コックピットに再び戻り宇宙地図を計器パネルにセットしなおすと、新たに収集したデータが中央コンピューターに繋がった。磁力線、重力・空間の歪み、エネルギーベクトル、光分布などが再処理され、あちこちで数字が忙しく動きまわっている。
画面がようやく落ち着きをみせると、郷田は地図の縮小ボタンを押した。ところが、いくら長押ししても希望のアポロンが現われることは、ついになかった。彼はボタンの上から指を離さないが、それ以上に地図が濃縮されることはない。
代わりに、新しい事実が浮かび上がってきた。この辺りの星は、やはり直線軌道を取っているわけではなかった。この船に積まれている地球製の地図装置では、単に歪曲が見えるだけ大きな宇宙を拿捕できていないだけのことだったのだ。精密な計測でもわずかなたわみにすらならないが、軌道は超巨大な曲線の一部であることが、明らかになった。しかもその線は、理論上この三次元宇宙で最も大きな円とされている、つまりはあの「大公転軌道」……この大宇宙を取り囲むほどに大きいと仮定される円……とぴったり一致したのだった。