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「天内!!」
悟が講義堂のドアを開け放つ。
「なっ…なな…」
「えーーーーー!?」
「ん?」
講義堂中の注目を集める悟。
「何、理子、彼氏!?」
「違っ…いとこ!!いとこだよ!!」
「高校生!?背ェ高!!」
『悟ー。何してんのー。遅いよー』
「きゃーーーー!!」
「綺麗なお姉さん!!」
芹那が更に注目を集める。
「おにーさん、おねーさん、グラサン取ってよ!!」
私と悟はサングラスを取る。
「イケメンじゃん!!」
「めっちゃ美人!!」
「おい、調子乗んなよ!!」
「コラ!!みなさん静粛に!!はしたないですよ!!」
担当の教師だろうか。生徒達を鎮めようとする。
「先生だって気になるくせに」
「困りますよ。身内とは言え勝手に入られては」
『あーいや、緊急だったもんで』
「すんませんね」
「あとこれ私のtel番」
悟に電話番号のメモを渡す教師。
「おぉーい!!条例違反!!」
「るせー!!教職の出会いの無さ舐めんじゃないわよ!!」
「それは私達だって同じでしょ!?教師が年下趣味とか見損なったわ!!」
「はあ!?光源氏ディスってんの!?」
教師と生徒が言い合っている。
「賑やかな学校だな」
悟が天内を持つ。
「馬鹿者!!あれ程みんなの前に顔を出すなと」
『呪詛師襲来。後は察しな』
「!」
「このまま高専行くぞ。」
『友達が巻き込まれんのは嫌だろ』
「…」
『天内の首に3000万の懸賞金?』
《ああ。呪詛師御用達の闇サイトで期限付き、明後日の午前11時頃だそうだ》
「成程ね」
私と傑の電話を聞いていた悟。
「ったく、呪術師は年中人手不足だってのに、転職するなら歓迎するよオッサン」
「2、3、4人…みんな同じ背格好じゃ。式神か?」
「いやぁ、職安も楽じゃねえだろ。そのガキ譲ってくれたらそれでいい」
呪詛師はそう言いながら数を増やす。
「増えた!!5人じゃ!!」
「どこがいいんだよ。こんなガキ」
悟は無下限を捻り上げる。
「あ゛!?」
「芹那は天内頼んだ」
『私も戦いたいのに…』
「式神が消えん!!どれが本体じゃ!!」
「式神じゃねえ、分身だ」
分身が私達に殴りかかってくる。
ビタビタ
拳は無限に阻まれる。
「んだこれ!!」
「無限。アキレスと亀だよ」
「ああ!?」
『勉強は大事って話』
ボグッ
私は分身の顔を殴る。
『本体含めMAX5体の分身術式。どれが本体か常に自由に選択できんだろ?本体が危うくなったら安全な分身を本体にする。いい術式持ってんじゃん』
「何故俺の術式を知っている」
『お生憎様、目がいいもんで』
「俺らの術式はさ、収束する無限級数みたいなもんで俺に近付く物はどんどん遅くなって結局俺に辿り着くことはなくなんの」
悟はサングラスを無限で浮かせる。
「それを強化すると“無下限”…“負の自然数”ってとこかな。“−1個のりんご”みたいな虚構が生まれるんだ。そうするとさっきみたいな吸い込む反応が作れる。でも意外と不便なんだよね。あまり大きな反応は自分の近くには作れないし、指向性にまで気を遣い出すと呪力操作がまー面倒で、要は超疲れんの。でもこれは全部、順転の術式の話。こっちは無限の発散。術式反転、赫」
………何も起きない。
「………?、??」
「ふっ」
『あー…』
「失敗!!」
悟はアッパーを繰り出す。
「なんか出来そうって思ったんだけどなあ」
『出来てねーじゃん』
「俺より苦手なくせに!生意気言うな!!」
『いや、誤差だし』
ゔーゔー
「黒井からじゃ」
天内の携帯が鳴る。
「どっ、どうしよう黒井が…!!黒井が!!」
そこには黒井が拉致られた写真があった。
「すまない。私のミスだ。敵側にとっての黒井さんの価値を見誤っていた」
「そうか?ミスって程のミスでもねーだろ」
「相手は次、人質交換的な出方をするかもしれない。天内と黒井さんのトレードとか。天内を殺さないと黒井さんを殺すとか」
『でも交渉の主導権は天内のいるこっち。取引の場さえ設けられれば後は私達でどうにでもなる』
「天内はこのまま高専に連れて行く。硝子あたりに影武者やらせりゃいいだろ」
「ま、待て!!取引には妾も行くぞ!!」
「ああ?」
「まだお前らは信用出来ん!!」
『このガキ、この期に及んでまだ─────』
「助けられたとしても!!同化までに黒井が戻って来なかったら?まだ、お別れも言ってないのに…!?」
泣きそうにスカートを握り締める天内。
「「…」」
『その内、拉致犯から連絡が来る。もしあっちの頭が予想より回って天内を連れて行くことで黒井さんの生存率が下がるようならやっぱお前は置いて行く』
「分かった。それでいい」
『逆に言えば途中でビビって帰りたくなってもシカトするからな。覚悟しとけ』