テラーノベル
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「……なぁ、いるま。」
「ん?」
なつは、窓の外を見たままだった。
夕方の光が、教室の床に細長く伸びている。
人気のない廊下から、遠くで扉の閉まる音がした。
それもすぐに消えて、教室には時計の秒針の音だけが残った。
「俺らってさ」
なつの指が、机の端をなぞる。
「何の為に生まれてきたんだろうな」
いるまは顔を上げた。
なつの横顔は、窓に差し込む光の中でぼんやりと滲んでいた。
「朝起きて」
なつが呟く。
「学校行って」
窓の外で、風に揺れた木の葉が擦れる。
「飯食って」
いるまは何も言わない。
「友達と喋って」
なつの声が、少しだけ遠くなる。
「家族と喧嘩とかもしてさ」
そこで、なつは少し黙った。
夕焼けが少しずつ薄くなっていく。
机の上に置かれた鞄が、長い影を落としていた。
「そういうのでよかった」
なつは、窓の外へ視線を戻した。
空は、もう青とも灰色ともつかない色になっていた。
まだ、星は見えない。
「普通でよかったのに。」
小さく落ちた声に、いるまは答えなかった。
ただ、膝の上で握った手が、また少し震えていた。
なつはそれを見ても、何も言わなかった。
教室は、静かだった。
#らんこさ
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柴桃 乃愛美
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コメント
1件
うわ、これめっちゃ刺さった……。夕方の教室の空気感が映像で見えてくるみたいだった。「普通でよかったのに」のいるまの呟き、なつの震える手、何も言わない二人の間に流れる時間が重くて。Prologueってタイトルも含めて、これから何かが始まる予感がする。続きめっちゃ気になる!