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庵野
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#御本人様とは一切関係ありません
コメント
2件
うわあ…16話、めっちゃ重くて綺麗な回だった😭💔 霧矢の生い立ちパート、淡々と語ってるのに一つひとつが刺さりすぎて泣きそうになったよ…「そのままでいい」って言われただけで合六さんに忠誠誓っちゃうの、切なすぎる…。 冬橋さんの「次に会う時、♡♡♡のか助けるのか決めろ」もグッときた。雨の描写とリンクしてて、余韻がすごい…次の展開が待ち遠しいよ😢✨
ホテル襲撃から三日後。
雨だった。
闇バイトの運営をしている事務所があるビルの屋上で、 鈴木はフェンスにもたれて煙草を見ていた。
火はつけていない。
ただ指に挟んでいるだけ。
遠くで雷が鳴る。
扉が開く音がした。
「タバコ嫌いなんスか?」
霧矢だった。
鈴木は振り返らない。
「吸わねぇよ」
「なら持つ意味あるのぉ?」
「落ち着く気がする」
霧矢は「あは」と笑った。
よく見るとコンビニ袋をぶら下げている。
霧矢は缶コーヒーを一本投げてよこした。
「っちょまっ!」
間一髪で受け取る。
「……何」
「差し入れ」
霧矢は隣へ来た。
雨を避ける気もなく、フェンスへ背中を預ける。
鈴木はぽつりと聞いた。
「お前、怖くねぇの」
「何が?」
「死ぬの」
「相変わらず急だねぇ」
「えぇ…怖くないかぁ?」
霧矢は少し考える。
それから。
「よくわかんない」
笑いながら言った。
「多分、最初からどっかオカシイから。オレ」
鈴木は眉を寄せる。
霧矢は雨空を見上げた。
「普通の人ってさ、死ぬの嫌なんでしょ?」
「……まぁ」
「痛いのも嫌なんだよね」
「普通はな」
霧矢は少し笑う。
「不便そう」
その言い方に、鈴木は思わず吹き出した。
「お前ほんと人間味ねぇな」
「よく言われる」
霧矢の口調は変わらない。
傷ついた顔もしない。
まるで、“そういう設定”を言われているみたいに受け止める。
鈴木は缶を開けた。
雨音が耳に嫌なぐらい入ってくる。
「……お前、なんでそんなになったんだよ」
霧矢が少し黙る。
珍しく。
すぐには答えなかった。
「生まれつき」
短い声。
「小さい頃から、なんもわかんなかった」
鈴木は黙って聞く。
霧矢は続けた。
「若くして死んじゃったクラスメイトの葬式に出席して、周り中ボロボロ泣いてるのに泣けなかった。でも身体中から冷や汗が出たなぁ」
「……」
「親に殴られても、別に痛くないし」
「捨てられて、家もなくて、ネオンのあるとこを彷徨ってたら女の子と間違えられちゃって…おじさんにホテル連れてかれたこともあったなぁ」
「そのおじさん男もいける人で、その時はどうでもよくてそのままヤられたんだけど…あのときは気持ち悪かったなぁ」
「そのときにお金貰っちゃってさ。結構大金」
「そんなことしながらダラダラ生きてたらたまたま親とバッタリ会っちゃって。その時めちゃくちゃ気味悪がられたなぁ」
「あっ!そういえばぁ…
ぶつぶつとひとりごとを言い始めた。
コイツはこうなるとしばらく止まらない。
もうちょっとこのままにさせよう。
そう思って霧矢のひとりごとに耳を傾ける。
軽い口調。
なのに。
内容がとにかく重い。
「〜〜ってな感じで…」
話がそろそろ終わりそう。
雨が金髪を濡らしていく。
霧矢は笑った。
「最終的に施設」
「ほぼ野良犬みたいな扱いだったなぁ」
鈴木の指が止まる。
「もちろん施設でも浮いてたよ」
「……」
「周りが苦しいとか悲しいとか言ってる意味、全然わかんなかったし」
霧矢はフェンスへ頭を預ける。
「だから観察してた」
「観察?」
「うん」
少しだけ目を細める。
「普通の人って、どうやって笑うんだろって」
鈴木は言葉を失う。
霧矢は続けた。
「でも結局わかんなかった」
静かな声。
「だから施設からも追い出された」
「協調性がないって。気持ち悪いってさ」
雨が強くなる。
霧矢は気にしない。
「で、合六サンに拾われた」
その名前が出た瞬間。
空気が少し冷えた気がした。
鈴木は低く聞く。
「……嬉しかったの?拾われて」
霧矢は即答した。
「うん」
迷いのない声。
「初めて、“そのままでいい”って言われたから」
鈴木は黙る。
霧矢は笑った。
「変わろうとしなくていいって」
その笑顔が無邪気で。
子供っぽかった。
「だから合六サン好き」
静かな忠誠。
鈴木はふと思う。
この男は。
多分、誰かを“好き”になる感覚も普通とは違う。
理解じゃなく。
承認。
存在を否定されなかったこと。
それだけでその人のことを信用しきっている。
「で、組織入って」
霧矢は続ける。
「殺しとか色々覚えた」
「……平気だったのか」
「うん」
即答。
「だって別に、ダメって感覚ないし」
鈴木は寒気がした。
霧矢は笑う。
「でも冬橋サンは、ちょっと違った」
「……」
「面白いんだよね、あの人」
雨音の中。
霧矢は少し目を細める。
「あんな汚い世界いるのに、人助け辞めないからさ」
鈴木は思い出す。
カレーを配る冬橋。
子供たちに囲まれて笑う顔。
「理解できない?」
「全然」
霧矢は笑った。
「でも、だから見てたい」
その時だった。
屋上の扉が開く。
冬橋だった。
いつもの黒いパーカー。
眠そうな顔。
「……お前ら風邪ひくぞ」
霧矢が笑う。
「冬橋サン過保護〜」
「うるせぇ」
冬橋は鈴木を見る。
「顔マシになったな」
「別に」
冬橋はフェンスへ寄りかかった。
三人で雨を見る。
しばらく誰も喋らなかった。
やがて。
冬橋がぽつりと言う。
「ルージュが近いうちに動き出すそうだ」
鈴木の表情が変わる。
冬橋は続けた。
「敵対組織と繋がってる可能性がある」
「……」
「合六も探ってる」
霧矢の笑顔が少し薄れる。
「珍しいッスね。合六サンが直々に」
「デカい案件なんだろ」
鈴木は低く聞く。
「……ルージュとまた会える?」
鈴木の表情が変わる。
「また会える。」
冬橋はそう言った。
「でも。」
「次に会う時。 殺すのか、 助けるのか、 憎み続けるのか。」
「それだけは、お前が決めろ。」
鈴木は答えない。
雨を見る。
ルー。
凛子。
霧矢。
全部が頭の中で混ざる。
全員がそれぞれの生き方をしていて、何かの正解のために動いていた。
それを知った今、僕はどうすればよいのだろうか。
考えている鈴木のその横で。
霧矢も雨を見ていた。
ぽつり、と笑う。
「……普通って。」
誰にも聞こえないくらい小さく呟く。
「最後まで、分かんないな。」
冬橋だけが、その声を聞いていた。
何もない。
ただ、小さく息を吐いた。
雨はやまなかった。
まるで、誰の心もまだ晴れることはないと知っていたみたいに。