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『忘れてまった君へ』

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『忘れてまった君へ』

22 - 第22話  『帰り道、夕暮れの影の中で』

♥

27

2025年06月12日

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遊園地を出る頃には、空が茜色に染まっていた。


風が少し冷たくなってきていて、

賑やかだった一日が、嘘みたいに静かに終わっていこうとしていた。


最寄りの駅までの道を、二人は並んで歩いていた。

ずっと歩いてるのに、話すことはもうあんまりなかった。


けど、沈黙が気まずいわけじゃない。


今日は、そういう日だった。


ロボロが、ふと立ち止まった。

見上げると、電線越しに月が出ていた。


「なぁ、ゾム」


「ん?」


「今日のこと……たぶん忘れへんと思う」


ゾムは驚いたようにロボロの顔を見た。

でもすぐに、どこか優しい笑みを返す。


「そっか。それ、めっちゃ嬉しいわ」


「なんか……ぜんぶ思い出せたわけちゃうけど、今日歩いてる時、ずっと変な感じしてて。懐かしいのに理由がなくて、でも……嬉しかってん。ずっと」


「……」


「俺な、自分の“楽しい”が、今日ほんまに“楽しかった”んやって、確かめられた気がする」


ゾムはなにも言わなかった。

ただ「うん」とだけ頷いて、少しだけ顔を背けた。


その横顔は、夕焼けに照らされてほんの少し滲んで見えた。


駅に着いて、改札前。

いつもなら「またなー」って手を振って終わるはずだったのに、


その日は、別れ際にロボロがポツリとつぶやいた。


「……ありがとう、誘ってくれて」


それだけ。

でもゾムは、それがただの礼やないことに気づいてた。


ほんの少し、何かが戻ってきてる。


名前も、記憶も、言葉にもまだならん感情も。

全部、静かに…ゆっくりと。


『忘れてまった君へ』

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