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初めての小説&投稿なのでお手柔らかに。
僕は友人の天馬司に恋をしている。
自覚したのは、確かポテトゴーストのショーを行った時だった。その時期に自覚したのは明らかだが、こういう事がきっかけに、というのは無かった。
ただ、ふと”好き”という感情が脳に降って来た。友愛的にではなく、恋愛的に。
今、こうして2人きりの教室で、学級日誌を真剣に書いている彼を、僕はじっと見守っている。誰かの椅子を借り、司くんの机の向かいに置いて座っている。今日は練習も無いし、特に用事もない。帰っても良いのだが、やはり司くんと帰りたい。だから待つ。ここからだとよく観察がしやすい。今、司くんは唸りながら、「感想・反省」という項目に書く内容を真剣に考えている。こういうのには定型文があるんだよ、と教えたいものだが、真面目な彼に水を差すのは流石に良くないので辞めておいた。もう外の空は黄昏ている。その夕日が司くんの金糸を編んだような金髪に反射し、綺麗な髪が一層輝いている。考えながら持っているシャーペンでふにふにと唇に押し当てている司くんは本当に愛おしい。
「司くんのこと好きだなぁ…やっぱり」
司くんが僕の方を向いた。司くんは面を食らったのか、ぽかんと口を開けた。
僕自身も混乱していた。言うつもりはなかった。心の中で留めていると思っていたものは言葉として発されていた。
司くんの反応的に、Loveの方だと確信しているだろう。なんで変な所で察しが良いんだ。
「…………ええっと……。ごめんね。言うつもりは無かったんだ……」
「…………………本心、という事か?」
司くんはやっと口を動かした。
質問の意図に戸惑いつつも、きちんと答えることを意識した。変に気を遣われたくない為だ。
「……うん。嘘じゃないし、司くんの思っている意味で合っていると思うよ」
「…そうか。オレも類が好きだ」
「……うん」
司くんの言う”好き”はlikeの方だ。僕は今更動揺をする訳でもなかった。
「…類も分かっているように、類の”好き”では無い。すまない。…でも、類を悲しませたくないんだ」
ふと、一つの案が腑に落ちた。
そうだ。僕はここで決めた。
司くんを落とせばいい、と。
「簡単にYesを貰おうとなんて思っていないよ。……司くん。」
「…どうした?」
「こんな格好悪いのじゃない。毎日、君に告白をする」
「…ほう」
「絶対に頷かさせる。覚悟しておいてよ」
「…あぁ、そのくらいでないとな。オレがそう簡単にYes言う奴だと思うなよ?」
「勿論さ。…まあ、長期戦はご理解の上でね?」
「あぁ!…よし、日誌も書き終わったし、帰るか」
いつの間に書いたのだろうか。こういう話している隙に書くのは僕が得意な筈だったけれど、司くんも取得したようだった。そんな事はどうだっていい。明日から本気で頑張ろう。
「うん。帰ろっか」
それから毎日、僕は司くんに告白をした。そんな僕に呆れず、司くんは毎回丁寧にお断りの返事をくれる。
今日は学校の玄関で司くんと会った。いつもより登校時間を早くして、玄関で会えるように調節していた甲斐があった。
「あっ、類!おはよう!」
「あ、おはよう司くん」
司くんはいつも通り元気だ。告白されると分かっているのに話しかけているのか、特に気にしていないのかどちらかは分からないが、とりあえず気まずい関係ではないのがありがたい。今日はそこら辺の壁に司くんを追い詰めた。そして、僕の手を司くんの顔の真横の壁に勢い良く手を押し付けた。俗にいう、壁ドンという行為だ。女性向け雑誌によると、これで相手もイチコロ♡もう結婚できるレベル♪であるらしい。
「わっ……、」
「司くん、好きだよ」
(うわぁ…変人ワンツーだ…関わらないでおこ)
(やっぱりワンツーデキてたの!?尊い)
(他所でやれ)
(ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう)
周りの人達がザワついた。顔を赤くする者、倒れ始める者、写真に収める者、逃げる者…様々だ。そんな事はどうだっていい。毎回この司くんの反応が言葉で言い表せない程可愛いのだ。ピュアな司くんには少々刺激が強いらしい。でも、僕の告白に頷いた事は無い。今日だって、きっとそうだ。
「な、何度も言うが、オレの好きは類と同じではない…すまない」
予想通り、今日もフラれてしまった。僕は諦めない。そういえば、諦めの悪い男は嫌われるよなんて寧々に言われたな。なんでこの事を知っているのかなと疑問に思ったが、司くんが僕のこと嫌うなんて事ありえないから心配は平気さ、と答えておいた。寧々は相当苦い顔をして、長すぎるため息を吐いていた。
また翌日。今日は10分休憩のすれ違い様に、司くんだけに聞こえる声量で好きだと伝えた。その時司くんが、持っていた教科書類をバサバサと落とした。手が滑ったのかな。
※
オレの名前は天翔けるペガ(以下略)、輝きすぎる未来のスター、天馬司だ。そんなオレにも悩みがある。以前、良き友人でありショー仲間の神代類、という人物に好きだと告白を受けた。その時は本当に驚いて、しばらく言葉が出なかった。少し間を置いた後、オレは丁寧に断った。…筈なのだが、類はこれから毎日告白するだなんて事を言い出した。オレを堕とすまで、辞めないらしい。見る目は評価してやる。諦めの悪い男だなと思った。だけど、その志をオレは気に入った。だから受け入れる事にした。類には堕ちない。すまない。……など、つい先日までは思っていた。それは、その出来事のあった次の日、2回目の告白で、オレは類のことが好きなんだと自覚した。特別な演出等があったのかと言われたらそうでも無い。いつも通り、一緒にランチをしていた時に「明日からは彼氏として隣に居ていいかな」なんて事を言われて、顔が一気に熱くなって、心臓がトンデモない速さで動いていた。その時にオレは「好き」とふいに思ってしまった。でも、オレは1回目の告白…いや、それより前から類を好きだったのだと思う。1回目は本当に突然すぎて理解が出来ていなかった。あれは類も言おうと思って言った訳ではないから、もっときちんと言っていたらオレは速攻Yesと答えていただろう。この仮説が間違っているとすれば、オレは2回の告白…実質1回の告白で好きになってしまったということだ。自分で言うのもなんだが、案外オレはちょろいのかと思ってしまった。まあ、相手が類だからな。では、何故類からの告白を毎回断っているか、という話だ。理由は簡単、類の本気はまだだからだ。類は何気ない日常を過ごしている時、突然に告白をする。それなのに、いきなりYesを言ったらなんかその…動揺するだろう。きっと類も「え、今の告白でOKくれたの??」となるだろう。多分。だから、そのうち類は本気を出すだろう。最高の演出で。それまで、オレは断り続ける。たまに心臓が持たない時もあるが…。
「ねぇ司くん?さっきから百面相してるだけど…大丈夫?」
「うわっ、そんな顔に出てたか?」
言い忘れていたが、今は練習が終わって更衣室で服を着替え終わったところだ。…って、オレはさっきから誰に説明しているんだ。いや、誰かに見られている気がするから一応言っておくかというスター精神だ。素晴らしいだろう?
「うん。…司くんに渡したいものがあるんだ…、はい」
「おぉ…!」
そう言って渡されたのは薔薇色の一本の花。流石に類ほど詳しくはないので品種はわからない。
「それはペチュニアだよ。赤色のペチュニア」
「ペチュニア….。初めて聞いたな」
「ねぇ司くん、好きだよ。僕、諦めないよ」
そこで、コンコンとノックがなった。同時に、「遅い。置いてくから、また明日ね」と寧々の声が聞こえた。それに類が返事をする。
「………ありがとう。花、綺麗だ」
「……僕たちも、帰ろっか」
コクリと頷き、いつものように並んで帰宅する。次回のショーについての話をしていたら、あっという間に類と離れてしまう地点に着いてしまった。
「あ、じゃあまたな。この花、とても気に入ったぞ!自室に飾るとしよう」
「…フフ、本当かい?ありがとう。またね」
類が嬉しそうにする。そうだろう。好きな子にあげて嬉しそうにしてくれたら、こっちも嬉しいに決まっている。手を振って来たので、こちらも手を振り返す。
家に帰り、寝る前に赤色のペチュニアの花言葉について調べてみた。類は意外とロマンチストなところがあるから一応、だ。検索エンジンに「赤色のペチュニア 花言葉」と入れた。1番最初に引っかかったものを見てみる。
「…えーっと?『赤色のペチュニアの花言葉は”決して諦めない”…この花を贈ると、”あなたのことを決して諦めない”という意味になる』……か。」
思わず顔がニヤけてしまう。オレのように、ネットや本で調べただろう。「諦めない 花言葉」と。オレのために贈ってくれた。
好きにならないほうが、おかしいだろう。
やはり顔面か?類の顔はオレに負けないくらい…いや、オレの次に!カッコいい。同性のオレでも至近距離で見たら照れてしまうほどだ。前、壁ドンをされた時には鼻がくっついてしまいそうな程に顔が近くにあった。本当にあの時は泣くかと思った。顔が良すぎて。オレは面食いなのだろうか。それはいいとして、それで顔を赤くしていたら「僕なんか相手に照れてるなんて可愛い人だね」なんて言われてしまった。罪な男ってこういう奴のことを言うんだと思った。あ、そう。声が好きだ。類から出る低いテノールが響くのが好きだ。優しくて、包み込まれる感じ。あとは…そうだな。笑った顔が好きだ。出会った頃は作り笑い…というか本心から笑っていにいような、どこかつまらなそうな顔を浮かべていた。でも今は心から笑ってくれていることが分かる。ショーが終わった後にオレを見て、へにゃっと笑う顔が好きだ。照れ隠しでいつもすぐ観客の方に視線を逸らしてしまう。…ってなんで類の好きなところ紹介みたいなことしてるんだ、オレ。
「お兄ちゃん?顔赤いけど…どこか具合悪い?」
「ウワァアアアアア!?!?」
「うわっ!?もーお兄ちゃん、もう少し音量抑えてー?」
「す、すまない……」
後ろに咲希が居たみたいだ。オレの大きな独り言(担任曰く)が聞こえてしまったか…?
「その調子なら体調は大丈夫そうだけど…あたしはもう寝るよ?」
「あ、あぁ…暖かくして寝るんだぞ!」
「はーい」
セーフ。バレていない。時計を見ると短針が12の方角に示してあった。今日は寝よう。自室に戻って、帰って来た時に飾ったペチュニアが目に入る。”決して諦めない”……か。なんだが今日は類のことがより一層好きになってしまった。
今日はいつも通り屋上でランチを取っている。まだ類から告白してをもらっていない。多分今日は練習中にする気なのだろう。
弁当を食べ終わり、類の方をチラリと見ると既に類は食べ終わっていて機械いじりを始めいた。まあ菓子パン1つでは無理もないか。類は機械いじりを始めると集中して、しばらく話しかけても反応がないので、こんな時は隣で待機だ。退屈だと思われそうだが、オレはそうでもない。類のことをよく観察できるからだ。
やっぱり、類は顔が良い。野菜もろくに取らず、徹夜続きなのになぜこんなに肌が綺麗なのだろう。きめ細やかだ。それに、イエローダイヤモンドの瞳。その瞳に自分の顔が映ると、類に溶けたみたいで好きだ。
「……はあ、類…好きだぞ」
どうせ聞こえてない。一回は口に出して言ってみたかったのだ。優越感に浸る。
「司くん今の」
ガシッと類に肩を掴まれる。結構な力で。類の側を見るとニワトリのロボットがいつの間にか出来上がっていた。
「……へ?聞こえ、て…たのか…?」
「………うん。聞かない方が良かったかな……。………、」
終わった。オレの計画には無いぞこんなの。なんで調子に乗って声に出したんだ。アホかオレは。
「えーっと……だな…。」
死なば諸共だ。ええい!!!
首に手を回しギュッと目を瞑って、類と唇を重ねた。すぐに離すと、ちゅっとリップ音が鳴った。恥ずかしい。目を開けると、あの類がすごく真っ赤だ。あの、あの類だぞ!?
「…昨日、返事をしなかっただろう。これが、返事…だ……から……その………」
腹から声を出せ、オレ。最後の方なんて絶対類に聞こえていないぞ。
「そ、れって……僕と付き合ってくれる、ってこと、ですか…?」
「いいいい言わせるな…!!あ、たり前…だ」
「……司くん…!……次、僕からしていいかな」
「、あぁ」
何もかもがうまくいっている気がする。これで、良かったのかもしれない。
オレが目を瞑ると、類の吐息が肌に触れた。ドキドキと心臓が高鳴る。唇が重なる───と思うと、頬に柔らかい感触が落ちて来た。
「ッッ!!?!?」
「フフ、そんなに口にして欲しかったのかい?」
「は…ッッ!?」
やられた。からかうのは程々にしろ、という言葉も出ない。満更でも無いからだ。本当、羞恥心で心臓が破裂してしまいそうだ。口をパクパクしていると、類がくすっと吹き出した。面白く無いぞオレは。
「……でも、なんでいきなり…。司くんそんなに花が好きだったのかい?」
う…。だから返事をしづらかったのにこっちの気も知らず…。前からオレはお前のことが好きだったというのに。
「……………類から貰ったからだ」
「…オレ、は前から…好きだった。けど、自覚したのがつい最近だったんだ…。だから、告白をOKするのもなんかいきなりだとその…。とととにかく、、じゃなくて…その、花言葉とか調べたら一層類のことが好きになってしまって……。今日はつい、言いたくなってしまったというか………」
類がポカンと口を開ける。そんなにおかしいか。
「…え?……司くんって罪だよね。可愛い」
「…罪なのはお前だぞ!?それと可愛いではなくカッコいいだ」
「…それ本気で言ってるの?」
「ああ」
「………まあいいや。今度はキキョウを贈るね」
「…”永遠の愛”……だろう?花言葉」
「…!」
「昨日調べたんだ。類にいつか贈ろうと思って……。永遠の愛を誓うだなんてキザっぽいだろうか……。」
「……調べてくれてたんだ…。フフ、さては相当僕のことが好きなんだ?僕も離す気ないから」
「すすすす好きに決まっているだろう!お前の告白に何度もドキドキしていたぞ!多分お前のせいでオレは早死する!」
「……………、」
類が固まってしまった。
「……はぁ〜〜〜〜……」
「おい、オレの前でため息なんぞ吐くんじゃない」
「知ってるかい?ため息は健康に良いって話」
「話を逸らすな!あとお前健康に気を使うなら野菜を!野菜を食べろ!」
「フフ、司くん。改めてよろしくね」
「笑って流すな……。……類、こちらこそよろしくな…」