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in有明
朝イチ。まだ訓練を始める前、いつも通りファスナーを開け少し大きめの服を着た保科は数枚の資料を持ち有明第1部隊の廊下を歩いていた。
いつも通り廊下を歩いてるはずだがいつもの保科とは違う。
何回来たことか。いつも通りの廊下、元気な隊員達。いつも通りに来ていつも通り資料を渡すはず。でも今回は渡す相手に問題があった。
目的の場所に近づいていくたび、保科の心臓の音はどんどんうるさくなっていった。
(いつも通り。普通に話して帰るだけや、)
コンコンコン
重い扉から鳴る静かで落ち着いた乾いたような軽い音。
「鳴海隊長」
「失礼します」
重い扉を開ける
が、
その中は暗くチカチカと光が舞っているだけ。
大きな音と明るい光。散らかった部屋にゴミの山。誰がどう見てもクソニートの部屋
そんな部屋の中心で布団に入ってゲームを操作してる人物
「…あの~、…鳴海隊長、??」
「よォォオオォォしッ、!!!!!」
「きたッ!!きたッ!!!プラチナラぁああぁあッ!!!!!!」
「…鳴海隊長〜、」
「なんだうるさいな!!ボクは今だいじなッ…」
「あ、やっと気づきました?どーも」
「…帰れ。資料ならいらん」
「やー、バレました???」
「それ以外にここに来ることないだろお前」
「強いて言えば鳴海隊長に無理矢理ゲームの相手として連れ込まれるぐらいやなあ、」
「は???!!!ボクはそんな事しないが???」
「いや実際されてんねん、」
「まあ、ええです」
「これ資料。サインしてくれればいいです」
「ペン」
「ありますよ〜」
「ん」
静かな部屋
ペンが走る音と画面の音
そして心臓の鼓動音。
平然と話している保科だが脳内と心臓の音は平然ではない。
(あかん、やっぱかっこええなあ、)
(もっと近づいたい、…けどこの人はなんも思っとらんのやろなあ、)
「はぁー、」
しゃがんだまま軽くて短いため息。
「…珍しいな」
珍しくため息をする保科を見てペンの動きが止まる。
「え」
「…お前がため息なんか珍しいな。ワーカホリックにも疲れが感じる時があるのか」
「僕のことバカにしてます今???」
「常にボクをバカにしてるお前には言われたくない」
「そんなつもり無いんやけどなあ〜、」
「嘘言うなこのおかっぱが」
「ははっ笑」
保科は小さく笑い鳴海に微笑んでいる。
鳴海は小さく息を吐き、またペンを動かす。
そして書き終わった資料とペンを保科に渡す
「ん、おおきに〜」
「…で」
「で??、」
「なんのため息だよ」
わあ、と微笑む保科。数分前に起きたことだが、普段人の行動にあまり興味が無い鳴海が自分の行動を少し気にしてるようでびっくりする
「で??って、…別になんにもあらへんですけど、」
「……」
無言のまま保科を見る。その目はやけに真剣でいつもとは違った
そんないつもとの違いに顔が熱くなる気がする。
「……ん〜、…まぁ、強いていえば悩み事ですかね」
「悩みとかあるんだな」
「僕のこと人間とちゃう生き物やと思ってます???」
「怪獣なら殺してた」
「わぁ日本一の最強さんに殺されるなんて僕光栄ですね」
(鳴海隊長になら、、僕がもし怪獣やったとしてもええかもなあ、)
なんて浅はかな考えを少し思いながらそんなことを言ってしまった。別に深い意味はない。少しだけ自分の空想と鳴海への茶化しを混ぜて言っただけ
でも今日この男は違かった
なぜ
「それはボクだからいいって事か??」
「は、?、」
(あれ、)
当然だろ とか バカにしてるのか?? とかが帰ってくるかと思った。
ボクだからいいって事とは??????
その瞬間保科の顔が薄暗闇でも分かるぐらい赤くなっていた。きっとつけっぱなしのゲーム画面の光で自分の顔は向こうから見えることだろう。
頭の中真っ白。少しでも力を緩めてしまったらきっと持っている資料とペンは自分の手から滑り落ちてしまうだろう。
たった3秒ほど。鳴海と目が合う
たった3秒ほどでも体感時間はもっとずっと長く感じた。
それでも仕事中慌てて手に力を入れた。
手の中の紙がくしゃっと音を鳴らすのが聞こえた。
「ぁっ、…僕…もう時間なんで行きますね??」
「サインありがとうございます。ほなまた~」
慌てたように立ち上がり失礼しましたと一言。短い時間だが台風のようにいろいろ騒がしかった気がした。
「……」
部屋にぽつんと残された鳴海。
相変わらずゲーム画面はチカチカし、BGMが後ろで流れている
「…まさか、……な」
うーんと少し頭をひねらせたがもちろんゲームの時間は無駄にできまいとまたゲームに戻った鳴海。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(っ〜〜あかん、あっぶなぃ、)
どくどくばくばく心臓がうるさい
無意識と早歩きになって廊下を歩いてる
(ボクだからいいってことか??って、……)
(っ……ぃ、意識してまうほんまに、)
さっきの言葉がぐるぐる回る
いくら冷静な保科でもやはり惚れ込んでる人の言葉にはパニックになってしまう
(いや、…あの人のことや、……きっと何も考えとらんのや、…あかん、真に受けちゃあかんで、…)
自分に言い聞かせる。
静かで落ち着いた廊下
こつこつと自分の靴の音。それに負けないぐらいばくばく暴れている心臓の鼓動音。
まだ顔は火照っている。赤く染まる頬で廊下を早歩きして外へと目指す
ねくすと70heart
語彙力足りなすぎてやばい💧💧
コメント
5件
え、天才すぎませんか!?✨ 小説だから背景の画像(?)ないのに、描かれてる場所の様子がまるで映像を見てるようにわかるっていうか…表現力凄すぎます!!😖🫶🏻🫶🏻 保科さんあまりにも可愛すぎますね…!!🫶🏻🫶🏻🫶🏻 ちょっと期待しちゃいそう(?)な鳴海さんも可愛すぎます…!!🫶🏻🫶🏻🫶🏻 そしてやっぱり鳴保の素晴らしさをここまで文章化できるK氏サマ天才すぎます!✨ 語彙力ほんとに凄すぎます!👍🏻
神、ありがとうございます!
最高です。 ありがとうございます