さて、話は変わりますがこれ何か分かりますか?
Bさん。
先程まで自分は悪くないという顔で聞いていたくせに何を今更目を見開いて。
ただのナイフでしょう。
私に噛みつきそうな勢いで睨んでいますね。
けれど今でたら自分がBだとバレてしまう。
きっと何人かにはバレているけれど今まで猫を被ってきたからまだ馬鹿な男は騙せるという感情なのでしょう。
ビンゴでしょう。
私、人の顔を見ただけでその人の考えていることが分かるんです。
凄いでしょ。
これが観察力ですよ。
そんなことどうでもいいみたいに睨まないでください。
これはあなたが愛してやまない彼とお揃いのナイフですもんね。
これは彼の部屋で見つけました。
私ではなく紗良がですけど。
中二の冬にとったらしいですよ。
あなたのことなど眼中に無かったようですね。
1年少しとナイフが無くなっているのに気づきもしなかったなんて。
これ、彼からのプレゼントなんですか?
ふふっ、思春期真っ盛りの男の子って感じのプレゼントですね。
ほんと、だっさぁい。
Bさん、あなたに返した方がいいですか?
それとも今ここで壊しますか?
名乗り出たら返します、黙っているのなら壊します。
さぁ、どうしますか。
名乗り出ませんでしたね。じゃあ要らないという事でじゃーん!
わざわざ昨日紗良と一緒に買いに行ったハンマーです!
せーのっ!
ほら原型無くなりましたね。
今、どんな気持ちですか。
最愛の人を亡くし、最愛の人から貰ったものを壊される。
あなたには今、私と同じことを体験して貰ってるんです。
でも彼は紗良のように心身に傷を負っていない。
復讐とまでは言えませんよね。
死ぬべき人間が当然の如く死んだだけ。
そうでしょう、Bさん。
覚えていますか。あれは中学三年生の秋のことです。
紗良が小さな頃にくれた手作りのキーホルダーをあなたはバカにして踏んずけて割りましたよね。
その中にはふたりのツーショットが入っていました。
その写真はあなたの重い体重のせいでぐしゃぐしゃに敗れてしまいました。
さっきは私はそれと同じことをしました。
けれどあなたは私は悪くないと被害者面するのでしょう。
そんなの分かりきっていますよ。
私は紗良が死んだ真相を皆さんに教えたかっただけなので。
あなたが反省しようとしなかろうと私には関係ありません。
これで終わります。
さようなら。