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一瞬どういう意味か分からなくてフリーズしたけど、すぐにその意味を理解した私は今さっき結月が触れた左の首筋を手で抑えながら、
「まさか、付けたの……?」
結月がした行為について確認するも、
「さあ? 気になるならトイレで確認して来いよ。それじゃ、俺は先に行く。終わったら必ず連絡しろよな」
はぐらかした彼は先に行くと言ってヒラヒラと右手を振りながら歩いていってしまった。
「……有り得ない……」
残された私は鞄から小さな手鏡を取り出して首筋を確認してみると思った通り、赤い痣のようなものがそこにはあった。
ただでさえ、私の来ているニットワンピースは胸元が少し開いているデザインな為、この状況で髪を束ねたら首筋の痣も当然目立ってしまう。
「もう……何で結月は私を困らせるのよ……」
結局髪を束ねられなくなってしまった私は手櫛でササッと髪を整えてから待ち合わせ場所へ向かって行った。
「葵、こっちこっち」
「ごめんね、遅くなって……」
待ち合わせ場所に着くと、既にみんな到着していて私が一番最後だった。
「それじゃあ、みんな揃ったし、行こうか」
駅から程近いカラオケ店の前で待ち合わせしていた私たちは店の中へ入って行く。
合コンのメンバーは男子女子四人ずつの合計八人。
女子は全員女子高生でクラスや学年が違う子もいて、相手の男の人は他校の生徒や一部大学生も混じっている。
主催した私の友達と仲の良い相手の男の子が同じ塾に通っていて、その繋がりから集まったメンバーだとか。
個室に着き席順が適当に決められて私は一番奥の席に着くことに。そして唯一の大学生の男の人が私の隣に腰を下ろした。
自己紹介をしてからそれぞれ思い思いに動き始める。
選曲する子もいれば、メニューを見る子もいるし、隣同士でお喋りを始める子も。
私はどうしようかと戸惑い気味でいると隣に座った二十歳の矢上 武尊さんが話し掛けてきた。
「葵ちゃんは高2だったよね?」
「あ、はい。そうです」
「結構大人っぽいよねぇ~」
「そうですか?」
「うん。今日の格好も凄く似合ってるしさぁ」
「ありがとうございます……」
矢上さんは何ていうか、結構ぐいぐい来るタイプのようで、どちらかと言えば私の苦手なタイプだった。
しかも、かなり軽い……。女慣れしてるんだろうなぁ
隣には彼しか居ないから必然的に彼と会話を交わすしかなくて、とりあえず聞かれたことを答えながら後はひたすら相槌を打っていた。
暫く経って、ふと結月に連絡をしていないことに気付いたけど、矢上さんが話を振ってくるのにスマホを弄れず、仕方ないかと思っているとテーブルの上に置いていたスマホにメッセージが届いたようで、画面に名前が表示された。
「あ、ちょっとすみません……」
「もしかして、男の人だったり?」
「まあ、男と言えば男ですけど……弟です」
「弟くん? 仲良いんだ? いくつ?」
「一つ下です」
「年子かぁ~。珍しいね、高校生になっても仲良いなんて」
などという会話を交わしていると矢上さんの隣に座っていた私の友達でこの合コンを主催した東 美菜子ちゃんが会話に参加してきた。
「葵の弟って言っても、血の繋がりはないんですよ~。ね、葵」
「え? あ、うん……」
しかも、わざわざ義理の姉弟だということを暴露されてしまい矢上さんがその話に食いついてきた。
「そうなの? あ、親同士が再婚して姉弟になったとか?」
「はい、そうなんです」
「へぇ~。それじゃあ弟くんは葵ちゃんのこと好きだったり? いや、その逆もあるのかな?」
「まさか、そんな訳ないですよ」
そもそも、私も結月もお互いを好きなはずは無い。
そりゃあ……セックスはしてるけど、それはあくまでも結月が無理矢理求めてくるだけだし、それだってきっと、私を困らせたいだけなのだから。