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思い詰めた表情のフレデリックとリディアに声をかけたアーサーは、首を傾げる。
出迎えのため、アーサーの邸を訪れその帰りを待っていたフレデリックとリディア。
フレデリックは、アーサーと一緒に離縁書を提出しようと決意していた。
リディアを見ると強引に連れ去ってしまいそうになるのを危惧して、決して目を合わせず無言を貫いていた。
リディアは、泣き腫らし腫れた瞼を隠すようにベール付きの帽子を被っていた。
自分の気持ちを伝えようと試みても、フレデリックには時間を作ってもらえなかった。
時間が迫ってきたのもあり、震えながら署名をした。
ここへ来る道中も馬車内でも、口を聞いてもくれなかった。
もう、こうなったら、離縁書を奪って破ってしまおう。
リディアは、どのポケットにあるのだろうかとちらちらとフレデリックを観察するも、特定できないでいた。
とにかく、まずは、アーサーに……。
「アーサー……え⁉︎」
「すまないアーサー‼︎ もう少しだけ、もう少しだけ時間をくれ! 私自身の気持ちと決着をつけてくる!」
「って、おーい、どこ行くんだよ」
リディアがアーサーの名前を口に出した瞬間、フレデリックの理性の糸はプツリと切れてしまった。
だめだ、だめだ、だめだ
渡したくない!
フレデリックはリディアの腕を掴むと、急いで馬車へと連れ込む。
御者へ合図を出し、カーテンを閉めると、リディアを囲いこむように両腕を壁につく。
隣り合わせで座って居るため、リディアは逃げることもできない。
「フレディ? どうしたの?」
戸惑いながらリディアが口を開くと、フレデリックはその唇に覆い被さっていた。
「んん⁉︎」
ずっと触れて欲しいと思っていたリディアは、困惑しながらもフレデリックに身を委ねる。
どうしたらいいのか分からなくて、強請るようにそっと目を閉じる。
「だめだろ……いいのか……私はなんてことを……」
時々意味不明な呟きを漏らすフレデリックだったが、リディアを抱きしめて苦しそうな声を発する。
「リディア……行かないでくれ! 私を選んでくれ!好きなんだ……君の気持ちを大切にしたいが……奪ってでも私のものにしたい! 非道な私を受け入れてくれないか……嫌なら本気で抵抗してくれ…悪いが、もうこれ以上は限界だ」
フレデリックの瞳には乱れたリディアが映っていた。自身の姿が彼の瞳の中にいることが嬉しい。
「私も、好き。ずっと……好き……フレディ」
思いがけないフレデリックの告白に、嬉しさのあまりリディアの頬にはひとすじの涙がつたっていた。
その涙に吸い付くようにフレデリックは頬にもくちづけていく。
「それは……アーサーよりも……?」
フレデリックの吐息が荒々しく獣のようになっていた。妖艶な眼差しでリディアに問いかける。その返答次第では、何かされてしまうのではにかと不安になるような雰囲気だった。
「ずっと、誤解してるわ、アーサーのことは、友人としか思っていないの。あの時も……本当は……フレディ、あなたに告白しようとしたの!」
そこから、どうなったのか記憶があやふやだ。
誤解も解けたこともあり、その夜リディアは張り切る侍女によって、念入りに準備を施されて夫婦の寝室へと向かった。
翌朝、フレデリックは自身の腕枕で眠るリディアの寝顔を見て、長年の夢が叶ったことを実感する。