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第八章 外交
《2025年5月24日》
国連では、水晶内に存在する国家『アスガルド王国』の扱いについて協議していた。
だが結果は散々なもので『水晶内の人権の回復』を掲げていた国連が…《水晶内国家に対しては、国家とは認めない》との判断を下した。
これにより、ナシルはいつ自国へ火矢が放たれるか分からない立場となった
《2025年7月10日》
この日を境に、ナシルを取り巻く情勢は大きく動き始める。
国連による水晶内国家に関する採択から約1か月半。世界は外交から軍事的圧力へと舵を切った。
まず動いたのはアメリカだった。
ルイジアナ州バークスデール空軍基地所属の第2爆撃航空団から飛び立った2機のB-52H戦略爆撃機は、ナシルの防空識別圏に侵入した。
ナシル防空軍は直ちに戦闘機をスクランブル発進させ、両機を監視下に置く。だが爆撃機は一定時間飛行したのち、何事もなかったかのように反転して去っていった。
これはナシルに対する、「我々はいつでも攻撃できる」という無言の意思表示だと受け止められた。
この示威飛行は2日に1回という異例の高頻度で続けられた。
続いて動いたのはイギリスだった
イギリスは
ロイヤル・ネイビー大西洋艦隊をナシルの排他的経済水域ギリギリの公海上へ展開し演習を実施した。だがナシル駆逐艦4隻が演習海域を監視し、両艦隊は互いが見える範囲で睨み合いを続けていた。
そしてロシアも圧力に加わった
遠距離航空コマンドに所属するTU-95戦略爆撃機4機が、ナシルの防空識別圏に侵入した
ナシル空軍は直ちに迎撃機を発進させ、編隊を追尾した。両軍機は一定の距離を保ったまま飛行を続け、やがてTu-95は針路を変えて帰投した。ロシアもまた、ナシルへの圧力を強めていた。
行動を起こした米、英、露とは対照的に、日、独、中、印(インド)、伯(ブラジル)は目立った行動を起こせなかった…いや、起こさなかった
まず、日本、中国、インドは地理的に距離が遠いため即時の軍事行動は起こせなかった、ブラジルは今後とも静観を貫く方針を決定、ドイツは、ナシルと進行中の計画を、止めたくなかったため行動を控えた
《2025年7月20日》
この日、ナシル連邦政府は2枚の写真と共に声明を発表した。
公開された写真の一枚目には、ナシル空軍のFG.1戦闘機とアメリカ空軍のB-52H戦略爆撃機が、一定の距離を保ちながら飛行する姿が映されていた。
二枚目には、ロシア空軍のTu-95戦略爆撃機とナシル空軍のFG.1が並ぶように飛行する姿が収められていた。
それらの写真が意味するものは明白だった。
ナシルは、米露双方の軍用機を常に監視下に置いていた。
そして声明文には、こう記されていた。
「我々は、各国との対話による解決を望んでいる」
「しかし、我が国の防空識別圏内において、1時間を超える継続的な示威飛行が行われた場合、ナシル連邦は国家防衛のため、必要な措置を取る権利を有する」
そう…ナシルの公式SNSアカウントに明記されていた
コメント
1件
読み終えました。このエピソード、緊迫感がひしひしと伝わってきましたね。国連の判断から米英露の軍事圧力、そしてナシル側の冷静な対応——まるで本当の国際政治ドキュメンタリーを見ているようでした。特に、ナシルが2枚の写真で「常に監視下に置いている」と暗に示しつつ、対話の姿勢を崩さない声明を出すところが印象的でした。力と外交の間で絶妙なバランスを取るナシルの立場に、続きが気になります。