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「大変っていうか、ちょっと資金繰りに苦労してるみたいだけど、でも……うん、お父さん達頑張ってるから。心配しないで」
今度は顔に出さないように気をつけた。
「そっか。高校時代、お前のおじさんとおばさんにはすごくお世話になったから。バスケの練習が終わった後にみんなでご飯をご馳走になったり、おじさんには色々経営のことも教えてもらった。なのに、恩返しができてないし、もし何か俺にできることがあれば言ってほしい。何でもするから」
「ちょっと大袈裟だよ。でも、ありがとう。何だか懐かしくなったよ。工場の横にあるうちの家に集まって、みんなでご飯食べたりしたよね」
「ああ。本当に懐かしい」
「うん。でも、本当に龍聖君に心配してもらうほどのことじゃないから。気にしないでね」
完全に強がってしまっている。
でも、これ以上、私の家の問題を聞かせてはいけないと思った。
「あら、琴音じゃない!」
この声、一瞬、体が固まる。
「ね、姉さん!?」
「何してるのよ、ここで」
「な、何してるって……」
お願い、この状況を察して向こうにいってほしい。
でも、行くわけ……ないよね。目の前にこんな最高のイケメンがいるのだから。
「買い物してたら、昔の友人に偶然会ったの」
「あらまあ、はじめまして。琴音の姉です。涼香っていいます。あなたは?」
「お姉さんですか。はじめまして、鳳条です」
「鳳条さん、下のお名前は?」
そう言いながら、ちゃっかり私の隣に座った。
「鳳条 龍聖と申します」
「龍聖さん、とても良い名前ね。琴音とはいつの友達なのかしら?」
「涼香姉さん、この人は高校時代の友人よ。そんなに親しくしてたわけじゃないから。そろそろ失礼しようと思ってたとこ。一緒に出ましょ」
私は、瞬間的に、龍聖君から姉さんを遠ざけたいと思ってしまった。