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#異類婚姻譚
和泉
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それからしばらくして――。
王都エスパハレの玄関口、グランセール駅。
北へ向かう汽車を前に、ダフネは不満げに眉を寄せていた。
「本当に馬車じゃないのね」
「エルダン駅までは汽車だよ」
見送りに来たウィリアムが答える。
「ライオール卿からの指示だ。そこから先の儀礼馬車や護衛は、すべて向こうで手配してくれている」
「ちゃんと私がお願いしたとおりの豪華な馬車なんでしょうね?」
「……そこは心配しなくていいんじゃないかな」
どこか歯切れの悪い返事だった。
けれど、ダフネがその意味を深く考えることはなかった。
嫁入り支度については、驚くほどあっさり希望が通ったからだ。
何着ものドレス。
それに合わせた靴。
首飾り、耳飾り、腕輪に髪飾り。
日用品に至るまで、ダフネが欲しいと言ったもののほとんどが用意された。
当然、すべてがこの客車に積まれているわけではない。
大量の嫁入り道具は貨物車両へ載せられている。
(ほら。やっぱりお養父さまは分かってくださったじゃない)
あれほど反対していたウィリアムの方がおかしかったのだ。
「じゃあ、行ってくるわ」
「ああ」
汽車へ乗り込もうとしたところで、背後から名前を呼ばれた。
「ダフネ嬢」
「なによ」
振り返る。
ウィリアムは何か言いたげな顔をしていた。
「……気をつけて」
「何よ、急に」
「いや。長旅だからね」
「大丈夫よ。護衛だっているんでしょう?」
そんな心配をされるほど、自分は頼りなく見えるのだろうか。
ダフネはフンッと鼻を鳴らす。
「それに、あちらへ着けば私は王太子妃よ」
そう言って胸を張るダフネに、ウィリアムは何とも言えない顔をした。
「次に会う時には、王太子妃になった私にちゃんと敬意を払いなさいよね」
「……会えれば、ね」
「何よ、その返事! 最後くらい気分よく送り出してくれたっていいでしょう!?」
「男爵の俺が、他国の王太子妃様にお目通り願えるとは思えないからね」
「そこは世話になったよしみでなんとかしてあげるわよ! 本当最後までしみったれたことを言う人で嫌になっちゃう!」
怒鳴りつけてから、ダフネは自分の荷物を抱えた三人の侍女を従え、今度こそ汽車――一等客室――へ乗り込んだ。
やがて汽笛が鳴る。
ゆっくりと動き出した車窓の向こうで、ウィリアムの姿が遠ざかっていく。
ダフネは一度だけそれを見て――すぐに興味を失ったように顔を背けた。
コメント
2件
あまりに華美にしちゃうからウィルが心配してくれてるの、分かってないんだろうな、ダフネ。 男爵が他国の王太子妃と面会は確かに難しそう。 でもダフネだからなぁ。 そんなの関係ないわ!って本当にウィルを呼んじゃいそう(笑)
読み終わったよ〜!ダフネ、すっかりおめでたいモード全開じゃん…。ウィリアムの「会えればね」のニュアンス、めっちゃ気になる。彼の歯切れの悪さとか、何か知ってる感あるよね。次、何が待ってるんだろ…。楽しみだけどちょっと怖い🌙