは個人配信を少し後に始めるのだった。
結果として、募集の形はだいぶ変わることになった。リスナー達の意見も参考に、りもこんがワールドを用意してそこに建築をしてもらうことになった。
「確かに、こっちで規格を決めてしまえば使う際にもやりやすいかも。色んなワールドを開いて抽出する手間も省けるし」
「けど、募集してるのってベッドロックも含むんだろ? トラブル増えるんじゃね?」
「まー大丈夫でしょ。難しいことを要求してる訳じゃないし。ワールドを提供して、建築してもらうだけ。ってことで、俺今から大急ぎでワールド構築するわ。あ、ディスコも使うからな」
「止めはしないけど、無理すんなよー」
りもこんが自ら考えたものだ。止める必要はない。そう思い、ふうはやは彼の背中を押した。
自分も個人チャンネルの撮影やら他の仕事が入っている。何か助けが必要ならば言うだろう。そんな軽い気持ちでいた。
「ってことで、よろしくお願いしまーす」
月に一回、二人で行っているラジオ配信。そこにて告知をし、本格的に企画がスタートした。しかし実際初めてみると、特に統合版の方でトラブルが頻発し、りもこんはその対応に追われることになる。
幾つもの質問に答えながらトラブル対応もし、漸くそれが落ち着いてきたところで荒らしが出現。辟易しながら対応をし、平和を取り戻す。そして当初設定していた期日を迎え、サーバーを閉じた。
「終わったー!」
思わずそんな声が洩れた。サーバーを閉鎖し、リスナーとの連絡用チャンネルにもコメントをした。最後、リスナー達から感謝の言葉が幾つも届いていたのもきちんと見た。色々思うこともあり、夜中だが配信もした。それも終了して漸く、リアルタイムでの対応から離れることが出来る。
「お疲れ~」
そんな時、タイミングよく部屋の扉が開いてふうはやが顔を出す。サーバーを閉じる時間を見計らって労わりに来てくれたのだろう。
「めっちゃ疲れたよー」
そうぼやけばふうはやは側に来て優しく頭を撫でてくれる。
「頑張ったな」
「ある程度予想はしてたけど、此処までトラブルが頻発するとは思わなかった…」
「トラブル対応も基本お前がやってたもんな」
「圧倒的にマンパワーが足りなかったよね。後半はまだよかったけど、前半の質問の嵐が…。運営側の人数が少なかったのもあるけど」
「ま、振り返ってみれば色々あるさ。今日はもう寝ようぜ。俺も眠い」
りもこんが終了するのを待っていたのだろう。欠伸をする彼に思わず笑みが浮かぶ。先に寝ていてよかったのに、自分のことを気にして待っていてくれた。そのことがとても嬉しかった。
二人で布団に潜りこむ。ふうはやがりもこんを包むように抱き締める、何時ものスタイル。今年はまだ、快適な気温が夜も続いている。互いにひっついていても暑苦しくなどならない。
「おやすみ」
ふうはやの心臓の鼓動を聞きながら、りもこんは目を閉じるのだった。
企画の期間を短くした理由をファンに告げた日から、数日が経過し、誕生日当日を迎える。此処に至るまでにリスナー達がお祝い広告を掲載してくれたことを知り、人知れず見に行った。それがとても嬉しくて。メンバー達に話したのが数日前。
そして日付が変わった瞬間から、一気にスマホの通知が鳴る。仲の良い者達からの連絡はちゃんと通知がくるように設定しているため、直ぐにメッセージを受け取ることが出来た。
「りも、誕生日おめでとう」
しかしそれらを確認するのを後回しにし、りもこんは隣にいる愛しい男からの祝いの言葉を享受する。当たり前のようにずっと一緒にいる。ちゃんと祝うのは誕生日当日の昼間だが、祝福をするのは日付が変わった瞬間。誰よりも早く彼はりもこんへと祝福の言葉を告げる。
「ん、ありがと」
穏やかな声で返事をすれば、優しい色をした瞳と目が合う。そっと頬に手が触れ唇に落ちる優しい温度。
愛しい、愛しいと。
その想いは言葉にせずとも相手に伝わる。
「こうして祝うの、何回目だろうな」
「どうだろ? でも、随分と長くなったよね、俺達も」
「来年も、その次も。更にその次も一緒にお祝いしような」
「ふふ、当然」
彼の生活の中に自然と自分が入っていることを嬉しく思う。そして自分の中でも彼の存在は当たり前になりすぎていて。共にいない未来など、描けない程に。
「実家には顔、出さないんだっけ?」
「その心算。だってふうはやが祝ってくれんじゃん。当日に急いで帰る理由はないよ」
誕生日は共にいたい。そう話すりもこんにふうはやは嬉しそうに笑う。彼とて、自分を選んでくれたことが嬉しくて仕方がないのだ。
「こうして平日にも関わらずずっと一緒にいれるからさ、此の仕事でよかったよな」
「でないと当日にこうしていられることって難しいもんね」
もう一組のことを思うと、自分達は同じ時間を歩みやすい。確かに仕事をしなければならないが、束縛される時間は調整出来る。
「企画のことも進めないといけないし」
「この前やったやつか。順調?」
「いやいや、まだそれ程進めれてはいないよ」
事前準備がひとつ終わった程度。まだまだやることは山積みになっている。作業量としては自分もだし、裏方のスタッフもかなりある。だとしても、今は仕事のことは放っておきたい。
それを伝えるかのようにふうはやの肩に額を置き、ぐりぐりと擦り付ける。甘えているのだとすぐに分かるこの行動。常は素直に甘えてこないりもこんのストレートな愛情表現に、ふうはやは込み上げてくるものを感じる。
「とりあえず今日はりものこと、しこたま甘やかすわ」
「とは言うけど、ふうはや何時も俺を甘やかすじゃん。何が違うのさ」
「いやいや。そうは言ったって誕生日はまた特別じゃん」
何をどう言ったとて、彼がりもこんを甘やかすのは決定事項。だがそれもまんざらではない。彼の言う通り、甘やかされてあげよう。そう、ふうはやにくっつきながらりもこんは思うのだった。
「「おめでとう!」」
祝ってくれたのは、ふうはやだけではない。かざねとしゅうともまた、そう言葉を述べる。メンバー間で誕生日を特に祝ってなどいない、とリスナー達には言うものの、実際にはそうではなかったりする。大切な仲間として。特に全員で大きなことをすることはないのだが、こうして祝福をする。
「ありがと」
様々な縁に恵まれたな、とりもこんは思う。あの時、活動を始めてなければ出会うことのなかったもの。それらに囲まれることの、幸せ。
しかし何よりもかけがえのないものに出会えたこと。それが最も、りもこんにとっての幸せを形成する礎となる。
「これからも、ずっと」
ずっと、ずっと。
紡いだ縁が、途切れぬように。
コメント
3件
朝から素敵すぎる作品が読めて嬉しいです!!2人の関係性も、やり取りも微笑ましくて…✨️ ファン思いで一生懸命なりもこんと、りもこんさんの頑張りを知ってるからこそ1番近くで支えて、癒してあげるふうはやさんも大好きです🫶 今日もありがとうございます!!
読み終えたよ〜🥀 りもこんの頑張りと、それを待っててくれるふうはやの温度がじんわり沁みた。 トラブル対応で疲れてる姿から、誕生日の“当たり前の隣”に戻る流れがすごく好き。 「来年もその次も」って言える関係、尊すぎるよ…! この静かな幸せ、ちゃんと守ってほしいな。