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耀聖(ようせい)
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雨朱
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第1話『君だけ見てればいい』
高校へ入学して半年。
教室の窓から差し込む夕日が、机を赤く染めていた。
「白崎、一緒に帰ろ。」
いつもの声。
振り返ると、黒瀬奏が穏やかに笑っていた。
整った黒髪に、どこか眠たそうな瞳。
女子からも男子からも人気者なのに、なぜかいつも俺の隣にいる。
「……うん。」
荷物をまとめると、奏は自然に俺の鞄を持った。
「重いから。」
「自分で持てるよ。」
「いいの。」
そう言って笑う。
その笑顔は優しい。
……少しだけ、優しすぎる。
校門を出ると、奏は俺の歩幅に合わせて歩く。
コンビニに寄れば、俺が欲しいと言う前に飲み物を買ってくれる。
雨が降れば、自分が濡れてでも傘を俺に寄せる。
「そこまでしなくても。」
そう言っても、
「澪のためなら平気。」
その一言で終わってしまう。
正直、悪い気はしなかった。
家族以外で、こんなに自分を気にかけてくれる人なんて初めてだったから。
翌日。
昼休み。
珍しく隣のクラスの男子が話しかけてきた。
「白崎って図書委員だよね?」
「う、うん。」
「この本返したいんだけどさ。」
普通の会話。
たったそれだけ。
だけど、その瞬間。
教室の後ろに立っていた奏と目が合った。
笑っている。
……なのに、目だけ笑っていない。
放課後。
「帰ろ。」
声はいつも通りだった。
でも空気が重い。
帰り道、奏は急に立ち止まった。
「今日さ。」
「え?」
「あの人、誰 ?」
「ああ……図書委員のこと聞かれただけ。」
「ふーん。」
沈黙。
風だけが吹き抜ける。
「楽しそうだったね。」
「そんなことないよ。」
「笑ってた。」
「普通に話してただけ。」
その瞬間。
奏が俺の腕を掴んだ。
少しだけ痛い。
「澪。」
低い声。
「俺以外と、あんまり話さないで。」
「え……?」
「嫌なんだ。」
「でも……」
「お願い。」
そう言って笑う。
優しい笑顔。
なのに、指先だけが少し震えていた。
「俺だけ見て。」
その言葉が耳から離れない。
帰宅後。
スマホが震えた。
奏
『家着いた?』
返信すると、すぐ既読。
『よかった。』
『今日話してたやつ、名前教えて。』
少し戸惑いながら送る。
数秒後。
『ありがとう😊』
その一言だけだった。
だけど翌日、その男子は学校を休んだ。
翌々日も。
その次の日も来なかった。
「転校したらしいよ。」
クラスメイトの声が耳に入る。
偶然……だよね。
そう思おうとした。
だけど。
昼休み。
奏が俺の隣で笑った。
「これで邪魔する人、いなくなったね。」
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が、ぞくりと冷えた。
コメント
3件
おお、これは……読んでて背筋が冷えたわ。奏の「優しすぎる」行動が、じわじわと支配と独占に変わっていく感じがすごく上手い。特に「目だけ笑っていない」って描写と、最後の「邪魔する人、いなくなったね」の笑顔の対比が怖すぎる。澪の「ぞくりと冷えた」で終わるのも余韻が残る。この歪な関係、次どうなるのか気になって仕方ない🔥