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朝。
同じ会社、同じビル、同じフロア。
でもアメリカの一日は、出社前からすでにイギリスに甘えて始まる。
「アメリカ、起きてください。もう朝ですよ!」
会議ではあんなに堂々としているくせに、二人きりだと距離が近い。
「あと五分」
アメリカは目を閉じたまま言う。
その腕が、逃げないようにイギリスの腰に回る。
「五分とか言って毎回十分になりますよね、?」
文句を言いながらも、アメリカは離れない。
イギリスの弟であることを、こういう時だけ全力で使う。
「…ッ甘えてる自覚あります?」
「あるけど、イギリスだからいい」
その一言で、イギリスの口元がわずかに歪む。
――本当に、かわいい。
会社に着くと、空気は一変する。
「おはようございます。本日もよろしくお願いいたします」
日本が深々と頭を下げる。
「おはようアル!今日も残業の予感しかしないアル!」
中国は日本の腕に自然に絡みつきながら言う。
「ちょ、ちょっと…職場ですので……」
と言いつつ、日本も離れない。
「相変わらずだな」
アメリカは横目で見て呟く。
「私達も負けてないですけどね」
イギリスは静かに微笑む。
表向きは、あくまで同僚同士の距離。
会議室では、アメリカは一切甘えない。
腕も組まないし、視線も必要以上に向けない。
「この案件、俺がやる」
短く、ぶっきらぼう。
「それなら私がサポートします。」
イギリスも冷静。
「承知いたしました。ではスケジュールを再調整いたします」
日本がきっちりまとめる。
「了解アル!」
完璧なビジネスの空気。
誰も、裏の関係なんて気づかない。
――休憩時間までは。
昼休み。
人の少ない給湯室。
「イギリス」
アメリカが呼ぶだけで、声の温度が変わる。
「どうしました?、アメリカ」
「さっきの会議、俺の意見ちゃんと拾ってくれただろ。ありがとな」
「当然ですよ」
イギリスは一歩近づく。
壁とアメリカの間に、そっと腕をつく。
「……近い」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、会社…///」
そう言いながら、アメリカは逃げない。
むしろ、イギリスのシャツを軽く掴む。
「裏では甘え放題ですねw」
「イギリス相手だからな…//」
その瞬間、イギリスの目が少しだけ暗くなる。
独占欲が滲む、歪んだ愛。
「他の誰にも、そんな顔見せないでください」
「当たり前だろ」
即答。
それだけで、イギリスは満足する。
午後。
デスクワーク中、アメリカのスマホが震える。
《あとでちゃんと構って》
アメリカからの短文。
イギリスは小さく鼻で笑う。
会議では見せないくせに。
「……ほんと甘えん坊ですね…」
「何かおっしゃいましたか?」
日本が振り返る。
「なんでもないですよ?(^^)」
「了解アル!」
中国は日本の肩にもたれながら仕事している。
「……自由すぎだろ、あいつら」
「羨ましいんですかw?」
イギリスが小声で言う。
「別に。イギリスがいればいい」
その言葉で、イギリスの歪んだ愛は静かに満たされる。
退社後。
エレベーターを降りた瞬間、アメリカはイギリスの腕に捕まる。
「お疲れ。もう表は終わり」
「やっとですか」
肩にもたれてくるアメリカ。
完全オフモード。
「今日はちゃんと甘えてくださいね?」
「言われなくてもそうする」
夜の街を並んで歩きながら、二人だけの距離に戻る。
会社では完璧な同僚。
裏では、甘えん坊な弟と、歪むほど愛してる兄。
そんな一日が、また明日も続く。